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文芸に登場する果物
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●寅さんと渋柿 「男はつらいよ」は48作で幕を閉じました。72年の第10作「寅次郎夢枕」では、木曽路を旅する寅さんが道端の柿の木からひょいともぎとって口にするシーンがあります。これが、とびきりの渋柿で、寅さんは渋さにとびあがるというもの。秋の夕暮れに、山寺の鐘が鳴り、寅さんのさすらい一人旅の哀感がしみじみと伝わってくる名シーンでした。寅さん、天国でおいしい柿を食べてください。 ●小説、エッセーから 私は柿の種子ほど邪魔でない種子はない、と思っています。種子の廻りのすこしゼリー状になったようなところ、あそこは柿の中で一番おいしい場所だと思います。 |
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「やさい・くだもの・さかな」渡辺一枝 |
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| 「日本のくだものの中では、柿がいちばんですね。外国には、こんなおいしい柿はありません」 二十年ほど前、偶然乗り合わせた汽車の席で、ドイツの男性はそう言いながらハンカチで大きな富有柿の実をくるくると拭き、かりりとすこやかな白い歯を当てた。 |
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「野菜のこよみ くだものの香り」岡部伊都子 |
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| 皿の上で、柿を四つに割ろうとする英子に、由美が、「そんなことしちゃ、まずいのよ。こういう風に……」 がぶりと、丸ごととろけそうな裸の実に、歯をあてた。 「ああ、うまい。種をくるんだ、この、くりくりした処が、とても好きよ」 |
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「十夜柿」永井龍男 |
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| それは昨日の事であった。その人がまだ枕頭に在る間に彼は辛抱ができなくなってその柿を三つ続けさまに食った。その人が帰って後も寝るまでに十ばかりを平らげた。今夜枕頭に運ばれたものは残りのただ二つであった。
彼はその一つを取ってその皮をむくより早くたちまちそれに武者振りついたのであったが、大方食い尽くして蔕の所に達した時に少し顔を顰めた。それはやや渋かったのであった。そういえば昨日食ったのも大方少しずつ渋かったのであった。けれども彼はそれに頓着せずにその蔕の際まで少しも残さずに食ってしまった。
その所の渋いという事が少なからず彼の興味を惹いた。そういうありふれた事柄を、あたかも天下の大事のごとく考えながら彼はまた次の柿をむいた。今度の柿も同じく蔕の所が少し渋かった。 この時彼は畢竟渋いくらいの柿でなければ旨くないのだという結論に達した。この渋くない柿よりも渋い柿の方が旨いという結論がまた彼を喜ばせた。 |
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「柿二つ」高浜虚子の小説。子規を主人公にしており、下の子規の句「柿の実の〜」と「つり鐘の〜」はこのときに詠んだものである。 |
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| 柿の花は目立たざりけり 人々は顧みざりけり されど柿の実は目立ちにけり 人々は賞美せり 柿の実は甘きが故に 人々は柿は甘しと云いたり。 我人々と同じく 風雨にさらされ、 我は甘露の雨にうたれしことなく 甘露の泉に根をはりしことなし |
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「柿の賦」武者小路実篤 |
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| ●和歌、俳句
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| ●諺
貧乏柿の核沢山……「貧乏人の子沢山」と似たような意味で、「渋柿の核沢山」「痩柿の核沢山」があります。 柿の皮は乞食に剥かせ、瓜の皮は大名に剥かせよ……柿の皮は薄く、ウリの皮は厚くむくとよいという教え。貧しい人は少しでも多く食べようと思うので皮を薄くむき、鷹揚な大名は厚くむくということでしょう。 |
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