ホーム 目次

木川果実店

〒257-0043  山形県酒田市中町1-10-24

営業時間9:00〜19:00  日曜定休

表彰式には東京にいる2人の娘さんたちも出席。中央が木川純一さん、則子さん夫妻

両親の武雄さん、梅子さん夫妻と、事務を担当する斉藤あや子さん

 
(財)食品流通構造改善促進機構主催第11回優良経営食料品小売店等全国コンクールで木川果実店は、農林水産大臣賞を受賞した。同コンクールは経営技術が審査対象となるが、木川果実店の場合は、生産者と消費者を結ぶかけ橋となって、地元産の高品質な果物を日本中へ配送していることなどが高く評価された。今回の記事は(財)食流機構の機関誌「ofsi(2002年2月)」に掲載された文章(渋谷浩一氏取材)を転載させていただいた。

●酒田大火の後、果物専門店へ

 1976年(昭和51年)10月29日夕方、山形県酒田市中心部の映画館から出火した火災は、次々と周辺建物に燃え移り、翌朝5時の鎮火までに、中心地にあるデパートや中心商店街を焼き尽くしてしまった。この火災による被害状況は、消失家屋数1774棟、罹災世帯数1023世帯、罹災者数3300人と記されている。
 
 酒田市は、江戸時代以来、日本海からの強い季節風により何度も大火に見舞われてきた。1000戸以上焼失した火災は江戸時代以降8回も起きているという。

  この大火で、新築して間もない木川さんの店舗(当時は住居と一緒)も消失してしまった。木川純一さんと則子さんが新婚旅行から帰ってまもなくの出来事で「茶碗、耳かき、何もかもなくなった、まさにゼロからの出発だった」と当時を振り返る。
 木川さんは、店の再建にあたって、この店が生き残っていくにはどうすればいいのか考えた。

「主人は『これからは大型店の時代になって、自分の家で食べる野菜や果物はスーパーで買うようになる。いままでのようにほうれん草一つを持って配達するような時代は終わるし、ガソリン代などの経費を考えればどれだけ利益が上がるか、そう考えたらとてもやっていけない。この店が生き残るためにほかの店と違う特徴を出さなければいけない。新しい店は果物専門店、しかも贈答用の品質が良い果物を扱う店にしたい』と言っていました。本当にそうなるのか、その時はわからなかったけれど、主人の固い決意は伝わってきましたね。
売場面積:79.9u、従業員数:6人、売上高 1億1,000万円、商品構成サクランボ28.4%、洋梨(ラ・フランス)9.9%、リンゴ7.8%、メロン6.9%、柿(庄内柿)5.6%、その他41.4%)

 今思えば先見の明があったのでしょう。普段食べるものはスーパーで買っても、贈答は木川果実店でと、だんだんお客さんに支持されるようになりました」と則子さんは話す。

「こぎれいな店舗にして、贈答用の高品質な果物を扱いたいと思いました。当時、全国の果物専門店をいろいろと見て回り、参考にしました。山形県は果物の大産地でもあり、品質に関しては絶対の自信もあったのです」
 

 野菜がないとお客さんが来ないよ、と不安を感じる両親を説得し、大火の3年後、木川果物店を再建した。

 ●工夫するのが大好きな現場

 宅配で全国へ送る商品数は、当初、年間300個ほどだったが、現在は約10,000個にも上る。贈答を受けた客が、おいしいからと直接注文してくるケースが多い。また年間3,000通発送するDMも注文増につながっている。
 
「うちの店は、工夫するのが大好きな現場」と話す木川さんに、工夫している点を聞いた。事務作業は店舗の一カ所を仕切った小さなスペースで行っているが、書類やパソコン等の機器がすっきりと機能的に並んでいる。

 「売上の記帳は毎日習慣的に行っています。これは毎月の試算表作成につながり、過去6〜7年分の試算表がファイルされています。毎月の試算表の推移から販売企画を作ることが出来るし、利益率の目標を見ながら、価格を設定できます。

 伝票の整理は、ヤマトシステムのコンピュータを使用し、顧客管理も含めて行っています。平成12年は赤、13年は緑というように、年ごとに伝票を色分けしていますが、これはDMを出す時に2年間続けて注文があったお客様を検索するための整理に役立っています。やみくもにDMを出してはあまり効果は期待できません。
 
 さくらんぼだけでも年間3,000件ほど宅配に出していますが、コンピュータの導入により、1日300件の発送があってもその日のうちに請求書を出すことができます」
明るい店内。陳列も見やすい。リンゴの木と雪で季節感を演出、吊された干し柿も郷愁を感じさせる。

 顧客の情報をきちんと入力し、過去のデータを蓄積していることが木川果実店の強みになっている。取材中も、来店した客が「○○さんに△△を送っておいて」と代金だけ支払って帰った。客が伝票に住所や氏名など記入することなく、過去のデータから発送用の伝票がすぐに作成され、商品を送ることができる。無駄のない顧客管理に加え、客からの信頼によるものと感じた。

 「お客様に、去年どこに何をどれぐらい送ったか、よく聞かれます。ここ何年も利用していないお客様でも、情報はずっと残っているのでとても喜ばれます。年末、年賀状を書くので、引っ越しした○○さんの住所を教えて、とお客様から聞かれることもあるんですよ。

 コンピュータを導入する前は、伝票書きや請求書作成などでパートが必要でしたが、今は事務担当は一人ですみ、人件費の削減にもつながりました。

 きちっと整理して蓄積してきたデータ、宝物になっています」
 
 
●果物の切手やシールで心遣いを示す
 
 DMにはまごころを添えて、すぐに捨てられないような心くばりをしている。
 
「DMのはがきにさくらんぼをアピールしたシールを貼ったり、請求書を発送する封書に郵便局で売っている『季節の果物切手』を貼ったり。お金はかけないが、まごころのこもった工夫を心がけています。みんなで知恵を絞り、こうすればお客様が喜んでくれるのではないかと考えたことを実行しています。どの切手でも値段は同じ。ならば、ちょっとした工夫でお客様に喜ばれたいといつも考えています」

 
●徹底したチェックで、クレームが少ない
 
「うちの店から出荷する商品は全部チェックします。ラフランスもりんごも、すべての商品を1個づつ持ち上げて調べます。その結果、お客様からのクレームがものすごく少なくなりました」

 手間のかかる作業だが、その手間を省いたためにクレームがきて、その対応をすることの方がもっと大変だという。

 「クレームの対処、詫び状、また改めての発送などの作業を考えると、最初にきちっとした方が私たちの手間も少ないし、なによりお客様からの信頼も得られます。これは、いろいろな経験からわかってきたことです。

 チェックをしないでクレームが来たらどうしようもないですが、こうしたチェックをして、それでもクレームがくれば、それなりの対処の仕方があります」

 こうした徹底した商品チェックをはじめて10年以上経つ。

 
●メロンは独自の糖度・熟度検査をする

 朝、市場に生産者が持ってきたメロンを、木川さんは独自に糖度・熟度検査している。

 「サンプルにナイフを入れ、糖度計で検査をします。さらに、ナイフの具合で熟度までわかるので、独自にABCという総合の評価をつけ、どれが良かったかをを判定します。


 市場でも一応糖度検査はするのですが、やっぱり自分の目で確かめたいですね。ここまでするのは、市場内でも私だけです。仲卸から『今日、どの品物が良かった?』と聞かれますが、自分で作っている表だからよほどのことがないと見せません。

 この検査をすることによって、あたりはずれのない商品を確保できます。さらに、独自の検査をしていることがいつしかお客様の耳にも入り、庄内のメロンを買うのならば、木川が間違いないという評判が口コミで広がりました。当店にとってもこうした評判は励みになりますが、生産者にとっても、自分の作ったメロンもいつか木川で扱ってもらいたいと、大きな励みにつながっていますね。

 生産者が一生懸命作った高品質の品物は、大事にしてあげたい。味がいいのも悪いのも、同じような形で値段がつくのでは生産者のやる気につながらない。努力して作った品物を、きちんと評価し、できるだけ高く買ってあげたい。それが、生産者の励みになります」

 木川さんは10年以上もこうした独自の検査を続けているが、糖度検査をさせない農家の品物は買わないという。自分の作った商品に自信があれば、どうぞ計ってくださいと申し出てくれる。また、市場も協力的である。

 「仲卸の方が、こうした独自の検査をするようになれば、いい品物を作る人たちにとってはすごくプラスになると思います」と木川さんは話す。

 こうした努力を続けた結果、関東方面のお客からも、庄内のメロンはおいしいと言われるようになった。以前はDMを出してもさくらんぼほどの人気はなかったが、最近は県外からのメロンの注文が増えてきた。実際に食べてみて、そのおいしさを実感してもらえるようになった。

 「地元の人が食べておいしかったから、県外の人に送る。それで県外の人から注文が来る。それがうちの場合はすごく多いです。そうやってお客さんが増えてきました」
 メロンは、年間約1000軒の注文がある。

 
●梨は午前中に選果したものを午後に配送

「幸水は、市場の職員と一緒にJAで打ち合わせし、午前中選果したものを午後から宅配に出せるようにしています。値段についても、販売方法や扱う予定数量を提示し、交渉します。

 ラ・フランスは、市場に注文のファックスを流すとすぐにJAへ連絡がいき、JA で準備してくれます。それが、『木川の分』として市場に送られてきます。まとまった数量を仕入れてくれると農協にも好評です。品物は必ず市場を通すので、市場にとっても都合がいいと思います。うちにとっても、市場を通すことで、クレームは市場が対処してくれるという、利点もあります。
 うちだけ良ければいいというのではなく、市場にとっても生産者にとってもいいことをやっていきたい」
 
 
●お店の工夫

配送の荷造り作業は店舗の隣で行うが、通行人の目に触れることを意識している。
 「お客様が、私たちが荷造りしている姿を見て、そろそろさくらんぼを送る季節か、と感じてくれます。荷造りの終えた品物もよく見えるところに積み重ねています。こうしたことで、お客様の購買意欲をそそるようにしているわけです。
店内のディスプレーも季節感を特に大切にし、四季ごとに変えています」

  店内のPOPや看板は木川さんが書いているというが、プロ顔負けの出来だ。

 「看板屋の友達に、いろいろと教えてもらいました。素人でも、書いているうちにだんだんプロのようになったと、自分では思っているのですが。とにかく楽しみながらやることですね」
プロ並みの腕
 店舗の視察に行った時に気に入ったPOPなどを見つけるとメモして帰り、アレンジを加えて、木川さんのオリジナルを作り出している。

「果物屋だからそれだけやっていればいいというのではなく、成功している人たちは様々な特技を持ち、それを商売に活かしていると聞きました。そのとおりだと思います。看板屋に頼めば経費もかかりますが、自分で書けば、気に入らなければ直せばいいし、家族にいろいろ注文をつけられても、簡単に直すことができます」

 店舗2階の『アトリエ』には、木川さん作の看板がたくさん置いてある。
 
●経営方針は

 
 「当店だけが良くなればいいのではなく、お客様も市場も生産者もみんな喜んでくれることを続けてきたし、これからもそうありたいと思っています。小売店一軒だけの力は微々たる物です。市場がなければ仕入れは出来ないし、宅配のシステムが整わなければお客様に鮮度委のいい状態で届けられない、そして生産者にいいものを作ってもらわなかったら、木川果実店はここまで育たなかったと思います。常にこうした思いで商売を続けていれば、それがいろんな人に伝わり、最後は私たちに返ってくる、ということを実感しています。これからも共存共栄していきたい。

 食品専門小売店が減少している中で、これからどう生き延びていくかが大事です。
 当店が農林水産大臣賞を受賞したことで、地域の同業者の方々に元気を出してもらえたら、なによりもうれしいことです。果物王国、山形のおいしい果物を、これからも全国に広げていきたい」と木川さんは受賞の喜びと抱負を語った。
 

2001年秋の庄内柿シーズンは、店内がすっかり柿色をしている。

 年5回(6月のさくらんぼ、7月の庄内砂丘メロン、9月なし、10月庄内柿とラ・フランス、12月リンゴと紅干し柿)DMを発送。1年間の発送件数は約1万件。顧客管理等にパソコンを取り入れて労力軽減を図っている。


 

 *同店の所属する中通り商店街のサイトに紹介ページがあります。