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多田青果物店

〒990-0301 山形県東村山郡山辺町山辺235-1

営業時間8:00〜19:00 年中無休
多田青果物店のホームページ

 家族5人とパート1人、小売り80%、業務用20%(老人ホームや学校給食など)

 実質的に店を切り盛りする多田喜代志さん、里子夫人

 (財)食流機構が実施している優良経営食料品小売店等全国コンクールで上位に入賞した店は、経営内容が素晴らしいのはもちろんだが、やはりノウハウに見所があるところが多い。家族経営では1人1人にかかる仕事の負担も大きいが、やる気と実行力があればむしろ小回りがきいて大型店には負けないパワーを発揮できる。

 山形県山辺町の多田青果物店も家族5人で精一杯に可能性を追求している店の一つである。第10回(2000年度)の同コンクールで農林水産省総合食料局長賞を受賞した。

 多田青果物店は、多田喜一郎さん、喜与志さんの2世代夫婦、それに弟の政博さんで営業しているが、後継者の喜与志(以下多田さん)夫妻が実質的に経営している。

 対応は迅速に

 山形は果物の生産が盛んで、さくらんぼ、柿(庄内柿)、西洋なし(ラ・フランス)、りんごなど地方発送ができる商品が多い。地方発送の場合、電話かFAXで注文が入るが、顔が見えない相手だけに、誠心誠意をモットーに対応してきた。

 注文が入ると、すぐに注文を受け付けた旨を顧客へFAX、続いて注文品の発送案内(届け先、商品名、伝票番号など)をFAX、お客から入金があったときには入金のお礼をFAXする。注文を受けてから発送まで、お客に何も連絡せずにすませている店も多いが、これは一連の流れで「確実に」作業している店にとっては、特に必要性は感じないからだろう。ところが、買う側、贈答を注文する側はあれこれ考える。「注文を理解しただろうか。発送はいつになるだろうか。一日中荷物が届くのを待っているのはいやだから配達時間帯も知りたい。入金後、何の連絡もこないがだいじょうぶだろうか」。迅速に対応する1本の電話やFAXだけで大いに安心させられるものである。

 この対応をホームページでの通販にも生かしている。パソコンは1996年頃から会計管理や事務管理などに活用し、仕入れデータを蓄積して仕入れにも役立てるようにしてきた。

 ホームページも手がけてみたいと友人知人らの助けを借りて勉強していたところ、中小企業を支援する目的の山形県商工振興協同組合がサーバーを提供しているとのことで、組合に加入し、2000年4月ホームページを立ち上げた。

 これまではキーボードをたたくのは指1本の作業でなんとかできたが、ホームページとなると多くの文章も打たなければいけないし、写真の加工もしなければならない。

 店でパソコンをさわれるのは多田さん一人だけ。それでなくとも発送時期になると体が二つほしいくらいに忙しくなるのに、ホームページの更新ができるだろうか。だが、商売に結びつくと思えば何でもやれるものである。

 日本人は概して横並び発想で、自分が最初に手がけたり、突出することを好まない。むしろ、お手並み拝見で、相手が成功したら自分も取り組んでみるという店が多い。

 だが、現在のように景気が低迷している時代だからこそ何事にもチャレンジしようという心意気が大切だ。先行した分だけノウハウも得られるからである。

 現に、多田さんの店は、所属している青果商組合の中で最も早くホームページを立ち上げた。周囲には誰かしらパソコンがわかる人がいるだろうから、最初は何でも聞いて理解するのが手っ取り早い。ホームページは印刷物と違って修正も自由にできる。最初からよいものを作ろうと気張らずに、まずは店の姿勢を率直に伝えていけばよいとスタートし、以後、ぼちぼちと改良を加えていけばよい。肝心なのは、ホームページを開設してすぐに購入に結びつかなくてもあきらめないこと。現に、なかなか注文が来ないときには、多田さんもガッカリしたそうだ。インターネットでは検索をかけて見にくる人を多い。「さくらんぼ」でひっかかるようになると、徐々にホームページを訪れる人も増えてきた。そこにやってきた人に「注文してみたい」と思わせる何かがあったのだろう。産地の強みということであるならば、生産者のほうが有利である。だが、どちらかといえば生産者は自分の作るものが一番おいしいと思っていて、お山の大将的。他と比較し味をよく知っているはずと期待するからこそ小売店が信頼されるのである。

 多田さんは通販のとき同様に、注文にはすぐにメールで返信をするようにした。さくらんぼは2000年のシーズンにホームページから60件の注文が入った。

 あれから2年経過したが、2003年の手応えはどうだったろう。すると多田さんはニッコリ。

 「300万円いきました。ことしはさくらんぼの売上げが全体でも倍増しましたが、さくらんぼ泥棒のニュースで山形が注目され、逆に宣伝になったみたいです(笑)。客単価としては大体3000円平均ですが、天童産だと4000円くらい、山辺産だと2パックで1万円といったところでした。ここはさくらんぼの産地なので、店売りはそれほどありません」

 多田さんは、毎年の経営目標をたてていて2000年には1)パソコンの活用と2)新規販売先の開拓を目指したが、今、ようやく軌道に乗ってきたと感じている。

 ●新しい店にチャレンジ

 徐々に実績をあげているのは、味のよいものを扱って、顧客の信頼を得ているからにほかならない。それにはやはり仕入れの力が物を言う。

 同店では山形中央卸売市場を中心に、地方市場で伸びている丸勘市場、地場物を扱う市場の3か所から仕入れている。

 
だが、さくらんぼや西洋梨など、その店の「売り」となるものについては地道に生産者を開拓してきた。生産者は、品評会で20年間トップの成績をあげ、毎年献上品を出すところであったり、話題性のあるものとしては「孫」を大ヒットさせた大泉逸郎さんの園地のさくらんぼであったりする。

 「本当によいさくらんぼは100のうち、10くらいの割合ですね。それでいて販売期間は10日間くらいと短いのです。産地や生産者によって値段も大きく変わってきます」

 よい生産者を探すのも一苦労のようだ。

 栽培方法にこだわった生産者でSEICA(青果ネットカタログ)に登録しているところは、ID番号を記し、ホームページでも生産者情報を知らせるようにしている。取り扱っている商品は山形県のエコファーマーを取得した生産者のものが多い。
 店の前に立つと、多田青果物店が2つ並んでいた。たまたま隣家の土地を購入することができたので、新店を隣に建てて、野菜と果物をメインの店にしたのである。旧店は冷蔵ケースを置かずに当日売り切りにし、お客の便宜を考えて日用品なども扱っていたので、昔ながらのよろず屋さん的なイメージがあった。

 新しい店にも冷蔵ケースはないが、売り台の高さを統一し、通路を広くとっているので、見やすく回遊しやすい。「冷蔵庫に電気代をかけるぐらいなら、毎日新しい野菜を仕入れたほうがよい」と考えるので、冷蔵ケースは置かないのである。

山形県関連の販促をフル活用し、生き生きとした売場

ボリューム感は贈答箱やポスターなどでも演出

店内から入り口方向、新店は旧店に比べ奥行きがある。

 野菜(40%)も果物(30%)と同じ栽培グループものを仕入れるなど味を重視

 
 夏の時期には山形県の品評会であるかのごとく、山形産の青果物が並んでいた。店内入って右手は季節の果物「山形の特産品コーナー」になっている。すもも「紅りょうぜん」、庄内メロン、尾花沢すいか等々。それらに丁寧なPOPがついている。POPも熱心に取り組む店とそうでない店では差がつくが、同店では山形県が発行しているポスターやパンフレット、ホームページが発信する情報などすべてを上手に活用している。

 商品情報、生産地情報、料理情報などのPOPがどの商品にもついているので、お客のために情報提供するという熱意が売場からも伝わってくる。自分でPOPの言葉を考えるのは一苦労だが、産地の販促商品はむしろ利用してほしくて作成されている。いかに利用できる素材を数多くもつかということだろう。

 店は「お客様の野菜畑・果物畑」と考えているので年中無休だある。店の装飾には極力お金をかけずに、シンプルな印象だが、野菜果物が主役というイメージは十分に伝わってくる。見た目は庶民的な売場だが、有機栽培のものや、栽培にこだわっているものが多い。それでいて、決して価格が高いわけではなく、値頃感を重視している。また、町内無料配達をして年配客や電話注文だけで信頼して商品選びを任せる客から喜ばれている。
 旧店(といっても1990年に改装している)の前には苗木や種がたくさん販売されていた。「苗木は春先がよく売れます。特に、ことしは無農薬登録問題があったので家庭菜園をする人が多かったです。5月頃は苗木で店の前が埋まってしまうぐらいでした」

 これらの苗木も直接農家から仕入れ、誰が作った苗木かわかるというからおもしろい。いわば顔の見える苗木である。

隣の旧店ではいすも用意されていて、お客もゆっくりできる

苗木が人気商品

 ●結果はあとからついてくる

 とにかくどんな時代であっても、希望を失わずに家族でガンバレというのが多田さんの店から受け取るメッセージである。

 店の商品がいつも回転していて元気であれば、いつしか運も味方してくれる。

 多田さんの店に「イオンの贈答関係を担当してほしい」との話が舞い込んだのは一昨年である。きっかけは、近所の印刷会社社長がジャスコの役員と友人で、ある日突然話を持ちかけられた。量販店は中小小売店にとってまともに勝負すれば太刀打ちが難しいが、むしろ味方(?)につけてしまえば集客力も宣伝力もある頼もしい存在である。量販店にとってみれば、専門知識の高い地元小売店に商品選択を任せれば安心であるし、小売店側にとっては宣伝や販売など手間のかかるところをしなくてすむという双方向のメリットがある。テナントとして売場に出店しているわけではなく、商品だけの提供なので、多田さんに人員や経費負担があるわけではない。500m圏にスーパー、青果店が6店もあるという激戦区だが、推薦した人はこの店のよさをよく理解していたのだろう。
 

また、ことしからはコンクールで上位入賞した果物店にさくらんぼの斡旋を始めた。専門店同士が互いに地元の特産果物を協力しあって伸びていくというネットワークもこれからもっと広げられるかもしれない。今年度は量販店や果物店向けの卸部分だけで約2000万円を売上増につなげることができたという。

 多田青果物店は、JR左沢線羽前山辺駅から徒歩1分ほど、商店街の中にあるがそれほど商店街に集客力があるわけではない。したがって、店売り以外にも活路を見いだす必要があった。それが通販、ネット販売であり、当初は予想もしていなかった果物の卸売にもつながっていった。受賞時の売上げは5500万円だったが、あれから3年、売上げは大幅に向上したに違いない。果物の特産地にある果物店は、多田さんに「勇気と元気」をもらって、ホームぺージをはじめ、様々なことにチャレンジしてみるとよい。(2003.9)