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お盆の時期には学校は夏休み、田畑の仕事もひとまず小休止となり、主人の実家でも親戚や子供たちが大勢集まります。昼下がりのくつろいだ折に出されるのが、井戸水でちょうどよく冷えた西瓜でした。といっても、田舎では西瓜はぜいたくな果物でしたから、食べる人数が多ければ多いほど、西瓜の割当が少なくなります。
大きくなったら西瓜を1人で1個全部食べたい―そんな思いが主人を無類の西瓜好きにしたようです。いつかメロンをいただいたときにも「西瓜と取り替えよう」と主人が言い出して大笑いしたことがありました。(83年9月号「お盆と西瓜」)
兄弟が多い中で育った主人の西瓜への執着は本当にいじましいほどのものでした。「大きくなったら、西瓜を丸ごと食べたい」といつも思っていたそうです。
ですから、総理時代に軽井沢で夏を過ごしたときにも、愉快なエピソードがあります。別荘の裏に清水が流れていましたので、大きな西瓜を風呂敷に包んで門の柱に縄で結び、冷やしておきました。そうすると主人の態度がなぜかソワソワ落ち着きません。やがて様子を見に行って「あった、あった」と喜んで帰ってくるんですね。まるで、恋人に会うのを楽しみにしているかのように浮き浮きと西瓜の冷えるのを待っていました。(84年9月号「西瓜の冷えるまで) |