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株式会社 丸忠

〒503-8558 大垣市高屋町1-56 
       ヤナゲン大垣本店内
 

営業時間10:00〜19:00、パーラー9:30〜19:30、水曜定休

大垣駅より徒歩5分ほどの7階建てショッピングセンターのヤナゲン内に入店。通路を隔てた食品売場の果実売場と競合する

左から百々優夫人の陽子さん、経営者夫人定子さん、優さん(右)、青木八重子さん、百々由郎さん(暗くなってしまったので、下の石をもつ写真をごらんください)

  ●高級果物を試食販売
 
  岐阜県大垣市内のヤナゲン(ショッピングセンター)に入ったところ、入口に果物売場があった。客にイチゴを試食させている。話しぶりから見ても相手は常連さんという感じだ。活気のある店なので話をききたいと思って売場近くに立っていたら、店主が気づき「これ、食べてみて」と試食品を差し出した。
「おいしい!」
 値段を見るとこんなイチゴを試食させてもらってよいのだろうかと思ってしまうほどの金額だ。

 「これは福岡県でつくっているEM栽培(注:Effective Micro-organisms=有用微生物群の略で、人間や植物に有益な物を作り出す微生物の集合体をさす。このEM菌を活用した農法)のイチゴで、うちが産直しているんですよ」

 このイチゴ(ブランド名「おさなご」)は2日おきに入荷するそうだ。「洗わないで食べるイチゴ」とわざわざ断り書きのPOPが書かれていた。イチゴ園でもぎとったままのイチゴを洗わずに食べることはあるが、家庭に持ち帰っても洗わなくてよいというイチゴなんて初めて。そのまま口にしても安全ということなのだろう。
 

 その間にも足を止めた人にイチゴを差し出す。

 売場の通路を隔てて直営部門の食品売場があり、すぐ近くで果物が販売されている。来店客は丸忠のほうが断然多い。

 「あっちはイチゴを1パック395円で売ってるけど、うちの3Lサイズ850円のほうがよく売れる。いいのをこだわって売っているからね。ミカンだって皮はワックスをかけていないものを売っているけど、ものすごくおいしい。今ごろの伊予柑はたまにスカになったものがまじったりするけど、これは水分たっぷりで甘い」

 「産地に行くことも多いですよ。四国や九州などいろいろ回っています。この間は息子と一緒に行きました」
 それにしても客が途切れないなぁと思っていると、「天気がよいとすごく売れるけど、雨降りはだめなんですよ」と店主が遠慮がちにいう。
洋菓子を入れるケースに入れるイチゴのギフトが人気

 「私は対面販売が好きなもので」という一言も、楽しそうに販売する姿を見ると納得がゆく。売り込みたいと思うものは試食をさせ、十分な説明をする。味見をした客はかなりの確率で買っていく。

 買物客には「これ食べてね」とスッと袋にバナナを入れる。単なるバナナでなく、ドールが味のよさをPRしている「スウィーティオバナナ」を1本おまけする。単なるバナナでなく、テレビCMなどもしているバナナなので話題性は十分。うっかりおまけを忘れてしまったときには、客のほうから「5000円も買ったのに〜」と催促された。年配客が多く、購入金額が高いのが特徴のようだ。



 
●丸忠の包装紙が信頼の証

 
 店主の名前は百々由郎さん。駅前商店街にある創業130年の老舗、丸忠果物店の次男として19歳より店を手伝い始めた。ヤナゲンが1970年に出店したときに責任者として任されることになり、後に株式会社丸忠として独立した。

 ヤナゲンは、百貨店事業の(株)ヤナゲンとスーパー部門の(株)ヤナゲンストアーに分社し、ヤナゲングループとして西濃地区を中心に17店舗展開している。

 丸忠は、ヤナゲン大垣本店で実績をあげたことから、その後3店に出店した。市内熊野町のノースウェストショッピングセンターには10年前に出店、長男の優さんが責任者になっている。続いて7年前に各務原市のスーパーバリューハッピー鵜沼(うぬま)店に、3年前に市内鶴見町のスーパーバリューハッピー鶴見店に出店した。

   仕入れは岐阜市中央卸売市場、大垣の地方市場、名古屋市中央卸売市場北部市場からで、産直なども利用してよりよい味を求めている。3店舗は大垣市内にあるので一括仕入れするものもあるが、各務原市の鶴見店は別仕入れにしている。

 ヤナゲンは昨年経営の悪化が伝えられ、再建へ向けて歩んでいるが、テナントである丸忠にとっては、不況も果物の消費低迷も、さほど問題とはしていないようだ。

 「不景気だから販売はそれなりに難しいけど、売上げは落ちていない。でも、昔からのおなじみさんが年をとって、徐々に少なくなるのが私としては一番さびしい。昼からは配達に出るので、季節の果物とか珍しい果物とかを教えてあげるんですよ。固定客がいるので売れるんでしょうね。お見舞いや法事などにうちの包装紙がいいといわれる。昔から味にこだわる姿勢できたけど、これだけ不景気でも売上げが減らないのはたえず進物を扱っているからかもしれない」

 「試食させるのは、おいしい果物を入手したら、1分でも早く教えてあげて買っていただきたいから。商品の回転を速くさせないといけない。新鮮なうちに商品が動けば、あそこのはおいしくて長持ちするということになる」
包装紙にはイチゴが描かれていた。イチゴが店のシンボルになっているらしい。進物に入れる店名カードにもイチゴのカラー写真が使われている。
百々由郎さん。65歳(2001年3月)というが、とてもそのような年齢には見えない。「対面販売が好き」と、日々の商売を楽しむ
 イチゴの陳列の脇に大きな石が飾られていた。なんとそこには、写真と同じイチゴが化石になったかのように浮き出している(1ページ写真参照)。石に興味はなかった百々さんも、話をもちかけられたときには断ったが、石を扱う業者が持参した実物を見て思わず入手してしまった。今ではこの石が店の守り神のような気もするらしい。
 
 配達などを含めた外商を入れると売上げは約2億円。丸忠の中で一番の売上げを誇る。
 味へのこだわり、他にない商材(産直)、試食、接客のよさ、平等なサービスなどが好売上げのキーワードになっているようだ。

 加えて、昨年から店脇に生ジューススタンドを設けた。ごく小スペースだが、メニューもバナナジュース200円から静岡マスクメロンジュース480円までと9種類、このうち280円が最も多い価格になっている。

 加工品もありふれたものでなく、味や安全性にこだわったものを探してくるが、オリジナルブランドの加工品もある。アップルジュースは販売実績を評価されて、オリジナルブランドとして販売できるようになった。

 オリジナルアップルジュース

  
 
●ショッピングセンター内で差別化
 

 突然の取材を申し出て快諾してもらったばかりか、せっかくの機会だからと、優さんが市内から西へ車で10分ほどのノースウェスト店を案内してくれた。本店の進物割合は金額ベースで4割だが、ノースウェスト店と鶴見店は進物が約5割になっている。各務原店は2割なので、大垣市内の3店は進物主体の店づくりといえるだろう。

 パソコンも導入したばかりでまだあまり活用できていないというが、進物用のPOPなどに生かされている。「今後は計数管理もしていきたい」と優さん。

 続いて、立地面などから今後最も伸びが期待される鶴見店へ。ここも隣接してスーパーの食品売場があるので、一見して進物主体の店づくりになっている。しかし、買いやすい雰囲気を出すために、店長の河村恵さんが売場の前に樽などを並べ、ボリューム感のある陳列を工夫している。

「物を売るのでなく信頼を売る」という社長から教わった言葉を常に心がけている。
 
 丸忠の場合、ショッピングセンターの集客力を上手に自店の繁栄に結び付けている。各売場ごとに責任者に権限を委譲しているので、商品やPOPなどは同じであっても店の雰囲気が違う。だが、基本には味のよい商品を扱い、顧客を大切にするという姿勢があるから、売れる店になっているのだろう。本店が長年の営業実績により売上げは大きくリードしているが、他店は本店に追いつけとばかりに健闘している。

 「店は初めから継ごうと思っていました。やはり父ががんばっている姿を見ていたからですね。果物を販売するのが好きなので、果物以外に手を広げようとは思っていません」(優さん)

 商品である果物がおいしければ、お客に支持され続ける。そのことを優さんは知っているからこそ今後も引き続き有望な果物を求めて産地歩きをするという。
本店以外は営業時間10:00〜20:00。4店に従事するのは全店で14人、うちパートとバイトは7人。上はノースウェストショッピングセンター店
鶴見店は立地環境からも今後最も期待できる
鶴見店の河村恵店長(左)と臼井ゆかりさん、センスのよい売場をつくっている