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やさい・くだもの はせがわ
長谷川果実店(川崎市)

 〒211-2955 神奈川県川崎市幸区小倉1124

営業時間:10時〜夜8時半。定休日曜日

住宅地に立地。左側がバス通り。店が面する通りは住宅地に入る脇道になる

左から長嶺春代さん、パートさん、長谷川直哉さん、経営者長谷川豊次さん、勝代夫人、佐藤昭夫さん


 取材依頼の電話を入れたとき、「うちは八百屋ですけど、いいですか」と聞かれた。どこの業界もこのところ景気のよい話は聞かないが、元気な八百屋さんからはむしろ学ぶことがいっぱいあるかもしれない。そう思って訪問したが、その期待は裏切られなかった。

 川崎市幸区の小倉小学校前に長谷川青果店はある。JR川崎駅、横須賀線新川崎駅、東横線元住吉駅、日吉駅など4駅ぐらい可能だが、そのいずれもバスを利用しなくてはならない、いわば「陸の孤島」にもなっている住宅地に立地する。2003年8月でこの店を出店してから丸3年が経過する。

●店を3年前に移転・新築

 経営者の長谷川豊次さんは、親戚を頼って群馬から上京し、目黒と世田谷の果物店で10年働いた。その後、トラックの移動販売をして資金を蓄えた後、1967年に現在地より約500m離れた場所に長谷川果実店(売場面積13.5u)を創業した。10年ほどたって野菜も扱うようになり、店名も長谷川青果店に改めた。

 「商店街ができ始めた頃で、5年くらいしたらほかには負けないぐらいの良い商店街になりましたよ。バス通りをはさんで2地区にまたがる商店街には約100店が並び、八百屋も7〜8店ありました。でも、相鉄ローゼンやサミットなどスーパーができたため、数店に減ってしまいましたね。

 うちも借り店で10年契約の区切りが来ていたのと、衰退が続く商店街での商売には将来の不安を感じ、思い切って土地を買いました。ですから、この土地の名義は家族3人のものなんですよ。息子も私に借金を返してくれています」(長谷川さん)

 現在地は建て売り条件付き土地だったが、勝代夫人がひと目で気に入り、速攻で土地だけは確保した。賃貸物件ならば、だめになればすぐに撤退が可能だが、自前の土地建物ならば商売が失敗したときに大きな借金が残る。先行き不安な時期だけに決断にも勇気が必要だったという。立地の決め手となったのは、「バス通りで、近くにそこそこ客の多いスーパーがあるから」だった。

 といっても、周辺は住宅地。大スーパーから地元に根をおろしたスーパーまで、この地域にチラシが入るスーパーは5店くらいある。「競合店は青果専門店というより、周辺のスーパーなので、単価を低くして売らないと勝ち目はない」と判断した。

 「土地勘はありましたが、求められるのは価格か、品質か。どの程度の品物を仕入れると売れるのか、全くわからなかったですね。よいものを安く売るといっても、そのあたりがわかるまでは試行錯誤の繰り返しでした」(勝代夫人) 

 完成した店舗は、一般住宅にもなりそうな造りになっている。天井の梁などはそのままで見上げれば空間を通して2階の事務所や倉庫が見える。床も柱もそのままでログハウスのような趣だ。

 大型冷蔵庫は備えているが、冷蔵ケースはない。これまでの貯蓄をはたいた上にローンも残っているから、極力経費を抑えている。

 現在はとにかく商売がうまくいくことしか考えられないそうだ。商品や接客に対してよくない口コミが広がればダメージになる。段ボールや野菜屑などが散らかる商売だから、近所から苦情がこないようにと神経を使っている。

 店のメンバーは経営者夫妻、長男で果物の仕入れを担当する直哉さん、野菜の仕入れを担当する佐藤昭夫さん(勝代夫人の弟)、販売の長嶺春代さん(勝代夫人の妹)、パート2人の6人体制をとっている。

●お客が買い物に行きたくなる店
 
 明るく見やすい店舗

 柱、壁面、床、すべて木をそのまま活かし自然な「木の家」というイメージになっている。

 売場面積は約40u。道路側から入ると果物が並び、野菜の通路を通ってレジ側出口へという客の流れにしている。通路も狭いため、品出しには苦心しそうだ。取材した日は雨が降っていたので客足が鈍いだろうと予測したが、雨降りサービスなども実施しているので午後2時すぎでも来店客はとぎれなかった。

 脇道に入る間口の広い側が出入り口になっている。メイン通りに向いている側のシャッターがほぼ半開き状態になっているが、全部閉じているとバス通りからは本日休業と見間違うほど。これは小学校が近く、買い物を終えて道路に飛び出す子供が多いため、やむをえずの処置とのこと。

入り口は果物が並び、季節感を出している。野菜は多品種だが、果物は味を重視した品揃え

左の写真で人物が立っている側からレジ方向を見る。こちらは野菜が並ぶ

 晴天には、シャッター前に停めた車から荷を下ろし終わらないうちに来店客が来る。午前中の10〜11時が第一のピーク、その後午後4時頃からお客が続々と来始める。そうなると、店の人たちはてんてこまいの忙しさで、お客と会話もできない状態になる。来店客は500〜800人。日々の忙しさが張り合いにもなっている。いまや「お客さんがたくさん来てくれないと考えちゃう」(直哉さん)というぐらいになった。

 では、お客に来店してもらうためにどのようにしているのか。

 「薄利多売」「新鮮なものを売る」

 安くてよいものを売るがモットー。当たり前のことだが、どの程度の品質が求められるのかが、最も模索するところだった。仕入れは大田市場から。東京青果(株)の個性園芸室のこだわり商品も取り扱っているのだが、付加価値の高い商品であっても、ほとんど利益が出ないぐらいの価格で販売する。この日は「甘熟メロン」。「今日は安くしているから値段は出さないで」と、写真撮影時には値札が外されてしまったほどのお値打ち価格。他ではあまり売っていない、味のよい商品をお得に買えることがアピールポイントなのである。その隣のクインシーメロンも自信をもってすすめている。

 その他の商品も軒並みスーパーより安い。だが、安さよりも見た目の新鮮さのほうがインパクトを与える。回転率がよいこともあるが、照明も効果をあげている。

 一般に、「八百屋さん」というイメージはゴチャゴチャ商品が並ぶ印象があるが、この店ではお客からも「きれいに商品が並んでいる」と感心されるそうだ。

 POPには産地表示だけでなく、ひとことコメントがされていてわかりやすい。形も工夫している。

 お客の要望に応じて多品種の品揃え

 洗いごぼうの隣に泥ゴボウ、季節の山ウド、産地と価格が違うミズナ、国産と輸入物ニンニク、大きさや色が違うパプリカやカラーピーマンなど、比較しやすく、また他店ではロスを心配して扱わないような商品まで並べている。売場面積の割りに多品種な品揃えをしている。

 仕入れは各担当者の裁量に任せているが、販売には女性陣も加わるのでその兼ね合いもなかなか難しいらしい。

 「良品廉価といっても、どうしても仕入れる側はなんとか利益を出さなくては、儲けなくてはと考える。でも、売る側(女性陣)は一歩外に出れば日頃は消費者なので、安く売らないと消費者は買ってくれないと考える。それにはロスを出してはいけないとか思うので、常にお客や商品から目が離せず、胃が痛い(笑)」(勝代さん)

 珍しいものでもロスが出るものは、とか、どんなに良いものでもお客が買いたいと思う価格でなくては……といった思いも当初はあった。だが、お客の目を楽しませていることがわかり、現在はどんな品物も一生懸命売るようにしている。これだけ種類が増えてきたのも、すべてお客の要望を聞いてきたからだそうだ。

 「昔は得意商品で損して得取れということもできたけど、いまは安いから買おうというのがお客さん。イチゴも298円以上にすると動かない。だから、メロンなんかでもこの値段では売れないと思うとすぐ安くする。この判断をすぐできるのが家族営業の強みかな。生産者の苦労を思うと、安く売っては気の毒に感じることもありますけど。

 でも、どんなにいいものでも売れなければ商品ではなくなるでしょう。売れて初めて儲けになり、食べてくれて初めてお客様になりますから」(勝代さん)

 早い時間帯は子育て中の人が多いので、どうしても高額品には手を出さない。こうした安さ重視派が3割強。午後に来る層は、共働きや年金生活者など比較的余裕があり、よいものを少量ずつ買ってくれる品質重視派で約2割。したがって、これらの層を満足させていく品質や価格帯の商品を常に提供するようにしている。客が多いことが次の客を呼んでくれる。売上主義か利益を重視するかのバランスが難しいという。ともかく店の知名度と口コミによる評判をあげるための3年間だった。

 今シーズンのイチゴは味がよいと確信した「さちのか」を多く販売した。いわば店の力で「さちのか」ファンを増やしたといえる。この日イチゴジャムを作りたいという人から8箱の電話注文が入ったが、店を信用して電話で予約する人も多い。小売100%だが、近くの飲食店もよく利用してくれる。

 商品がたくさん並んでいるので、店が狭く感じられるほどだ。
 「仕入れる人はついついどちらさんもたくさん仕入れるから、置く場所に困ることがありますね(笑)。店が広ければ人数も経費もかかるし、目が行き届かない。そうなると、お客さんにどんな品物がいくか確かめられないから困る。いまは、みんなが精一杯自分の仕事をこなしているので、お客さんや品物の状態がよくわかる。やはり専門店はお客にひと声かけてあげるから、スーパーとは違いますよね」(勝代さん)

 チラシで販売促進

 それにしても3年目とは思えないほど地域になじんでいる。地域の人に店の存在を知ってもらうために役立ったのはチラシである。ここ10年ほど効果をあげていたチラシを移転後も実施した。チラシを入れないと取り残されるような気分になるそうだ。

 「スーパーのチラシの目玉商品といえば以前は肉やしょうゆだったのに、このごろはトップに野菜がくる。野菜が店を引っ張っているんでしょうね。でも、安いものを安くしても売れない。いいものを安くしないと売れないから厳しい」(直哉さん)

 当店に足を運んでくれそうな対象地域は近隣1万世帯とわかり、5000部ずつ交代で大手新聞4紙に入れている。この費用が月4回入れて16万円。コストはかかるが、実際に、知名度アップに役立っているという。

 「チラシを入れるからには安くないといけませんが、通常営業の倍は売れないと利益はあがりませんから、なかなか大変です。チラシで競合する近くのスーパーはしょっちゅうチェックしていますよ」(直哉さん)

 「不思議と3年くらいたつとお客さんが安くても来てくれなくなるんです。それでチラシを入れ始めたのですが、毎年毎年勉強ですね。マンネリになるといけないと思っています」(勝代さん)

 チラシに入れる商品は1週間前に仕入担当者2人が仲卸と交渉しながら決めている。こうした特売のときに、店を覚えてもらえばよいので、特売目当ての客も歓迎している。

 カードで固定客を図る

 もうひとつ、2002年から始めたのが「はせがわメンバーズカード」のカード事業である。レジで金額が加算されていき、1万円で100円の商品券が出る仕組み。現在会員は1700人いるが、これは予想した3倍近い人数だそうだ。会員の住所や誕生日、家族構成などもデータがとれるので、今後は会員サービスも計画して固定客化を図っていく予定だ。

 「最初に刷ったときには1枚150円。経費をかけてどんな効果があるのかと、反対する母とさんざん議論しましたよ」(直哉さん)。何かひとつのことをするのでも話し合いを徹底させているので、実行に移すときには内部の不満は解決されている。スタートすれば店全員が協力しあう。

 チームワークのよさで活気を生み出す

 長男の直哉さんはサラリーマン経験をした後、1998年夏にこの店に入った。

 「私たちからは店を継いでくれとは言いませんでした。息子のほうから言い出してくれました。弟や妹たちも自分たちの店と思って一生懸命働いてくれる。若い人たちがいなければこの店はやらなかったでしょう。そりゃ、親にしてみれば目につくことはいっぱいありますが、自分の器量に合わせてやりなさい、必要以上に仕入れてきてはいけないとアドバイスしています」(長谷川さん)

 家族親戚一同のチームワークのよさも、接客のよい雰囲気をつくりだしている。呼び込みをするような威勢のよさではないが、気さくに声をかける。レジ以外の人も終始手を休めず品出し、パッキング何かしら仕事をしている。

 子供連れの親子が来た。合間を見て、直哉さんが子供にアメリカンチェリー1粒を差し出す。「食べてみて」。子供はニッコリ。

 「たまにあげるのがいいんです。くるたびに子供にサービスしていたら、ここは目の前が小学校なので、みんなきちゃいます(笑)」

 ところで、3年目を迎えた店は当初の予測通りに順調に売り上げているのだろうか。店を代表して直哉さんが答える。

 「儲けは少なく、決して満足できる段階ではないけど、とりあえずは第一段階をクリアしました。これからですね」

 購入金額は500〜800円の人が多い。これが100円高いと売上げも違ってくるのだが、高い商品に手を出させる、もう1品よけいに買ってもらうことが現時点では難しくなっている。

 では、これからの課題は?
 「陳列、接客、すべての面でまず細かな積み重ねを大事にしていくこと」

 具体的には、開かずのシャッター前の工夫、バックヤードの確保、お客が自分で取りやすい陳列、行列が長くなったときの接客等々いろいろ課題があり、その対応を考えているところだという。

 「駅前の店だと違うやり方があるのかもしれませんが、うちのように日々の食材を求めてくるお客さんにはなかなか果物を多く買ってもらえません。果物の販売が厳しいということは身にしみています。でも、果物のよさをわかってもらうには、やはり味のよさを伝えていくことだと思います」

 今回レポートしたのは青果店だが、青果物を生き生きと見せることが客を呼ぶこと、チラシやカードなど果物店では手がけないことをしているなど、学ぶ点は多い。周辺のスーパーに互していくために、利益をギリギリに抑えても良い品を提供していくという姿勢に感銘を受けた。専門店は値段が高いという「一般人の常識」を業界あげて覆していくことが必要だろう。

 町の元気な小売店は、残さなければいけないし、残ってもらわないと困る。もっともっと専門店のよさをPRしていきたい。

 最後にひとこと、後継者の直哉さん(1970年2月生まれ)は花嫁募集中。いい人がいたらご紹介ください。

長谷川青果店のPOP 

・お客の気をひく言葉を散りばめる
・他店で買うより「お得」と思わせる
・ひと言おまけのメッセージを付ける

POPの例

★美味しくて評価の高い こだわり甘熟メロンです
★究極の蜜柑 熊本産デコポン
★あまさいっぱい!! 南国のおいしさ メキシコマンゴー
★当店のお薦め!! 紅こだま造りのプロ集団 群馬薮塚産こだますいか
★美味しさ・品質保証 
青森産 品質食味検査合格品 ふじりんご
★あまさが好評デス
甘さが強く まったりとした美味しさ
アクアドルプレミアム エナーノバナナ
「他店より3〜4割安くなってます」(吹き出し)
*日持ちするのでたくさん買っても安心あんしん!!
★甘さが おいしさが みずけが違います
愛媛宇和島あまなつ柑
★おいしさ最終便 佐賀唐津苺 さちのか苺
★初荷特価 旬を先取り 長崎産日川白鳳
★初荷特価 アメリカンチェリー
★○○(デパート名)、○丸(高級食品スーパー)も取り扱う 実績のおいしさ 大粒ブロックサイド社アメリカンチェリー デパ地下では1200円相当品
★ついに登場!? あまい!!あまい!! ゴールドキウイ ニュージーランド
★大粒旬です おいしい 鹿児島産びわ
★キウイと言えば……ニュージーランドゼスプリキウイです
★申し訳有りません。果物は特価の為、ご贈答等の包装は150〜200円をいただいております。
★今週は広告は折り込まれていませんが特価品をそろえてガンバリます。