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せいか研修セミナー「八百屋塾」
平成13年度 第9回 12月16日(日)開催


八百屋は創意工夫で仕事ができる職業、元気を出そう!!

学習品目:イチゴ、かんきつ類


江澤正平先生の話 

まず果物について総論的な話をしてから、果物の味、個々の品目の話に移ります。

 果物は天然自然にできたもので、生きていて呼吸をしています。だから多様性があり、同じものはありません。見てくれは同じようでも、実ったところで違います。機械で作っているわけではないので、呼吸しているということを知っておいてください。菓子は人工なので画一的に同じものができますが、果物はそういうわけにいかない。そこに違いがあります。果物は気候によって影響を受けるので、毎年同じものができるとはいえません。

 野菜と違うのは、野菜はおかずになるが、果物はデザートになるということです。野菜は熱をかけて手を加えますが、果物はそのままで食べるのが一番望ましい。果物の中でもクリは人間の長い歴史の中で主食になった時期がありました。クリは常食できないし、気候風土で影響を受けるので、人間の増加と連動することができず長続きしませんでした。果物でも主食になった時期があったということは頭の隅に入れておいてください。

果物は嗜好性が強く、昔は王侯貴族が食べていました。一般庶民に手が届かないし食べられないものでしたが、今のような立派な果物はなく、天皇家や貴族などが生産を保証して栽培が成り立っていました。温室マスクメロンは明治以降に貴族中心に食べられていました。、早稲田大学を創設した大隈重信がメロンを栽培しメロン協会をつくったり、三井農園が田園調布あたりで栽培したりしていました。それらを東京神田の万惣などがもらい受けたという記録もあります。

 庶民が食べられない時期外れのものを求めたり、見てくれのよさや大きさが昔から喜ばれたりしました。こうした「階層性」がずっとあったのです。

江沢先生の講義に聞き入る参加者の皆さん。

 戦後、我々の生活は豊かになり、果物がふつうに食べられるようになりましたが、考え方としては見た目のよいものが尊ばれてきました。みかんは10年くらい前までは大玉のほうがいいとされてきましたが、今ではSや2Sのほうがおいしいからと、味が優先されるようになってきました。階層志向から本物志向に変わりつつあります。依然として大きいほうがよいという感覚はありますが、貴族的な趣味から果物のおいしさをもっと追求する形に、これからはなっていくでしょう。

 明治以前は、みかんでも種が入っていました。種がないのは子種がなくなるということで嫌われたのです。スイカも武士階級ではスイカの赤い色が首切りを連想させると敬遠されたので、庶民が喜んで食べました。無花果、びわ、ぶどう、特に甲州ぶどうは鎌倉時代からあるという記録もあります。柿は御所柿があり、甘い柿は天皇家が使っていました。「階層性」は柿においても表れています。明治以後はリンゴの植木などが全国へどんどん出回りました。

 果物の多くは明治以降に輸入され、栽培されるようになりました。そして大正から昭和にかけて、小売店が果物を普及させてきました。銀座千疋屋先代の斎藤善政さんは、よいものを頒布したり、宣伝販売したことで知られています。昭和3年にはスターキングを輸入し、フルーツパーラーを日本で最初に開き、果物を加工して食べさせることを始めました。

 また、卸として三越に納入していた二幸(現在のサンフルーツ)の石塚富三さんは、三果会をつくって高級果物を食べる催しをしていました。
 
 こうした活動を通じて、果物が中流階級以上の人たちに知られてきました。しかし、戦争になると果物の木は切られ、サツマイモを植える、戦後庶民の生活が安定してくると果物を実らせるということをしていました。今は食べものが多くなり、果物の消費が全体からみると減っています。

 輸入自由化については、パイナップル、グレープフルーツなどが自由化になった時分は、解禁しても植物防疫法があり、1ドル360円時代でもあったので、空輸すると高くつき、なかなか思うにまかせない時代が続きました。

 植物防疫に対する技術の発達や、関税引き下げなどにより、いろいろな果実が自由化されてきました。果物は完熟すれば一番うまいものの、完熟する状態は傷む一歩手前なので、扱いにくいという問題があります。
 果物はちょっと下り坂のところにきています。生で食べて消化があまりよくないし、たくさん食べられないからです。しかし、野菜も果物も生活習慣病によいとされています。果物と野菜を多くとらなければいけないが、おいしくなければたくさん食べられない。生活習慣病を少なくすれば、医療費の減少にもつながります。

 八百屋さんは消費者の健康を維持しているすばらしい商売で、医療費を減らすということで国の役に立っているのだと自信をもってください。

 果物のおいしさとは、糖度で甘ければいいというのでなく、食べてみてどうなのかということです。見る、臭いをかぐ、舌で味わう、口の中で細胞が割れてフレーバーが出てくる、これら全体がいちどきに出て味わうわけです。おいしさは甘さだけではないので、ベロメータをしっかり鍛えなければいけません。

 果糖を含むリンゴやブドウなどは冷やすと甘味がまします。酸っぱさにはクエン酸とリンゴ酸の両方ありますが、夏みかんは酸が強いので糖が消えているのです。酸が薄ければ甘味を感じます。みかんは小さいほうが甘みが強い。大きくなると酸も弱いし甘味も弱い。甘味を酸が妨害しているわけなので、小さいほうが酸が弱いのです。

 味については、酸と糖の問題があります。例えば桃はいくら糖度を計っても渋みがなければ桃らしくありません。桃水などはほんのわずかですが渋みを入れています。子供が甘さしか感じないように、甘さだけを追求するのは幼稚なのです。酸いも甘いもわかるようにならなくてはいけません。甘いだけのリンゴ、ミカンならば後をひかないが、ほどよい酸味があるのがうまい。酸味が強いのは難しい。だから、酸味のまろやかさは本当に大切にしていかなければなりません。

 また、果物の大きさとうまさは比例しません。旬は移動していきます。産地によって旬が違いますから、よく情報をとってください。

 食べ頃をどうするかというのは、非常に大切です。消費者が小売店に買いにいくのは、すぐ食べたいからで、そのあたりを業界全体として考えていかななければいけません。

 その年によって違うので、いつ頃一番熟しているのかというのは一番必要です。でが熟したものを長持ちさせるのはどうするのか。収穫してから低温管理すると呼吸作用が低くなるので長持ちします。

 ですから、八百屋さんが果物を日の当たるところで売っているのは品質を低下させているわけです。果物のほうは野菜よりも消費地にくるまでの温度管理はまだまだ研究する余地があります。特に、イチゴは福岡あたりからでも温度管理して運びますが、リンゴなどは収穫してから3日くらいでふけやすくなるので、温度管理をしなければいけません。「世界一」は7時間くらいで品質が低下する。品物をおいしく食べさせるためには非常に気を使わなければいけないのです。

 栄養については、副作用がなく、おいしく食べられることが大切です。食味については去年はこうだったから今年はどうかということを覚えていく必要がある。ただ漫然と食べていたのではなく、専門家として経験上覚えていってください。

配布された資料を見て、内容を検討する参加者

試食の準備に忙殺される、世話役と荒井先生、上原先生


 柑橘

 柑橘の問題は皮が薄いのと厚いのがあることです。

 みかんは極早生から早生、温州、貯蔵になるが、青切りミカンは香りを売らないと意味がありません。
 早生温州は11月中下旬がよくなってきます。みかんの中にポンカン、クレメンティンがありますが、クレメンティンは香りが独特です。

 夏みかんは大きいほうがいいです。伊予柑はじょうのうが堅く、、実が柔らかいので、食べにくい。伊予柑よりも清見などに移ったほうがいいでしょう。清見はスマイルカットにすると食べやすい。デコポンは清見とポンカンを掛け合わせたものですが、露地のものを売ればいいでしょう。

 美生柑は、ヘタがついていないといけないというのでわざわざ落下防止剤をつけたりするが、ヘタがなくても味は変わりません。

 普通温州は、M、Sがおいしい。スダチは黄色くなると酸が抜けてきます。柑橘は寒さに当たると酢上がりが起こりやすい。

 和歌山あたりで木成り八朔が売られていますがうまい。みかん類の値段がとれて売れるのは、100万トンが限度ではないかと思います。

 ライムはレモンよりまろやかですが、日持ちが悪い。

 黄金柑は味のよい柑橘なのに小さいので二束三文で売られ、みんな木が切られてしまいました。今ならSが売れる時代ですが、以前は大きくないとだめという風潮で廃れてしまった柑橘が多くあります。

 リンゴ

 リンゴは、どこの産地のものを売るのかが問題です。酸が多いのは、「紅玉」「三太郎」、酸が少ないのは「つがる」などがありますが、酸が多いのは調理に使えます。だから、知らせてあげるのが親切ですね。今の八百屋さんはカラーコントロールだけでリンゴを並べていて、味がどうなのかという情報を伝える並べ方をしていない。

 ヨーロッパではリンゴを丸ごとかじっているが、皮が薄くて、丸ごとかじれるリンゴが出てこないと普及しないと思います。それから、リンゴカッターというものがあって、これならば簡単に8つ切りにできて、皮をむかないで食べられるので、お客にもすすめてください。

 リンゴは満遍なく色を付けるためにある時期がくると果実周囲の葉をとっていますが、葉で栄養分をつくって実にまわすので、葉をとるということはそれだけ栄養分をなくすことになります。ですから、葉とらずリンゴは理屈のうえではうまいはず。矮化栽培をすると、てっぺんが割れやすくなりますが、この軸割れリンゴをすぐ食べるとうまいですね。


 柿

 柿は日本と中国が原産地です。

 不完全甘柿は、「西村早生」ですが、今は機械で渋を判定しているので、渋い柿が出回ることはほとんどありません。甘柿は身分の高い人が食べたので、「御所柿」といった名前がついた柿もあります。
 渋柿は「平核無」「四つ溝」「会津身不知」「西条」など、干し柿は、「甲州百目」「市田柿」などがあります。
 柿は大きいほうがいい。柿渋は防水に用いられたり、渋うちわに使われたりします。


 ぶどう

 ぶどうには米国系と欧州系があり、欧州系ぶどうは皮が薄く、あまり脱粒しません。アレキサンドリア、ネオマスカット、甲州、甲斐路、ルビー奥山などがあります。

 米国系ぶどうは、皮が厚く脱粒する。デラウェア、キャンベラ、ナイアガラ、巨峰などです。ぶどうの臭いは、米国系はFOX狐臭、欧州系は麝香臭といわれています。

 アレキも青いものを置いてくると色があせて飴色がかってきますが、ずっと青いままのブドウはナイアガラだけです。早くとったぶどうでも熟してきます。木で熟したのと、収穫してからおいたものとでは、種を見るとわかります。熟すと黒くなるが、白っぽいのは熟していません。青いぶどうだからといって、青さで売るのはだめで、アレキなども熟して収穫したものは本当にうまい。

 熟度がきているかどうかは種を見るとわかりますが、種なしぶどうは食べてみないとわからないし、種のあるなしは外側から見てもわかりません。

 けれども、日本人の多くはぶどうの種を出しますから、食べるときに口元に手をおくのは、まず日本人と思って間違いありません。


 なし

 中国や日本が原産地です。なしは若どりするとうまくありません。熟度はカラーチャートで合わせて収穫しています。

 「幸水」のお尻を出す陳列の仕方は、「長十郎」と区別するために、林フルーツで始めたといわれています。
 「幸水」は「幸蔵」と「菊水」を交配して作られましたが、「豊水」のほうが酸味があります。
 遅い梨としては「新興」「新高」があり、「二十世紀」は偶然に発見された梨です。
 西洋梨は熟度が問題で、このごろは西洋梨を樹上で完熟させる実験が行われています。


 桃

 桃は中国が本場ですが、果皮に産毛のあるものとないもの、離核性のものとそうでないもの、果肉がメルティング質なものとかたいもの、といったように果物の中で一番味の幅があります。「白桃」と「白鳳」が代表的。甘味だけではだめで、渋みも必要です。かたい桃は砂糖で煮て、レモンを少々加えて冷蔵庫に入れるとおいしくなります。


 スモモ

 日本人はスモモを粗末にしすぎています。観光園が最もおいしいのをたべさせているのではないかと思います。スモモの時期に山梨県に行って食べるとうまい。山梨県で6〜7割を生産していますが、熟度の高いのを売れば商売になると思います。
 「サンタローザ」「ソルダム」はうまい品種です。


 さくらんぼ

 さくらんぼは加工したり、酒のつまみに向きます。でも、ジャムが最高です。
 完熟した「ナポレオン」は本当にうまいが、「佐藤錦」も「ナポレオン」の血を入れた品種で、ほかに「高砂」「南陽」などがあります。
 さくらんぼは熟したものでないとうまくありません。


 びわ

 びわとバナナとどちらが食べでがあるかといえば、びわのほうが可食率は高い。びわは予冷してからもってくるとうまいが、もっと熟したものをもってこないといけない。期限限定にするぐらいに神経を使って販売すればよいと思います。


 無花果

 割れていないとうまくありません。関西ではデパートでも割れたものを売っています。東京ではうまいものをまずくして売っているわけです。セレステ(一口無花果)はうまい品種で、家庭菜園にも向く。乾燥無花果は生で食べているのとは違う品種で、トルコなどから多く輸入されています。


 クリ

 日本、中国、欧州種がありますが、渋皮がすぐはがれるのは中国クリです。いいクリだと渋皮をつけたままで料理できます。中国のクリはかたくて煮るのは難しく、焼かないとだめです。ヨーロッパは大きいクリがあるので、マロングラッセなどクリのジャムをよく作ります。
 日本でクリの品種を作ると、すぐ韓国へもっていって生産され、日本に輸入させるようになります。現在5万トンくらい出回るうち、半分は韓国からの輸入物です。


 スイカ

 自根で作ったスイカはうまい。切り売りは関西のほうから始まりましたが、東京でも切らないと売れなくなりました。


 メロン

 露地と温室栽培があります。メルティング質のものは、緑の果肉が多い。しかし、北海道の夕張メロンもメルティング質です。


 イチゴ

 イチゴは「春の香」あたりから旬が早くなってきました。イチゴで特に注意したいのは食べ方です。甘いほうから食べると後味が悪いので、甘くないほうから食べるほうがいい。「宝交早生」などは全体に甘さがありましたが、今のいちごは甘いところと甘くないところの差が出てきました。だから、ヘタのほうから食べるようにしてください。


東京青果株式会社事業企画推進室副部長 柿下秋男さんの年末年始の果物状況
(イチゴとその他の果物)

 【イチゴ】2001年は天気がよすぎて早く出荷している産地が多い。ふつうなら60日くらいで色がつくのに、50日で色がつくため、中身が伴わないうちに出荷してしまう。もう少し寒さがきて甘味がのってくるとおいしくなる。

 関東のほうは、「とちおとめ」が90%まで占めるようになった。「とちおとめ」は実が大きくなるのが特徴で、1つの株から7〜8個しかできない。1つの株でとれるのは決まっているので、それがLか2Lになるかで違ってしまう。

 「とちおとめ」は本格的に取り組み始めて3年目くらいなので、まだ力があるが、「とよのか」は10年くらい作っているので収量が落ち、病気に弱くなってきている。福岡県でも新品種を開発しているが、まだ「とよのか」に代わる品種が出てこない。栃木の「とちおとめ」は生産量も増え、単価も出ているので年内から正月にかけては潤沢に出てくる。品種と産地によって変わってくるが、冷えてくると本当の味がのってくる。

年末年始の果物状況解説する東一事業企画推進室副部長 柿下秋男さん

 イチゴのパック詰は大変な作業で、産地では高齢化が進んでいるので、簡素化が進んでいる。ヨーロッパでは粒で紙袋に入れて販売していたが、これからは日本でもパックでなく、粒売りが出てくるのではないか。今はコンビニでみかんが1個30円で売られる時代。極力食べてもらえるようなタイミングを考えていかねばならない。
 ケーキ屋さんはMSのイチゴを使うが、大きな「とちおとめ」が主流になると、クリスマス時期には大きいサイズより小粒のほうが高くなることもある。

 【その他】みかんは豊作型で今年は135万トンといわれているが、産地では125万トンを目標に出荷調整している。味はよいのに価格が安く、産地が気の毒なほどだ。どこも平均糖度が高くて、おいしい。一昨年はばらつきがあったが、今シーズンは量があって味もよい。愛媛県は定評があるが、特に九州のみかんがおいしい。数量的にも潤沢で内容も順調。あとはどんんどん売っていただきたい。

 りんごは豊作で、内容良好、蜜の入りがすごくいい。価格も安いので、今シーズンはギフトとして使うにもよい商材といえる。
 洋ナシもラ・フランスは定着してきている。追熟させずにすぐ食べられる状態での販売も出てきている。ル・レクチエもおいしいといわれるが、洋梨全体にもっと大衆的な果物になっていってほしい。

 完熟金柑、デコポン、文旦はおもしろい商材だ。

 農水省のホームページで生鮮食料品のマーケットレポートが出ているので、ぜひ参考にしてほしい。


日果連会長林武幸氏が、時間的経過を大事にし、美味しいときに美味しい果物を販売してくださいと真摯なお話をされました。

講義が終わって、実際に試食をしている所。柿下秋男さんの話どおり、異義語は全体的にやや味が薄い。