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(株)ジェイアール東日本企画第一営業局部長
武田 哲氏 |
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コミュニケーション活動
◇ここ数年は、大きく広告の世界が変わってきた。広告会社はテレビのCMを作ったりする以外にも、メーカーの新商品開発の提案、イベントやシンポジウムの企画などをしているが、その根底には「コミュニケーション活動」がある。「コミュニケーション活動」とは、意思の疎通をどうすればよいかを考えながら実行していくことを意味し、この中の一つが広告である。
◇お金を払わずに新聞やテレビに報道してもらえるケースも広義では広告といえるが、パブリックリレーション(PR)といっている。PRの中に狭い意味でのパブリシティがある。
◇旅行をして知らない町で食事をするときに、一方は全国チェーンでよく知っている店で、一方は知らない店だったとしたら、どうするだろうか。たいていの人は名前をよく知っている店に入るだろう。有名メーカーの背広を新調しようとするとき、どこで作ってもブランドは同じなのに有名百貨店で買う人も多いことだろう。中身が変わらなくて、違うのは包装紙だけだが、知っているものは安心できるからである。知らないものは不安という根本的な習性がある。だから、メーカーは信頼を勝ち得るために情報を発信したり、よく知ってもらうために広告をうつのである。
◇新商品の場合、まずスーパーに置いてもらわなければならない。陳列ケースの中でも良い場所と悪い場所があり、メーカー同士の陣取り合戦が始まるが、まずスーパーに入れてもらうことが大切。そのための手段として広告もある。広告は消費者に知らしめて買ってもらうという効果もあるが、広告をするとその商品が売れるので、流通業者としても扱いやすいということがある。
松下電器はマーケティング(物を売る仕組みづくり)が上手だった。その手段の一つとして広告があるわけだが、松下幸之助氏は「知らないことは存在しないことだ」と言っていた。とにかく新商品が出たら、よく広告をしていた。
◇日本のメーカーが広告費に費やした金額は2000年で6兆円だった。その内訳は、マスコミ4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)が中心で、そのほかSP(セールスプロモーション)、DM、折込チラシ、屋外ネオン、中吊り、POPなどがある。衛星放送やCATVなど媒体メディアも変わってきた。
◇プレゼントコーナーや新商品紹介などの記事は全部パブリシティという仕掛けられた記事である。そうやって消費者の注意をひいて情報を伝達する。カリフォルニア胡桃協会は、1982年に輸入解禁になって日本で販促活動を始めたが、料理に使ってもらうことが普及の近道と考え、料理コンテストを開き、認知されるようになった。このほかにもシンポジウムやセミナーを実施し健康によい食材ということをアピールしている。
情報価値とイメージ管理
◇イメージはとても大切である。商品の違いはあまりないので、結局はブランドイメージで買うことになる。商品の価値を買うのでなく、情報を買っているわけである。酒やタバコは典型的だが、嗜好性の強いものはすべてブランドイメージといえる。
◇ネスカフェゴールドブレンドは「違いのわかるゴールドブレンド」の広告を30年くらい続けている。あの広告ではゴールドブレンドの文化的な雰囲気を伝えているわけで海外旅行が普及していなかったときには、海外の様々なシーンを見せるCMを作っていた。これだけ長い間同じコピーだと、テレビを見ている人にはほとんど知れ渡る。SONYなども強いブランドイメージがあり、SONYが発売した商品というだけで安心感を与えるが、これは広告でいえばマーケティングのパワーがあることを意味する。
◇アサヒビールは最後まで発泡酒を出さなかったが、ことしに入ってから赤いパッケージの「本生」を出して市場シェアを逆転させた。アサヒスーパードライでこの10年間に培ってきた力が大きい。アサヒビールはスーパードライが出るまでは市場シェア6〜7%でどん底だった。小売店に相手にしてもらえず、小売店でも売れないので置かないといった悪循環だった。だが、スーパードライがきっかけで一躍サクセスストーリーとして語り継がれている。もちろん味が大切だが、景気のよい1985年頃に、落合信彦さんを使い、パワフルな広告をうったことも受けた。
◇生鮮品もブランドが作られている。1996年に「関アジ」「関サバ」は大分県の佐賀関漁協により全国で初めてブランド化されたが、テレビで広告をしたわけではないのに、販売のルートをうまく使って小売店や飲食店を通じて口コミで広まった。産地も一つのブランドになるという好例だろう。ブランドの価値は作るのは大変だが、落ちるときはどん底まで落ちる。食品の場合、品質管理は非常に大切である。
◇高級イメージを販路として使ったのは京野菜である。九条ネギや賀茂なすなど聞き慣れない商材を最初に三越と伊勢丹で販売した。ブランドイメージを作るために、行政と生産と流通とがうまく一体化して販売した例といえる。高級品だけでなく、ユニクロ、吉野家、マクドナルドなど低価格で買いやすいような商品でもブランドイメージが大事になってくる。ブランドをどのように作り育てていくかがマーケティングである。
広告のプロセス
◇広告をする前に、どういうような商品を作り、価格をどうするか、など決めなければならないことがある。いろいろな仕掛けをするのがマーケティングで、一言でいうと、物やサービスがどうすれば売れるか、売れる仕組みを作ることである。
あるゲームセンターの例だが、目的に応じて癒し系であったり、OLも対象にしたアミューズメント的なものなど変化をつけて出店している。ゲームセンターといっても暗いイメージでなく、最近はリラクゼーションという意味合いも出てきた。彼らが出店計画を立てるときにどういうマーケテイングをするかというと、出店予定の場所に行き、ターゲットとなる人の後をつけて、どういう店に寄って、どういうものを買うのかをチェックしたり、あるいは店の前に立って客の流れを見たりしている。ある薬局チェーンでも客が多く来店する時間帯によって陳列を変えている。これなどもマーケティングの一つである。
現状分析の手法
◇マーケティングでは、よく調査をする。たとえば新商品を出す際、メーカーは広告を作る前に、商品・市場・消費者という部分で調査を実施することが多い。これは広告をするうえで大事なポイントになる。商品情報が基本だが、企業と商品のイメージがどうなっているかも大事な要素になる。価格をどう伝えていくか、競合品はどういう関係にあるか、店をアピールするときに商圏の中で競合店がどのように存在しているか、市場の環境はどうか、商品の購入者がどのようなときに多いかなど、いつ、どのように商品購入者が行動しているかが市場マーケットの情報である。
◇消費者情報は消費者が購入する理由・動機である。消費行動には年齢だけでなく、属性があり、ライフスタイルが深く関わっている。どういう人たちが多いかを知ることが大切である。
◇最近は大量仕入れ、大量販売のスーパーは元気がなく、ブランド物など変わった食材や高級食材を扱う店は元気があるようだ。大量販売の店は最大公約数的なものを置いているが、現在は店がどんどん専門化してきている。客の狙いを定めたら、ある程度客に合わせた品揃えをするという店が元気なようだ。
◇調査でよく行われるのはグループインタビューである。定量調査と定質調査があり、定量調査とは、サンプルを集めて100人のうち30人が賛成ならば決まりという調査だが、定質調査は、その人のもっている意識がどうであるかを探る調査で、質を重視する。グループインタビューは同じ属性(クラスター)の人間を5〜6人集め、インタビュアーが聞いていくやり方である。
この調査から得られた結果をふまえて広告をうつとしても、問題点が何かということを解決してから広告をうつようにしたい。
広告の仕事の流れ
◇広告をする場合に重要なポイントがいくつかある。広告で何を伝えたいのか、広告の目的をきちんとすること。そうしないと見る人は何を言いたいのかわからない。いろいろな要素を入れれば入れるほどわからなくなる。ひとたび目的を達成したら次にいくというようにしないと伝わらない。価格・品質・品揃え・イベント・店の名前など、何を訴えたいのかということを明確にする。
たとえばアパガードという歯磨きは、歯を白くするということを徹底的に追求したCMをし、美白市場という新しいマーケットを作った。「ポジショニング」と呼ぶが、広告の目的をはっきりさせることが重要。また、梅酒といえば年配の人のイメージが強かったが、チョーヤの梅酒では、若い人を対象に広告し、お酒の飲み方を変えることで成功し、売上げを伸ばした。目的を何にするかによって広告の手法が違ってくる。
◇誰に対して、何を、どのようにいくのか。これによって媒体の選択とか表現が変わってくる。大事なのはターゲット。ターゲットとする層をできるだけ絞ったほうが伝わりやすい。それにより媒体の選び方も表現方法も変わってくる。
◇広告媒体を選ぶときに大事なのは、むだな媒体を使わないということである。東京で売るのに全国を対象にする雑誌広告を使うのはむだになる。テレビスポットCMは15秒が基準になっているが、夜のゴールデンタイムで200〜300万円ぐらいである。東京のテレビ局でスポットをうつと、カバーする県が東京、神奈川、埼玉、千葉、約1200万世帯、人口にして3000万人弱が対象になる。このうち視聴率が20%とすると、3000万人のうちの600万人が見たということになる。そうすると、200万円出しても600万人の人が見れば1人当たり3円ということになる。チラシは1部当たり5円かかるが、小さなエリアに広告が出せるというメリットがある。新聞は全国版では4000万円もかかるが、1人当たりの広告料金は3〜5円になる。大体どれも1人当たりの広告は3〜5円なので、そう高いものではない。一方で、DMはマス媒体からすると1人当たりの金額は高いが、狙い定めたターゲットに出せるということで効率としてはよい場合がある。ターゲットとエリア、広告を打つ時期を決めることが重要である。
売れる広告づくり
◇広告作りは、マーケティングのアイディアを考えて行うこと。広告を作るということは差別化することである。近所の店とどう違うかを研究し、自分のセールスポイントを作る。どのようにマーケティングのアイディアを考えていくかがポイントである。その場合、成功している事例を競合店、異業種に限らず、研究して、まねから入り、改良していくのは大事な戦略である。
◇店に人を呼び込む仕掛け(プロモーション)を作る。直接の購入につながらなくとも、知名度を上げるという仕掛けもある。店のディスプレイも広告の一つ、あくまでも主役は商品なので、商品を引き立たせるようなディスプレイを作ることが大切。ワインのポスターをワインの売場に置いても効果は薄い。チーズ売場に置くと、ワインもチーズもおいしそうに見える効果がある。
◇チラシも「Zの法則」といわれ、左上が最もインパクトが高い。広告でも何かやったときに大事なのは、効果を確かめることである。どれぐらい広告効果があったか、課題は何かなどを整理していくと効率のよいコミュニケーションにつながっていく。
◇色も表現上大切なポイント。色を選ぶときは、周りの景色の中で何色が効果があるかというのを考えると効果があがる。
◇欲張らずに、一点に集中させるとよい。パンフレットやチラシなどはゴチャゴチャすると逆に伝わりにくい。チラシでもとっておきたいと思わせるような価値があるものを作ることも大事。
◇今広告は、マス広告から個人のワン・ツー・ワン・マーケティングの考え方になっている。これはポイントを絞って点でやっていくこと。マスで大量に広告をうつのでなく、個人に対して発信していく。そのために媒体もどんどん変わってくるし、広告の手法もどんどん変わってくるだろう。
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