|
江澤正平先生の話
初回は、野菜や果物は利潤を売る商品であると同時に、食べ物ということを中心に話をしていきます。
なぜ皆さんが食べ物屋にならなければいけないのか。
今、物品販売業の競争はとても厳しい。スーパーは30年も経験を積んできて資本も大きいので、八百屋さんが四つに組んで対抗することはなかなか無理です。しかし、彼らには欠点があります。今のスーパーはお客が陳列してある野菜・果物のをもっていってレジで支払うという自動販売機のような形態なので、消費者が食べ方などをよく知っていればよいが、知らない人にはアドバイスをすることもありません。
いまの流通業界は、生産者から小売まで物品販売目的で、食べ物を販売するという観念が希薄です。根本的に農業は食べ物を作るというのが目的なのに、生産が目的になってきて食べるという大目的が見えなくなってきているところに、最近のような食品についての様々な問題が出てきています。やはり食べ物を扱うという意識に目覚めないといけないし、それがスーパーや量販店に欠けています。しかし、スーパーが食品を食べ物として扱うということになると、効率性が失われるし、それだけの人材もいない。それが一番欠点で、スーパー自身もそれを感じています。
これからの時代は専門店になるということが必要です。現在の消費者は情報を得ていないし、教育もされていません。ですから、顕著な例としては、飽食の時代に入った1980年頃からブルームレスなキュウリ、いわゆるまずいキュウリが出てきましたが。ブルームがないから鮮度があっていいキュウリと勘違いをしている。
キュウリを見ていれば野菜の相場がわかるといっていたのに、キュウリが王座を追われている。いったん落ちたものはなかなかうまくいきません。ですから、悪くなるのはわけはないが、それを直していくのはむずかしい。
|

|
ナスも4〜5年前から寒さに強い千両が出ているが、おいしくない。千両なすよりも、従来からあるナスがよいと思って、栃木でも群馬でも冬に寒いところは変えていっているが、いったんまずくなれば食べていかないということです。
野菜がテレビの情報番組などで紹介されても全体の食事の中でどういう地位を占めているか、ということを考えない。テレビに出たときにはすぐに売れるが後が続かないという状況です。いまこそ小売屋さんが食べ物屋に変身して、専業店になるという形にしなければいけない。
とはいえ、八百屋さんも儲からなければいけない。儲けという字は信者と書きます。やはり信用されるもの、儲かるというのは結果です。儲かるということでなければいけない。儲けるのは自分のことを考えている。みなさんのなかでも儲ける人はいると思います。自分のことを考えているのでまずいと元も子もなくなるわけです。お客さんの役に立つならば長続きするわけです。儲けるのでなく、儲かる形にしなければいけない。信用は嘘をつかないこと、だまさないこと、失敗したら実はこういうわけで失敗したんだということであれば1回ですむわけです。
お客の立場に立って考える。情報公開なんですよ。
今の農業ははじめに生産ありきで、食べ物という観念が少なくなっている。そこから出発して食べ物を考えていかなければいけない。農業は食べ物を作るということが出発点です。
人間がじょうぶに生きていけるというのは、食事の問題です。当然、おいしく食べていかなければいけない。当然安全でなければいけない。商品を作るということより、食べ物を作り育てるということです。動物・植物などの生き物を作り出すことは人間にはできません。まだまだ人間は生物を作ることはできないのですが、育てることはできる。だから、育て方が問題です。生産性を中心に育てると、病気に強い、作りやすい、たくさんとれるというところに傾斜し、見てくれのよしあしも変わらなくなります。
現在、騒がれている狂牛病の問題でも業者がごまかして並べたのがありましたが、外国産と日本産と見てくれは同じでわからない。揃いがよく、同じような大きさで、日持ちがするようになっている。
果物もそうです。腐る一歩手前がおいしい。食べごろのものをどう提供するかが重要です。
まず野菜がどうなのか、品質の問題がありますが、基本的な野菜の特性というのがあり、栄養性と嗜好性があります。さらに、安全性、これをどうそろえていくかが鍵です。となると、やはり植物は品種の持つ特性というものが重要になってきます。
品種によって硬軟があるし、時期によって作型も違う。品種による作型の違いを「氏」と命名しています。地域的な気象条件、土壌条件なり、その土地固有の風土があるなかで、どういう作り方をするか。有機栽培か、ふつうの栽培か。ハウス栽培か露地栽培か。それらによって育て方はずいぶん違います。
もう一つはいつ収穫したらおいしいか。キャベツはなるべく遅く、じっくり熟成していったほうがおいしく栄養分も実も入ってきます。一番おいしいのはいつ頃なのか、どういう育て方をしているのか、食べごろはどうなのかということが必要です。
そういうふうに野菜を見たことはありますか。いま野菜を品種で売っているのはジャガイモぐらいです。農家は品種の情報を発信していない。同じ食べごろでも、どの時期にとれば一番うまいのか。収穫した後でもトマトは青いのが赤くなってくるが、これはまだ生きている証拠です。うまくなるのはいいが、さらに長持ちさせるのはどうしたらよいか。
野菜が呼吸するのを少なくすれば長持ちするわけです。呼吸を止めてしまうと養分が入ってきませんから、なるだけ呼吸を少なくしてやる。品物がいたむとだめなので微妙な調整が必要です。例えば、キュウリは冷たい風に当たると冷えてまずくなるので品物ごとに違う。とってからあとの予冷が長距離輸送には有効です。
キャンベル、アメリカブドウなどは熟すると脱粒が多かったので、1965年くらいまでは低温にすると東京までは脱粒せずに運べるが、北海道まではもたなかった。それでずいぶん研究しました。なんでも冷やせばいいのだというわけにはいかない。とりたての状況でどのようにお客さんに食べてもらうか。
氏、育ち、食べごろ、とりたての4つが生産者から消費者に伝えていく情報です。
●野菜の話
キャベツ、ニンジン、ゴボウ。
キャベツは春系でフワッとなっている。ニンジンもいま変わり目です。みなさんのところでは、出始めと終わりでは違いますから、しょっちゅうみなさんで食べてみてください。
キャベツの冬系は、葉の数が多く60枚くらいある。冬系のキャベツはかたく、小さくならないので業務用に使うことが多い。春キャベツは4月、5月になるとうまい。軸のところは甘い。軸のところから伸びて、それだけエネルギーをもっていくわけだからうまいはずである。だから、軸をばかにしてはいけない。
ニンジンは昭和40年頃から雪下ニンジンが出始めた。いまは秋にとれたものは土の中で保存がきくので、水分を含んでいる千葉県あたりのニンジンはもつ。昔、ニンジンは、泥つきだったが、ぼくは洗ったほうがいいと言って産地に洗わせていた。ニンジンは赤いほうが見栄えがよかったからなんだが、薄皮をむくので日持ちが悪くなってしまった。だから、雪下ニンジンなどは本当は薄皮をむいてはいけないんだね。
キャベツも雪下キャベツがあった。かたいキャベツを雪の下に入れておくと葉が真っ白になる代わりに傷みやすい。
キュウリの高知産は一作型で長いが、たくさんとるために、キュウリが出回る頃には味が違ってくる。安売りするならいいが、正直言ってうまくないから、「安いのはまずいよ」と言わないとだめだよ。
●食べ比べ
4月の食べ比べは、ニンジン、ゴボウとキュウリです。それに熊本産のハウススイカをもってきています。
こういう野菜と果物は業務のなかで扱っていても、品種、作型が違うと味が違う。一般消費者に知らしめていくのがみなさんの仕事なので、勉強してください。
今の消費者はなかなか自分からはききません。自己判断をしてものを購入していく部分が強いので、ぜひともそれぞれの店の中で、食べてみて、品物のよしあしを判断していただきたい。
簡単な料理でいいので、試食品を出しておけばつまんでいきます。置きっぱなしだと量販店と同じです。消費者は新しい知識を得たいという願望もあるわけですから、それに対する対応をどうすればよいか、工夫してください。
●キャベツ
愛知県で出ている冬系寒球系、まきが強く出ていますし、葉の枚数も多い。業務筋関係でいうところの刻んだときにボリュームが出てくる。甘味が強い。品種は「うずしお」です。ここ10年間で品種が変わってきていますが、その理由としては、奥様方が持ち帰るのはいやだという考え方です。
関東地域の三浦の春キャベツは、一般の人が品種にこだわっていないということで、春キャベツという名称で出荷しています。千葉県銚子の春系キャベツは、ややもするととんがるキャベツです。その辺りをきちんと説明していただければよいかと思います。 |

|
●ニンジン
熊本産は、有機野菜の認証を受けている「ベータリッチ」で、有機にこだわっているお客には好評です。俗にいう春ニンジンは「向陽」、色は薄いが香りのよいニンジンです。次に、新潟の津南産は、秋に収穫するものを圃場にそのままにし、春先に雪がとけてから収穫する。すると甘味が高まるので、北海道では春先の野菜をすべて雪下貯蔵という形で取り組んでいます。甘さの差を見てください。雪下は温度が高くなるとぬめりが出てくる。そのへんをふまえてください。
|

|
●キュウリ
お客様はキュウリということで比較し、品種の差別はしていない。高知県春野の産地、冬場の代表品種で、収量があがるという形で多品種の代表。冬場のキュウリと春のキュウリの食味の差を見ていただきたい。埼玉県の春キュウリ。本庄市中心、アンコールペンとシャープ301です。キュウリは春1500円、高知県は1000円。
|

|
●ゴボウ
ゴボウについては北海道や新潟と同じで、雪下貯蔵をしています。ゴボウの北海道産は東京にも徐々に入るようになってきました。食べていただけると味の差は歴然とするはずです。
宮崎、熊本、福岡、それぞれいろいろな産地が春の新ゴボウということで出ています。ゴボウ特有のやわらかさと香りがよく分かります。野菜本来の持ち味を生かすためにも手間を惜しまないで食べてほしい。 |

|
参考●スイカ
ことしは大玉系で、作柄順調です。光センサで糖度を測定し品質の均一化を図ろうとしています。
|

|
|

|
新井先生のほうから簡単に食べられるような提案をします。
ピーマンは日本料理にどう合わせるかということを考えました。ピーマンのたねをとってから揚げをして、そばつゆを薄めたものにつけておくと、少なくても1週間は食べられる。
|
|