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(株)弘法屋本店

自社ホームページ

〒464-0821 名古屋市千種区末盛通1-1
地下鉄覚王山1番出口すぐ

営業時間8:00〜19:00、祝日は17:00まで。元旦以外年中無休

 

3代目片岡高文社長。名古屋果実商業協同組合青年部長兼理事を務める。片岡姓が多いので、仲間うちでは「高文さん」と呼ばれている。

 

  ■覚王山で80年余、「うどん屋」で創業

 日本中どの地域にも果物の話題といえば登場する名店がある。名古屋における覚王山の(株)弘法屋本店はまさにそんな存在である。

発祥は1925(大正14)年に初代の片岡庄司、かま夫妻が覚王山日泰寺参道の入り口に開いたうどんの店「弘法屋」である。戦争中に途絶えたが、戦後商いを復活させようと考えたときに、統制経済の取り締まり対象外となっていた果物に着目し、今度は果物屋として「弘法屋」を開業した。
  「もっと花実の咲く」商いを目指して始めた果物屋だったが、1958(昭和33)年に西店(名鉄構内ストアー)、1970(昭和45)年に中店(丸栄百貨店内)と順調に伸びていく。

「ゆったり」「バリアフリー」で、高級感があふれるが、買い物しやすい雰囲気は変わらない。

 高度成長期である昭和30〜40年代は多くの人を雇用し、3代目の片岡高文社長が物心ついたときにはマスコミが訪ねてくる店になっていたという。当時幼稚園児であった高文さんがマスカットをもっている写真が載った新聞も残っている。
 
 初代夫妻は5男5女に恵まれたが、長男の正明氏と三男の和博氏が(資)弘法屋(現・(株)弘法屋本店)、次男が名駅地下街にある弘法屋、五男がフルーツパーラーレモン(現在は丸栄、松坂屋、高島屋などにショップ&パーラーをもつ)と独立し、さらに孫たちの世代になった現在は、和博専務の長男が果凛を経営している。

 いわゆる「弘法屋ファミリー」が名古屋における果物販売に大きく貢献しているといえるだろう。3代にわたる家系がそれぞれ果物店を継続させ一流企業にしているということ自体素晴らしい。

 2代目の片岡正明氏は製薬会社に勤務していたが、父の病気をきっかけに後を継ぎ、贈答品に力を入れて弘法屋本店の確固たる基盤を築いた。また、実験農場をつくって無農薬レモンなどを栽培し果物の味を追求してきた。覚王山商店街の理事長、アジア留学生の援助など対外的にも精力的に活動をしてきた。それというのも、店は伯子夫人、3代目の高文さんがしっかりと切り盛りしてくれていたからだろう。

 2000年12月「春秋競甘〜門前に生かされて」、2002年10月「アジア仏教圏の留学生たち」という本を著したが、巻末の年表には「1959年長男・高文生まれる」「1990年長男高文結婚」の文字がある。いかに後継者の存在に喜びを感じていたかが伺われる。

 ■味のよい国産果物を中心に

 そして現在――。弘法屋本店は2004年10月16日、通りを隔てた斜め前に新たに生まれ変わった。
 
 土地を借りていた旧店が老朽化したため、近い将来移転しようと購入していた土地に移転したが、3階建てのビルはそれ自体が高級感あふれ、「店全体がショーウィンドーになるようなイメージ」にしたという店側の意図が伝わってくる。
 
 市バスの通りに面している側がメインの入り口だが、店前を車がよく通るので、信号待ちで止まったときに視線をひきつけるようにした。参道側には駐車場(5台可能)がある入り口があるが、入ってくるお客は半々の割合。
 
 店内は木目を生かし落ち着いた雰囲気で、広々としている。「ゆったり」「バリヤフリー」を心がけたそうである。従業員は14人(うち社員6人)で、5年以上のベテランが多い。接客に当たる人よりもバックヤードで贈答品など発送や業務用納入などに当たる人が多いのがこの店の特徴だ。
 
 ホテルやケーキ店への納めが売上げに占める割合は約4割。店頭販売が約6割のうち、法人向けは半分近くを占める。バブルの時期からみれば、年々法人関係の贈答が厳しくなったために売上げは下がっているが、営業活動などの努力により、最近は効果が出てきている。
 
 特注の陳列台に並ぶ果物はすっきりと洗練されたイメージ。高級イメージはあるが、輸入果物はあまりおいていない。国産の果物が主力になっている。だが、贈答が多いため、仕入れる量は多い。車で20分かかる北部市場へ仕入れに出向くのは高文さんで、メロンだけ専務が担当している。
 
 「今日発送するという注文をきいていれば、それプラスアルファーで仕入れ、なるべく在庫をもたないように心がけています。冷蔵施設は2か所あり、日常でそれぐらいの注文が入るので、盆暮れがちょっと心配です」
 
 店内を見ると、ほとんどが生の果実だけである。新店舗を一から作る場合、特に日泰寺の縁日で大勢の人が見込めれば、土産にもなる加工品を扱う、パーラーなど飲食部門を併設するなど、いろいろ選択肢があったはずである。これに対する考えも明快だ。

「パーラーも考えましたが、結論からいえば自分よりも他の人にやってもらおうということで、2階に飲食関連を入れました(2004年12月に和風イタリアンレストランがオープン)。
 
 自分では生の果物だけを扱っていきたいと考えています。果物の本当のおいしさを伝えるにはそのまま食べてもらうのが一番だと思いますから」 

スタッフのみなさん(右から3人目、三佳夫人)。従業員は14人

 味のよい果物を生産しているという自負がある生産者はぜひこうした店を訪問してほしい。そして、果物がいかに大事に扱われているかを見れば、この店で扱う値打ちのある果物を生産することがいかにやりがいがあるか、分かることだろう。弘法屋本店で果物が売られるということが、生産者の誇りと喜びになるような店――そういう店の一つである。
 

2005年10月16日(大安)にオープンした。撮影した旧店舗前から北へ10m東側(元駐車場)の場所である。入り口は覚王山日泰寺参道に面した側(写真左)と市バスなどが走る広小路線に面した側(写真右)、さらに裏側と3つある。2階は和風イタリアンレストラン、3階は貸事務所2室。参道側は毎月21日の縁日のときには露天が並び、賑わう。広小路線沿いの隣にはスターバックスができた。

(左)広小路線側からの自動ドアを入ったときに目にする光景。とてもゆったりしている。
(右)その右奥はコーナーを利用して、メロンを陳列。壁面の後方からの照明が効果的に用いられている。

(左)冷蔵ケースは木目を生かした外観で、全体の雰囲気とマッチしている。中には茶色い籐のかごを用いて1個売りの果物を陳列。
(右)参道側からの入り口近くには憩いのスペースを確保した。この場所で注文を記入したり、贈答品ができあがるまで待ったり、多目的に利用できる。
 

(左)休憩スペースから見たところ。右側の陳列台は金色の帯状パネルが貼られていて、アクセントになっている。こちら側からの通路も広々としている。
(右)休憩スペース側へ向かってレジと作業台の部分。贈答用の盛りかごや包装が多いので、働きやすい高さ、多機能な収納スペースを工夫している。
 

(左)高級感のある陳列。
(右)保存料を使っていないブルーベリーシロップなど、国内外を問わず、味がよく安全なものを取り扱う。

 

  (株)弘法屋本店 片岡高文社長

 ――小さいときから果物になじんで育って味を覚えたわけですね。
 ◆私のときには少々傷んでいるものとか食べさせられましたよ(笑)。私は子供においしいものを食べさせていますけどね。

 ――好きな果物は何ですか。
 ◆リンゴが好きです。『信濃スイート』など新しいリンゴも出てきましたが、やはり『ふじ』がおいしいですよね。近頃はおいしいリンゴがないといわれますが、探せばそれなりにある。確かに傷みやすかったり、早生の『つがる』ですぐにやわらかくなったりするようなリンゴもありましたが、それなりにこちらが気をつけて売ればいいことだし、今は良い味のものがあると思います。リンゴは長野産がいいですね。山形のものはあまり名古屋にはきません。年間を通じて最も発送が多いのはサクランボなんですけどね。

 ――このごろの果物の消費者志向は。
 ◆「食べやすい果物」に尽きますね。こういう風潮には疑問を感じます。おいしいものを生産するために生産者が努力をする。そういう努力に対してぼくら果物屋が、主に金銭面になりますが、支えてあげることが大事だと思います。何でも安く仕入れようとするのでなく、我々が市場の中で正当に評価してあげる。高く買うというと語弊がありますが、正当に評価するという意識をもつことが生産者、専門店、お互いが長続きするために一番大事なことではないかと思います。

 それと、果物の将来を考えたとき、子供が果物を食べなくなったということが一番気にかかります。私は自分の子供には毎日果物を食べさせるようにしていますが、果物が好きな子供になりました。給食でも値段やサイズなどにこだわるのでなく、おいしい果物を食べさせるようにしないと、まずいミカンを食べてこんな味かと思ってしまうと、大人になってからお金を出して買おうという気持ちにはなりませんよ。果物好きな子供たちを育てていくということが大事です。母(伯子さん)はよその子供にはたくさん食べさせていましたね(笑)。

 ――お母様は現在も店に出ていてお元気ですね。
 ◆母に会いにくる人もいるんですよ。子供のときには母を見ていて商売とは簡単なものだと思いましたね。「これ、うまいから」と言えばお客様がすぐに買っていく。ところが、同じお客様に私が同じものをすすめても買わずに、母がすすめると買うんですよね。だから、何かが違うのだとわかりました。その違いは、信用というか、言葉の重みだったのでしょう。今は私がすすめても買っていただけますが。

 ――生産者に伝えたいメッセージは。
 ◆おいしい果物を作ってほしい。そのことに尽きます。でも、ミカンひとつとっても、私が好きなミカン、お年を召された方が好むミカン、小学生が好むミカンといろいろあるから、好みに合わせて4〜5種類おくのもいいけれど、結局、最後には自分の好みをはっきりと押しつけているみたいな部分があって、私はこれがおいしいと思うということをメッセージしていますね。

 でも、地域の特性もあります。自分自身ではSサイズのミカンがおいしいと思っても、この辺の人は年配者も多いからか大きいミカンしか買ってくれない。水っぽいだけのミカンを食べて「甘い」と言っている人には、ちょっと待てよって思いますね。甘いけれど少し酸味がある、いわゆるコクのあるミカンが自分の好みなのでどうしてもそういうものを探してしまいます。

 あと、ミカンとかでも名古屋の人のブランド指向ってあるんですよ(笑)

 ――今、デパートの食品売場はケーキなどスイーツといわれる商品が大人気です。そういう傾向に対してどう思いますか。
 ◆しめしめ……(笑)。ケーキ屋さんでも果物の素材を生かしたケーキを作る人も中にはいますが、そういう人はほんの一部で外観に凝っただけのものが幅をきかせています。果物屋にとって4〜5年は苦しい商売をしいられても、長い目でみればプラスになるのではないでしょうか。希望的観測ですが、こんな傾向が長く続くはずはない。私自身、ケーキよりもまんじゅう党です。まんじゅうはおいしければ2つでも3つでも食べようという気になる。果物も同様です。でも、今のケーキは1個で十分です。ですから、現在の傾向に対して反動が出ると思っているので、果物など食材を売る立場からみるとかえっていいのではないかという気がしています。

 ――専門店の役割は。
 ◆名古屋でも果物専門店は減ってきています。ごくふつうの店は少し苦しいかもしれません。安売りでも旬のおいしいものを仕入れて販売を工夫している店は残っていくだろうし、贈答主体の店も、果物のギフトがどこまで残るかは分かりませんが、あと10年くらいはだいじょうぶだろうとみています。

 でも、今はみんな悩んでいますよね。目先のことでも今年の果物はいいものがあるだろうかということから悩む。ただし、愛知県は工業県でもあるし農業県でもあるので、イチジク、イチゴ、梨、柿など地場産の果物がある。果物屋をするには場所的によい所です」

 ――安全、安心については。 
 ◆うちに来るお客様はあまり気にかけているとは思えないのですが、安全、安心は当たり前のことであってほしい。そんなことをあえて店側がうたう必要はなく、食べる以前のことであってほしいと思います。うちでは有機栽培の果物を仕入れたとしても、生産者の写真を飾ったりはしません。生産者の誰それさんが作ったというよりも弘法屋本店のブランドとして自信をもって売りたい」

 ――卸売市場経由の流通が揺らいでいるといわれますが。
 ◆産直をしたことはありますが、やはり卸売市場を中心とした仕入れをしていきたいと考えています。ただし、市場はマスセールスに走り、スーパー重視の傾向が強くなっているし、どこかに良い生産者がいたとしても、自分の店だけで扱うことはできないので組合で扱うなど、何かしら対応策を考えていかなければいけないだろうとは考えています。

20041120