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さくらんぼのタルト

 材料(7.5×24×7cmのパウンド型1個分)
冷凍パイシート・・・・・1枚
さくらんぼ・・・・・・・・・300g
キルシュ酒・・・・・・・・・少々
クリーム
牛乳・・・・・・・・・・・・・80cc
グラニュー糖・・・・・20g
薄力粉・・・・・大さじ1/2
コーンスターチ大さじ1
卵黄・・・・・・・・・・・1個分
 作り方

1.パイシートは冷蔵庫で解凍し、めん棒でパイ皿の大きさにのばし、敷く。余分な生地を包丁で落とし、フォークで全体に空気穴をあけ、冷蔵庫で休ませる。
2.さくらんぼは柄と、気になるなら種を除く。
3.クリームを作る。耐熱ボールにふるった粉類、グラニュー糖を入れ、牛乳を加えて泡立て器で混ぜる。ラップをせずに、500wの電子レンジで1分30秒加熱する。
4.手早く混ぜ、なめらかになったら卵黄を加えて混ぜる。再び500wの電子レンジで30秒加熱し、熱いうちに混ぜてとろりとしたクリーム状にする。
5.用意したパイ皿にクリームを入れ、平らにならす。さくらんぼを並べ、キルシュをふりかける。200℃のオーブンで約30分、パイに焼き色がつくまで焼く。

さくらんぼは、日本産のものでも、アメリカ産でも、お好みで。

 6月末のフランス。アルザス地方の農家にて。 
 果樹園から運んできたばかりのさくらんぼのカゴを前に、ジャンおじさんは言いました。

 「タルトやクラフティなど、焼き菓子にさくらんぼを入れるとき、先に種は抜かないんだよ」

 以前、日本のお菓子学校の授業でも聞いた話です。「それが本場の流儀」だとかなんとか。

 単にフランス人の怠慢さを証明しているだけのことではないか、と、そのときはうさん臭く思いました。でも、根拠はあったようです。

 「火を通すと、種からエキスが引出され、それが調味料になってお菓子にコクがでる。種を抜いたさくらんぼで作るより、数段おいしいよ」

 力説するおじさん。納得して、メモをとる私。

 翌日。さくらんぼのタルトを作るからと、マットゥおばさんに呼ばれて台所に行くと、種抜き器が用意されていました。おや?話が違う?

 「息子のアランは、食べるときに歯に当たるからって、嫌がるのよ」
ふっくらと厚いおばさんの手に、すっぽりおさまりそうな鉄製の器具。ひとつひとつ種をはじき出す作業には、かなりの時間を要します。

 カスタード風味のクリームを流したタルトは、2台焼き上がりました。一方は、種が入ったさくらんぼで。もう一方は、種なしのもの。昼食後、テラスに運んでいただきます。メンバーは、ジャンおじさん、その弟、アラン、アランの婚約者、従姉、マットゥおばさん、私。

 「"種あり"がいい人」とおばさんが希望を聞きます。女性全員の手があがりました。男性陣の手は微動だにしません。「"種なし"がいい人は?」の声で、いっせいに反応します。
 「味を比べてみましょう」という提案がなされ、女性陣の皿には両方のタルトが一切れずつ配られました。一同、神妙な顔で口を動かします。

 “種あり”からは、アーモンドのお酒に似た香りを感じました。軍配は、全員一致でこちらに上がります。香ばしく、味に深みがあるのが決め手。おじさんの言うとおりでした。

 でも当人は、"種なし"をつついて何食わぬ顔。

 "種あり"の試食をすすめられても、首を横にふります。「種を吐き出すのがわずらわしくて」

 手間と味、どちらを取るか。作る側にしてみれば、一石二鳥は"種あり"だと思うのですが。


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