好きな仕事だとつらさも感じない花の仕事をしたいと思い続けて実現
なによりも花が好き。だから、久保友子さんはフラワーショップ「フルールともこ」を始めた。「花にかかわる仕事がしたい」と念じ続け、念願の店がもてた。好きな仕事だから楽しい。一日中花と接することができて幸せ。幸せだから、相手を思いやれる。お客様の花を求める気持がよくわかるし、相手の希望にかなうギフトを作ってあげられる。繁盛する。ますます日々充実し、晴れやかな顔、そしてよい店になる。
フラワーショップは外観だけ見ると、きれいな花に囲まれ楽な商売だと思う人がいるかもしれない。だが、「バラの花にはトゲがある」の譬えにも似て、花を店頭に出すまでの下準備や、花の鮮度を保ち続けていく管理面での苦労は並大抵ではない。
さらに、花の業界である社団法人日本生花通信配達協会(JFTD)は「花キューピット」などギフトの制度を確立させていて、全体の水準が高い中での競争になるので、地域一番店への道は厳しい。しかし、久保さんは地域だけを視野には入れてはいない。自店の可能性を試すために、いつか東京に進出したいという夢を持ち続けている。花を販売するだけでなく、花の魅力、花のある生活を提案し続けたいと願っていたら、地元新聞に連載記事をもつという幸運も訪れた。これからは花の業界のメッセンジャー役としても、久保さんの活躍する場が広がりそうである。
久保さんは5年間の会社勤めをした後、大好きな花の仕事をしたいと一念発起、71年より2つの専門学校でフラワーデザインを学んだ。そして、78年サンケイ・リビングでアートフラワーの教室をもち、85年8月フルーツともこを現在地に設立した。現在の店は90年に改装したものである。

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設立当時は、駅前にそごうデパートが建設されるという話があり、立地の将来性に期待して開業したが、20年を経た97年にようやく完成されることになった。周辺の立地も大きく変わりそうである。
「会社をやめた時点では花を勉強したいという思いだけで、花屋になるかどうかはわからなかったけれど、結局は、花の仕事をしたいという願いがかないました」
花が縁でご主人の久保富彦さんに出会えた。富彦さんの実家も花屋で、義兄夫妻は花の業界では著名なフラワーデザイナー、と「花のファミリー」が形成されることになった。 |
| 中央にテーブルとイスを置き、くつろげるオアシス的な場を設けている |
店内はくつろぎの空間を演出
JR高松駅始発の琴電で2つ目の瓦町駅より徒歩3分、フェリー通りの一角にしゃれたレンガタイル貼りのビルがあり、その1階が「フルールともこ」である。角地のため2面がガラス張りになっていて、中の様子がよく見える。
表には白い鉢に植えられた四季折々の花がたくさん並び、季節の彩りを伝える。間口が狭いから店先で客に圧迫感を与えないようなるべく小鉢の花を並べているそうだが、ガラス越しに見える店に対して高級感を抱いても、店先の値頃な花々を見ると安心して店内に入っていけるという効果もある。
ドアを開けると「いらっしゃいませ」と明るい声で迎えられる。右奥がレジと包装台を兼ねたカウンター、左奥は切り花類の冷蔵室になっていて、店内に飾ってあるのは主に洋ラン類や観葉植物、それに花器類など。中央には大きなテーブルとイスが置かれ、客はくつろいで花を選ぶことができる。
テーブルの上には季節ごとの花がアレンジされている。ここは久保さんが飾り付けをして、フルールともこのセンスの見せ場にもなっている。花を買う目的がどうであれ、花を選ぶ、あるいは花が包装されるのを待つ間、客はテーブルの上にアレンジされた花を見ることで、お花畑を見るように心がやすらぐ。春ともなれば、久保さんが花のなかでも最も好きだという桜の枝を飾って「店内で花見を楽しめる」ようにしている。店頭も店内ディスプレーも常に季節感を伝える場であり続ける。
店の背後には飲食店街や会社事務所、学校などがあり、客層の中心はサラリーマン、OL、学生など。場所柄、男性客も多く、女性客との構成比は半々になっている。ホワイトデーは特に男性客が多く訪れるが、中には、相手から「フルールともこの花を」と指定されてやってくる人もいる。
平均購入金額は女性客が3500円前後、男性客が5000円程度、勤め帰りに立ち寄る客が多いため、夜8時以降、閉店の10時までは常に客で賑わっている。
同店では季節の行事ごとに「贈り物に花を」と打ち出しているが、最も花の需要が多いのがやはり母の日である。
「母の日はふだん花にふれることのない人たちが年齢、性別を問わず幅広く訪れます。これは花を意識してもらう数少ないチャンスの1つ。母の日が近づくと仕入単価が高くなるのは残念ですが、なるべく間際に新鮮な花を仕入れて、掛け率を低くしても販売価格を抑えるようにしています。高校生とか花を愛する予備軍世代の人たちによいイメージをもってもらいたいですし、花屋って気軽に買えるんだなとわかってもらえれば、これからの家庭需要拡大にもつながると思います」
10分足らずのところに高校があり、女子高校生が気軽に誕生日や演奏会用に花を贈ってくれる。知り合いになっていると、学校の新聞や、定期演奏会のパンフレット作成のおりに広告を頼みにくるので、「花も買ってくださいね」と快く応じている。
「7〜8月はどこの花屋も売上げが少なくなる時期なのですが、高校生の定期演奏会が多いので、とても助かります。1000〜2000円の花束であっても数が出るのでばかになりません。それで、彼女たちが将来OLになってもリピートで来店してくれるように願って花束を作っているんですよ」(笑)
様々なつながりを通じて、卒業式用の花も幼稚園、高校、専門学校、大学など幅広く注文が入ってくるようになった。
用途別にギフトを工夫
近年はカジュアルフラワーの普及によりバレンタインデー、ホワイトデー、卒業・入学シーズン、クリスマスといった特別な日との需要格差も縮まってきたが、価格も安いカジュアルフラワーの分野はスーパーにまかせ、同店の場合は、ギフトの需要開拓に力を入れている。フルールともこでは店頭の小さな鉢植えでもギフトになる、スーパーと同じ値段でも、この店で購入すればギフトにできる、という提案をしている。安価でも品質のよいものを提供し、子供でもギフトに使えるように配慮している。
母の日のカーネーション1本でも、数百円の小さな苗でもプレゼントにするのであれば、リボンを付けてあげて喜ばれている。
いまや店頭販売の80%がギフトだが、特別な日のギフトだけでなく、誕生日、結婚記念日、出産祝い、合格祝いなど、個人の記念日に花を贈るパーソナルギフトの割合をもっと増やしていきたいと考えている。このため、最も重視しているのが、接客の際のコンサルティングセールスである。
花のギフトの場合、贈る相手が喜ぶことはもちろんだが、花の組み合わせ、包装、リボンなどのトータルイメージで贈り主に満足してもらうことが大切だ。古来「花言葉」があるように、花は贈る人の気持を代弁するからである。このため、できる限り、贈る人の好み、贈られる人の状況などを判断してすすめるように心がけている。
「お見舞い用には、においの強い花は避け、強い色ではなくてやさしい色の花をおすすめします。
花束をくださいといわれ、お花の内容をどうするかときいて『おまかせします』といわれたときは、性別や年齢別、用途別に提案します。男性ならば大きくてはっきりしたユリとかバラ、女性ならば季節に応じたやさしい雰囲気をもった花を選びます。
年齢別では色合いで表現したりしますね。相手が大人の方だと落ち着いた茶色やブルー系の花で、花束の中にカラーなどを使ったりします。
あとはお見舞い、演奏会、出産祝い、合格祝い、誕生日祝い、開店祝いなど用途別に違ってきます。出産祝いだとかわいらしくアレンジしますが、男の子ならばブルー系でさわやかにとか、女の子ならばピンク系で愛らしくなどちょっとした心遣いで喜ばれます。合格祝いはめでたいことなので華やかに、開店祝いはお花がたくさんくれば似たようになってしまいますから、逆にすっきりとセンスのよいものを工夫します。
演奏会用には華やかさが要求されますが、さしあげるまでに時間が結構かかるので、水落ちのしないような花を選ぶ必要があります。
誕生日ならば、贈られる人に好きな花がありますかとまずききます。こうした個人の記念日にフラワーギフトをすすめていきたいと思っています」
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