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せいか研修セミナー「八百屋塾」
平成13年度 第10回 1月20日(日)開催




学習品目:ネギ、白菜、葉玉葱、生椎茸  参考出品:ヤーコン、 スペアミント、スイートバジル


江澤正平先生の話 

  昨年を振り返ってみたら、バナナの話が抜けていました。バナナは季節感がなく、栄養が豊富なので、乳児食には一番最適です。植物防疫上の問題で、熟れたものは入らず青バナナしか輸入されていません。角張っているバナナばかりですが、完熟すると軸が丸くなってきます。1本ずつバナナをポリ袋に入れて売っているものから、房で販売するものまでいろいろありますが、なんでも安く売ればいいというのでなく、あそこのバナナはうまいよといわれるものを売っていただきたい。バナナは大切な果物だということを認識し、関心をもってください。

 今日は農業について、話したいと思います。正式にいうと、「農業で育てたもの」についてです。農業は生き物を扱っています。生き物は人間が作ることはできません。育てているのです。種に水や肥料を与えて育てたものを我々が利用しているのです。

 人類の歴史は300万年前、火を使うようになったのは50万年前、それでは農業はいつ頃始まったかといえば、1万年くらい前といわれています。それまでは、えさを探して取ったり、狩猟をしていた。縄文時代にはクリが主食になっていたが、それだけでは主食が足りない。それでいろいろ雑草を食べるようになり、人間が食べてもだいじょうぶなものとそうでないものとを見分けるようになってきたのです。

 食べ物の情報は始めは口伝えだったかもしれないが、だんだん文字で書いて伝えるようになり、経験を積み重ねていくうちに栽培方法などもわかってきました。こうした積み重ねがあって、現在の農業は成り立っているのです。ですから、安売りされたり、粗末にされたりしている野菜を見ると、大切な野菜をこんなに粗末にしていいのだろうかと思います。長年の歴史の積み重ねを、特に大切にしていただきたいと思うわけです。

 ハチの巣が去年より上の方にできたというと、農家はなぜだろうと考えます。暴風がきたとか、大水が出たとかの現実の動きと重ね合わせて考えてみるわけです。同じ畑で大根の種をまいたとしても出来方が違います。日本に古くからあった野菜は、シベリアのほうからきた人たちが日本で生活するためにもってきたものを、先住民もまねて食べ、改良を加えてきたものです。明治維新後も同様で、欧米人がもってきたものを我々も食べるようになった例がたくさんあります。
ネギについては、韓国でネギを植えた人という民話があります。その時分、人間が牛を食べるどころか、人間を食べていた。それをいやだなぁと思った男が、よそはどういう食べ方をしているのだろうと他村へ行ったら、そこでは人間と牛とを分けていた。どうしてそのように分かれたのかと聞くと、ネギを植えたから人間と牛は分かれたのだという。それで喜んで戻ってきてネギを植えたが、その男は牛の代わりに食べられてしまった。けれど、ネギは残ったという話です。

 韓国では、肉の調理にネギを大量に使いますが、ネギは臭みを少なくするのかもしれません。ネギと大根は神様からいただいた大切な野菜として神様にお供えする野菜でした。大嘗祭などの儀式には必ずネギが用いられますが、ネギ坊主は烏帽子に似ているので、橋の欄干などに描かれて崇拝の対象になっていました。室町時代になると、ネギだけをかついで売る人もいたほどです。蕪村や芭蕉の句にはネギについてのものがたくさんあります。

 農家の人は1つの畑に多くの種類の野菜を作っていましたが、だんだん都市へ供給しなければいけなくなると、特定の野菜を効率よく大量に作るようになりました。そうすると病気が一斉に出たり、連作障害が起きたりするので、野菜農家でもお米で生活の安定を図っていました。野菜が安いときには補償してくれないと困るというので1960年に野菜供給安定法というのができ、生産地に指定産地を作って都市に供給するシステムができました。ところが、80年代になると食べ物が余ってきて、大量生産が壁にぶつかってしまった。食べ物については栄養、安全、品質の問題に入ってきたのに、生産はあくまでも野菜を物としてとらえて量のことしか考えてこなかったのです。野菜が食べ物として考えられていない。生産も、食べてどうなのかという考えなければいけないのに、たくさん作って金にしようという考え方でした。たくさん収穫できて作りやすくて病気に強いものにしよう。おいしそうに見えるように見てくれをよくしよう、規格が揃わないと困る、日持ちも必要ということが中心となって、食べてうまい、栄養がある、安全であるというのは欠如するということが続いてきました。

 私は81年に会社をやめ、食べ物としての野菜を見直そうということでやってきました。85年にブルームレスキュウリができ、皮が厚くてまずいので、こんなキュウリはだめだと警告したのですが、きいてもらえませんでした。80〜90年、キュウリは野菜のトップだったのが、10年間で下がってしまいました。これはブルームレスなので売れなくなったからなんです。皮がかたいので塩が入らないから、漬物屋さんはブルームレスをやめて四葉を中国で作らせるようになった。だから漬け物のキュウリのほうがうまい。キュウリがこんなになって困ると今ごろ言っているけれど、なくなってしまったものを復活させるのは大変ですよ。八百屋を将来続けていきたい人はいいものはいいものとして大切に守っていかないといけません。安ければいいということで、なんでも安いものにしていくと、どんどん悪くなって食生活に響いてくる。93年の統計を見ると、日本では野菜を1人当たり120kg、アメリカは93〜94kg消費していたのが、98年にアメリカは120kg、日本は100kgで2割ダウンしている。アメリカの野菜はうまいかというとまずい、まずくても健康のためにたくさん食べている。だから、その点を考えると、いい野菜は大切にしないといけない。粗末にしていると体も粗末になっちゃうよ。

 果物のうまいのは食べてみてわかる。野菜の場合もトマトはうまくないと売れない。カボチャもそうです。20年くらい前に江戸崎の人がうまいカボチャを作って高く売ったので、カボチャのうまいものはずっと続いてきている。
 行政も野菜を食べ物扱いしていない。全農や農協もそうだ。食べ物を作ってお金をとるという考え方がない。スーパーも見てくれと値段だけで、食べ物として扱っていない。効率性だけでは通用しなくなってきている。生協は農薬については敏感ですが、やはり食べ物としての感覚が薄い。外食は加工しやすい野菜を使って調味料で味をごまかしている。だからこそ八百屋さんがいいのです。

 今食べている野菜は、何千年という人間の知恵の賜物です。農業は食べ物を育てているから大切なのだとご理解いただきたい。

 農業のしかたとしては、水耕、ハウス、露地栽培があるが、露地栽培が一番うまい。自然条件で気象や気候風土の影響が大きいだけにそれらを乗り越えてできたものについては大切にしなければいけない。溶液栽培は簡単に栽培できるが栄養価が薄い。露地栽培だと紫外線に当たるが、活性酸素に対する対応力が強いので、紫外線に当たった野菜を食べるほうがよい。そういう点で露地の野菜はできるだけ大切にしてほしいと思います。


ネギ
 ネギは大きく分けて加賀ネギ、九条ネギ、千住ネギの3種類あります。ネギの分け方というと、冬休眠し、じっとしているのが加賀ネギ、冬でも活発なのが九条ネギです。ですから、寒いところでは九条ネギはできません。千住ネギはその中間で、どこでもとれます。ネギは「薫酒山門に入るのを禁ず」ということで、ネギ、ワケギ、ニンニク、ニラなどは坊さんは食べてはいけないといわれていました。ネギは太いのと細いのがあり、太いのは下仁田ネギ、細いネギは芽ネギがあります。切り方や食べ方によっても違います。ネギは締まっていながら柔らかいものがいい。風に当たるとネギは皮がかたくなります。昔は泥を洗ったが、そのまま置いておくと皮が乾いてまずくなります。泥つきは一皮むくとうまい。関西だとネギを細かく切ってパックで売っている。そばに入れるのは辛いネギだとだめです。煮て甘いのは辛い。
 「ねぎまの殿様」「たらちね」という落語がありますが、ネギは非常に絵や落語、唄になりやすい野菜です。
白菜
 芯が黄色でないと困るという観念が「新理想」から出始めた。確かに、黄色いほうが漬物にすると色の上がりがきれいだ。兵庫県では米をとった後にタマネギを植えていたが、米の収穫が遅れたあとに白菜を植えてみようということになった。
 白菜はみずみずしく肉厚のほうがいいが、1〜2月になると生理障害でゴマが入りやすくなる。東南アジアでは白菜をサラダにしてよく食べるが、夏にできる白菜はサラダに向く。結球しない小さな白菜は10月頃にできるがピークの期間が少ないものだから、あまり売れない。7〜8年前に核家族向けの白菜としていいだろうということで売り出したが、白菜漬けなどを作る家庭がなくなってしまって、小さい白菜もそれなりにおいしかったのに、結局は切った白菜で間に合うということで売れなかった。
 白菜はもともとカブナとチンゲンサイを揚子江あたりで自然交配したもの。日本に入ってきたときには割合に柔らかかったが、日持ちが悪いといわれてかたくなり、「新理想」になってからまた柔らかくなってきた。柔らかい白菜は鍋に入れる場合、後から入れないと、とろけてしまうので注意が必要です。

荒井先生の説明
 ネギは西洋料理ではポワロと呼ばれている。ネギはすごい野菜で、ネギがないと料理がだらけてしまう。香り、ピリッとした辛味、甘味と味わいがある。また消臭効果もある。ネギの青い部分を油に入れて香りを出し、ネギ油にしたとたんに一桁高い中華料理になります。使った油もネギとショウガの皮を入れると見事に臭いが消えます。また、ネギはスープをとるときにも味が違っています。種苗会社の人が教えてくれたのですが、ネギの味をみるときには、3〜4cmをぶつ切りにしてたてて鍋に入れて、鍋に7〜8分目水を入れて蒸すと一番ネギの味がわかるのだそうです。おいしいものはぶつ切りのほうが味がわかるようです。しかし、斜めに切ると、表面積が大きくなるのでぶつ切りとは違った味が出てきます。加熱時間が短いものはぶつ切りが適します。

東一 澤田部長の説明

 ネギ
 ネギの中で「西田」「宏太郎」の違いは、はっきりわかりません。今日は富田さんという篤農家からそれぞれの特色が出るような形でネギをいただいています。
「西田」というのは柔らかさを一番に、甘さを二番目にしたネギです。「宏太郎」は息子の名前をとったそうですが、西田系の品種選定をして甘さを一番、柔らかさを二番との特色をもつネギです。愛知県の「こしず」という葉ネギに近いネギは、在来の千住ネギと愛知の在来種との自然交配でできました。甘みが強く、茎の部分も食味良好です。名古屋は煮込みうどんが有名ですが、味噌文化の名古屋で使われているネギはほとんどこれです。とはいえ、「こしず」は愛知県の推奨品目で地場中心の流通なので、東京には出てこない「幻のネギ」です。
 京都の九条ネギは九条系品種で一般的には葉ネギといわれています。
 中国産のネギは最初は福建省(長悦)から出てきていて、今出ているのは上海地区(金長、長宝)のネギです。日本国内の種苗会社が台湾経由でネギを入れていますが、輸入業者はわかりません。中国産ネギは、かたい、安いというイメージがありましたが、収穫してから5日くらいたっているからそうなるので、これらは柔らかくて安定供給が可能というのが売りになっています。

 シイタケ
 岩手産のシイタケ(秋山菌種A607)は原木栽培品種で肉厚、歯ざわりが良好です。中国産は菌床栽培です。
 葉たまねぎ(ソニック)は、炒めても煮てもおいしく、春を呼ぶ野菜です。一般の消費者にはなじみがない野菜なので、口コミを含めて春の野菜として販売していただきたい。

 白菜
 白菜はどちらも黄芯系。茨城県の「新理想」は甘味が強く柔らかく、漬け物に合います。また、兵庫県の「黄心」(きごころ)、「美黄」(みき)は同じく甘みが強く柔らかいのですが、鍋料理によく合います。また、チラシのコピーを配りましたが、茨城白菜栽培組合では「霜降り白菜」を売り出しています。従来あったものをもう一度見直そうということで出したよい商品なので、栽培形態により味が違うということをぜひ消費者に説明してください。販売のアクセントとしてもよいと思います。

 ヤーコン
 ヤーコンは成人病予防ということでにわかに注目を浴びています。生で食べてもおいしいし、炒めても違う味わいになります。カロリーもとても少ない。置いておくと黒変してくるので、水かレモン水につけるようにお客さんに教えてあげてください。細く切ってツナサラダなどに向きます。5kgで約1500円です。
 
江澤先生に感謝を込めて卒寿の記念品

 江澤先生の誕生日は1912年7月31日。ということで、90歳になりました。この日は年明け最初の八百屋塾ということで、塾生一同より感謝の気持ちを込めて記念品が贈られました。1912年7月30日は明治天皇が亡くなった日だそうです。

 このあと江澤先生が長生きの秘訣(2〜3年先のことまでしか考えず、生きがいをもって行動する等)などをまじえてお礼の言葉を述べ、塾生たちも先生へのお礼の言葉や日頃の経営方針、目標などをひとことずつ発表しました。

いままで見た目、概観を重視してきたが、野菜の奥の深さを知るようになった。
こだわり商品を売っていきたい。うまいものを売ればリピーターが増えていく。値段に惑わされず、おいしいものを自信をもって売ったほうが売上にも利益にもつながるし、お客様も増える。
試食をすすめ、「味が違いますよね」と納得して買ってもらっている。
野菜の味を知っているとお客さんに自信をもってすすめられる。
八百屋塾で「自分の舌を信用し、自信をもってすすめなさい」と教わり、今までの考えを改め、自分で野菜を試食してから販売するようにしている。
自分で食べて自信をもって売るようにしている。
90歳になっても八百屋をしていきたい。てんぷくトリオの伊東四郎は3人組のときにはキャラクター的に目立たなかったが、今は人気者になっている。なんだかんだいっても生き残ったほうが勝ち。そのために去年12月からベジタリアンダイエットを始めた。
今までは味よりも値段にこだわっていた。味を優先していきたい。