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せいか研修セミナー「八百屋塾」第6回12月10日
 

果物の勉強
 

1回 2000年 7月16日
2回 2000年 8月20日
3回 2000年 9月17日
4回 2000年10月29日
5回 2000月11月26日
6回 2000年12月10日
7回 2001年 1月21日
8回 2001年 2月25日
9回 2001年 3月25日
 
 
11月5日の朝日新聞に掲載されました! 
 
 

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食品広場
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江黒孝

東京都青果物商業協同組合
本部青年会会長


 

 この日は「果物」をテーマにしました。江澤先生が約2時間講義した後、長崎県産みかんの「出島の華」「味っ子」、イチゴは「さちのか」「とよのか」「とちおとめ」「章姫」の食べ比べが行われました。 

食べ比べ
試食した感想
当日のすなっぷ

【講義 江澤正平先生】   

 1 果物をどう考えるべきか 

 パンとお米はどう違うか。パンはそのまま食べられるが、お米は食材なので炊かないと食べられない。それと同様、果物は食品ですぐ食べられるが、野菜は食材で手をかけないといけない。では、同じ食品であるパンと果物がどう違うかというと、パンは主食になるが、果物は嗜好品で、生活に直接結びつかないという点が違う。昔の人は「水菓子」といったものだが、この表現のほうが本質をつかんでいるといえる。果物はデザートになる嗜好品だが、その代わり生活レベルが低いときには果物をあまり口にしない。

 2 果物の歴史
 
 果物は自然の恵みなので、昔は貴重なものとして、神様に献上したり、身分の高い人が食べるものであったので、庶民はあまり口にできなかった。

 概して、果物は明治以降に発達してきた。北海道の開拓使が、アメリカから果物の苗を数多く輸入したのである。その時分には三田や内藤新宿、、青山などに育種場があり、そこで育種して全国にばらまかれていた。イチゴも福羽博士が内藤新宿で福羽苺をつくり、民間に分けられた。だが、これらはみな宮中用など身分の高い人向けだった。リンゴの苗は全国で作られたが、なかなかうまくいかなかった。ブドウも新潟県で川上伝兵衛さんが最初に植えたが見事に失敗した。そうした失敗が続き、1886年(明治19年)には果物に対する補助がうち切られてしまった。日本では紡績産業が生み出す絹が輸出になるということで力を入れたからである。

 マスクメロンは早稲田大学を創設した大隈重信が初めて栽培したとされ、彼はメロンが好物で125歳まで長生きしたといわれる。旧財閥や貴族など身分の高い人たちがつくるマスクメロンを有名果物店がもらいうけて販売した。

 かつては高級品としてとらえられていた果物は生活のレベルがあがるにつれて普及していった。銀座千疋屋はフルーツパーラーという言葉をつくり、果物を販売するばかりでなく、店で食べさせる形でも普及させた。三越も得意客を組織して、果物を食べさせる会を主催していた。

 当時の果物と現在の果物では旬の時期も品種も違うが、高級果物店やデパートなど、流通業者の人たちの努力のおかげで果物が普及してきたといえる。

  
 3 果物はいつ食べたらおいしいか
 
 果物は完熟にすると確かにうまいが、それをすると木が疲れる。翌年はなりが少なくなるので、平均に実らせるには、完熟しないようにしている。流通面でも日持ちが悪いと取扱いが難しいので、完熟させるのは難しい。

 特に追熟の必要な洋梨は、木で完熟すると落ちてしまうので、完熟前に収穫している。

 では、本当にうまいときに提供するとは、いつのことなのか。早生ミカンならば11月中旬すぎ、「ふじ」は長野産は11月25〜26日にうまくなる。果物が「リンゴ」でなく、「ふじ」というように品種で販売するのは、食べ物であるからで、野菜も本来はそうやって売らないといけない。風土によって作り方が違うのだから、果物は品種の特徴をつかむことが大切である。
 外成りのミカンは風で揺られて果皮の色は悪いがうまい。愛媛では完熟したミカン1個ずつにレッテルを貼っている人もいるが、完熟にしたほうがうまい。

 リンゴは2月頃の青森産のリンゴでうまいものはない。冷蔵庫に入れないものが出てくるからである。リンゴの取扱いは、温度管理が大切で、木からもいで3日くらいたつと、劣化してくる。「世界一」は7時間で劣化が始まるといわれている。


 【果糖の話】

 しょ糖とブドウ糖と果糖とあるが、果糖の多いのは、ブドウ、リンゴなどで、冷たくすると甘くなる。それなので冷蔵庫に入れなければいけない。
 青森のリンゴ業者の箱には「冷たくして食べてください」と書いてあったものだ。果糖にはα型とβ型があって、α型の果糖が多い場合、冷たくすると甘くなる。


 4 個々の果物の話

 【柑橘】

 柑橘にはミカンとオレンジとザボンの系統がある。果実は表皮、じょうのう、さじょう、の3つで構成され、それぞれの特徴により、皮が厚い、薄い、むきやすい、さじょうがしっかりしている、もろいといった違いが出てくる。伊予柑は皮が堅く、中のさじょうが軟らかい。清見などのほうが食べやすいので、伊予柑が少なくなってきた。デコポンは清見とポンカンのかけあわあせで、食べやすく、スマイルカットにするとうまい。
 よいとなると適地でもないのに、何でもつくってしまうが、雑柑類は3月前にとるものは適地とはいえない。3月以降にできる産地の雑柑を販売したほうがよい。


 【リンゴ】

 リンゴの冷蔵品は、晩生のものである。九州地方にはよいリンゴがいかないので、九州の人はリンゴはふかふかなものだと思っている。また、現在は甘いリンゴだけが求められているが、リンゴをサラダなど料理に用いることも大切で、酸味のある紅玉などはサラダにしてもおいしい。リンゴは色が重視され、太陽の光が当たる部分を葉が遮るようだと葉をとってしまうが、葉で栄養分をつけていくものだから、葉をとらずにそのままにする生産者もいる。これは「葉とらずリンゴ」として売られている。見てくれがよくないが、おいしい。また、盛岡50号という岩手県産のリンゴは品種登録がされないままに終わりそうだったが、サンサンと輝く、酸が多いというので、「さんたろう」と名がついた。後3年くらいが勝負なので、応援してあげてほしい。

 【柿】

 柿は日本古来からある。甘柿は御所柿が最初で、富有柿、次郎柿が代表的だ。

 朝倉の柿は西限の地になるが、山手のうまい柿だったのを増産し、水田も柿畑にして栽培を始めた。そして、選果場でも山手と水田のとをいっしょくたにしたものだから、品質差が出てくるようになった。効率化して大きくすると必ず弊害が出てくる。
 渋柿は平核無、堂上蜂屋など。干し柿にする柿は、西条、甲州百目、市田柿など多い。


 【梨】

 和梨の代表的なものは長十郎だった。幸水は軸のほうでなく、裏側を見せて陳列するのが当たり前になったが、これはなぜかというと、お尻のほうが甘いから、ひっくり返しておくと甘さが均等になると説明した人もいた。実際のところ、林フルーツ初代社長の林政市さん(故人)が長十郎と区別するために、お尻を上に向けて販売したときいている。

 幸水は1950年に平塚の試験場でできた。このほか主な梨には豊水、新生、新高、新興などがある。二十世紀は完熟しても基本的な性質は変わらない。


 洋梨は、高級専門店で販売されているが、そうした店であってもほとんど商売にはつながっていない。洋梨を売って商売になるのは「果物博士」ともいえるぐらい、うまい洋梨をちょうどよい時期に提供するのは難しい。


 【桃】

 桃は中国から入ってきた。かたい桃、やわらかい桃、種の核の部分が実と離れやすかったり、粘核だったりいろいろあるが、ハウス栽培になってきて、昔と違って品種が絞られてきた。桃くらい当たり外れがある果物はないだろう。

 桃の特徴は、渋さがないと桃らしくないことだ。だから、「桃の天然水」には、桃独特の渋みを少しだけ入れているそうだ。桃で一番難しいのは熟度である。桃は朝日ののぼる前、朝の4時頃に収穫にいかねばならない。太陽光線にあたって肉質が厚くなるとどんどん劣化してしまう。どれくらいがよいかというと、つかんでみた弾力でわかる。それを収穫して籠に入れ、箱に詰めてようやく朝飯となる。朝食を終えると箱に入れたのを改めて詰め直し、同じ糖度、熟度になったものをよりわけて選果場にもっていく。これらをさらに厳重チェックして出荷する。それぐらいしている産地は箱全体が同じくらいの熟度になって、うまい。


 【スモモ】

 日本古来の果物の一つなので、値段がこなれるようになると、よい果物だろう。山梨産のは熟度が問題で、東京や仙台に出荷するのに同じ熟度だと困る。ブドウなどと一緒に作っている園地のスモモはうまい。八百屋さんの果物として販売して喜ばれると思う。

 【さくらんぼ】

 観光用と出荷用とは品質が違う。ナポレオンはうまいが晩生で完熟させると割れやすい。サクランボには2種類、酸っぱいのと甘いのとがある。1962年(昭和36年)に7品種くらいサクランボが導入されたが、酸っぱいので木を切ってしまった。だが、この中の一つ、サワーチェリーは、ジュースやジャムに加工すると、とてもおいしい。いまでは長野県小布施でサワーチェリーのジャムがつくられている。

 【びわ】

 茂木びわと田中びわが二大品種で、東京の周辺だと勝浦、富浦が田中びわの産地になっている。完熟したものを予冷してもってくると本当にうまい。だが、そうすると値段が下がるので産地も完熟にしたがらない。びわは種が大きいが、びわのほうがバナナよりも可食率は大きい。

 【イチジク】

 イチジクの蓬莱柿は、蓬莱からきた柿として名がついたが、福岡、島根、広島あたりでつくられていて、小さいがおいしい。実が割れるので、関東では敬遠されるが、関西に行くと熟して先が割れたのを販売している。もちろん関西のほうが完熟しているからおいしい。イチジクで一番おいしいのは「ひとくちイチジク」だろう。セレストという名で、皮ごと食べられる。イチジクは完熟してくるとカラスに食べられてしまうからいつ収穫するかが難しいそうだが、完熟したイチジクほどうまいものはなく、イチジクが好きな人は多い。

 【ブドウ】

 アメリカのブドウは皮ばなれが悪く、脱粒しやすい。一方ヨーロッパブドウのほうは皮ごと食べられるものが多い。日持ちはヨーロッパブドウのほうが長持ちする。

 【スイカ】

 切り売りしないとだめだし、まずいと売れない。

 【メロン】

 温室メロンと雑メロンは違う。かつて果物屋さんたちが勉強会で、クラウンメロンをたたいて熟度を当てさせる試みをしたところ、同じ店の2人だけが当てた。そこではメロンがどんな味かわからなければ販売はできないので、仕事の一部として堂々と食べるようにと言われていた。だから、若くてもマスクメロンを食べて勉強していたのである。20〜30年果物を販売していてもメロンを食べたことがないという人もいる。食べ頃がわかるというのが大切である。

 【イチゴ】

 イチゴを食べるときに、どちらから食べればよいか。甘くないほうから食べさせると後から甘いのを食べることになるので「おいしかった」という満足感につながる。したがって、ヘタのほうか食べるとよい。果物の食べ方についても配慮することが大切だ。日持ちがしないために、あまりつくられなくなったが、宝交はやわらかくてうまい。