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2003年(平成15年) 8月24日 (日) 第5回
品目:大根、キャベツ、ニンジン

今月からは「中級編」。佐藤先生のお話は楽しいエピソードを盛り込みながら、役に立つ内容がいっぱいでした。

生活習慣病を防ぐ野菜と果物
〜八百屋は健康応援団。自信をもって野菜をすすめよう

                                     佐藤 達夫(食生活ジャーナリスト)

「日本の食事は世界一健康にいい」ってどうして?

 今日は栄養素に関する部分のお話をしていきたいと思います。とはいいましても、私は栄養学者ではありませんし、栄養士でもありません。ただ、女子栄養大学の出版部で「栄養と料理」という月刊誌の編集に携わり、栄養情報というものに長い間接してきました。栄養学というのは、学問としては歴史の浅い、まだ発展途上の学問なので、このところずいぶん変わってきました。栄養情報、健康情報の中には間違いがないというものもあるし、この間までいっていたことと最近いわれていることが相当に違うこともあります。そうした情報に長い間接してきていると、これは確かな情報だからそのまま伝えてもよいとか、非常にセンセーショナルだが、これはまだ確認されていないので伝えない方がいいだろう、ということがわかってきます。そこで、本日は情報の整理のしかたについてもお話できればと思います。

  「おもいッきりテレビ」司会のみのもんたさんは日本で一番といわれるくらい才能豊かなタレントなので、あの人にいわれると、そうかなと思ってしまいますが、実はあれは事実の一部でしかないということがあります。ですから、そのことについて皆様がお客に聞かれたときに、どのようにとらえればよいのか、基本的なことをつかんでおけばよいと思います。野菜の何が本当によくて、どのように食べればよいのかといった情報の整理みたいなこともあわせて説明したいと思います。

 いま、日本の食事、食生活は世界で一番健康によいといわれています。これは世界中の研究者がいっていることです。研究者のなかには日本人が何を食べているかわからない人もいますが、そういう研究者でさえみんなそのように思っている。それはなぜかというと、ひとえに日本人が長寿であるからです。日本人が食べているものを食べれば長寿になるのではないかと思われているのです。そのために、いま日本人の食生活がブームになっています。

 私はアメリカ人の食生活には詳しくありません。豆腐にドレッシングを山盛りかけて食べることが健康によいかどうかは疑問ですが、少なくとも彼等はすし、豆腐、すき焼き、てんぷらを食べれば長生きできるのではないかと思っているようです。

 この間、あるテレビ局のディレクターに聞いたのですが、日本で視聴率がとれるものが三つある。健康番組、食べ物、他人の不幸だそうです。中でも、最も有望視されているのが健康番組だそうです。昔は健康の番組で視聴率がとれるなどとはテレビ関係者は誰も考えていなかったのです。「おもいッきりテレビ」は毎日、「あるある大事典」は毎週放映していてそこそこ視聴率がとれる。健康食べ物番組がなぜこれほどの視聴率をとれるのでしょうか。

 一番大きな要素は、日本人の疾病構造が変わってきたことです。日本人がかかる病気が昔と今では全く変わってきた。昔は、結核や肺炎などの感染症でよく死んでいましたが、これらは体の外から病原菌が入ってきて免疫機能がそれに勝てなくて死んでしまう病気です。最近では感染症にかかる人は多くても、抗生物質などのおかげで死ぬ人は少なくなりました。日本人にとってはそれほどたいした病気ではなくなりました。その代わりに出てきたのは生活習慣病です。自分の生活習慣がよくない、改善できないことによって病気になってしまうというものです。

 一番大きく改善できるのが食生活でしょう。食生活を改善すると生活習慣病になりにくい、あるいは生活習慣病にならないことによって健康でいられて寿命も長い。生活習慣で一番健康に悪いのは喫煙です。喫煙は議論の余地がないといわれています。タバコをやめたほうがストレスがかかってよくないといったことは学問的にほとんど否定されています。喫煙でつい最近まで例に出されたのは泉重千代さんです。彼はタバコも酒も好きでした。泉重千代さんは長生きをしましたが、彼とほぼ同じように生まれて同じような環境で育って、タバコを吸っていたがゆえに早死にした人は泉重千代さんの何倍、何十倍もいるはずです。他の人がタバコを吸っていなくて泉重千代さんだけがタバコを吸っていて長生きをしたというのであればタバコはもしかしたら長生きの原因になったかもしれない。しかし、同じようにタバコを吸っていてストレスがなくても泉重千代さんよりも早く肺炎や肺がんで死んでしまった人は泉さんの何倍もいるはずです。タバコを吸っている人と吸わない人を10人ずつ集めて、どちらが病気にならないかというと、タバコを吸う人のほうがちょっと病気になりやすい。100人ではもっと多い。1万人ずつで実験すれば結果は明らかになる。これが科学です。タバコを吸う人が早死にしたり、がんになるとは限りません。しかし、吸わない人よりも病気になる可能性ははるかに高いということは、世界中の多くの研究者がいろいろな実験や調査をして明らかです。これと同じことが食生活にもいえるということが最近わかってきました。

 このところ、食べ物を変えたり、運動習慣を変えると寿命が長い、健康でいられるということを多くの人がテレビでもごく普通に話しています。しかし、こんなことがわかってきたのはごく最近です。香川綾先生が栄養学を始めた頃には、食べ物で病気になるとかならないかということをいったら、医者仲間からはほとんど相手にしてもらえなかったそうです。がんなどは食べ物が関係するわけはない、何かわからない原因があるからだといわれてきました。食べ物とがんの関係などは考えられていませんでした。生活習慣病も昔は成人病といっていたように、原因は加齢と考えられていました。しかし、年をとっても成人病になる人とならない人がいるということがわかってきました。加齢は大きな原因の一つですが、それだけではありません。近年は、年をとれば成人病になるというのではないということで表現が変わりました。子供の成人病というのは、明らかにおかしな表現です。原因は加齢だけではなく、その人の生活の仕方にあるのです。


食べ物による生活習慣病を防ぐ

 生活習慣の中でも一番が食べ物です。それを調べるために、たとえばこういう研究があります。ある町の人全員が今何を食べているのかを記録します。ずっと記録し続けて、その人が死んだらその人が何を食べてきたかを遡って調べる。これは一番確実で「コホート研究」といわれています。しかし、ものすごく長い間かかるので、どこでも誰でもできるというものではありません。世界でもそれほど多くはなく、昔からやっているところしかありません。日本では九州の久山町が有名です。どういうものを食べてきた人がいつ頃どういう病気になってどういうことで死んでいくかを調べています。

 それ以外にも人を一堂に集めて、過去に遡って調査するという方法もありますが、これは確実ではありません。昨日食べたのを思い出せといっても正確には思い出せないからです。日本で最も有名な調査が年1回実施する「日本人の栄養調査」です。日本人が今何を食べているのかが発表されますが、無作為に選んできた人たちを記録員が調査していって日本人が今こういうものを食べているだろうということを調査します。世界ではまれに見るすばらしい調査でしたが、「昨日何を食べたか」と聞いたときに「すきやきと天ぷら」がやたら多かった。調査にくるということがわかっていますので、調査当日に見栄を張ってそれらを食べるのです。

 日本人が何をどれぐらい食べているかを調べる調査は二つあります。一つは農水省が実施するもの。たとえばジャガイモは食べ物としてどれぐらい供給されているか。それを国民の人数で割ると、日本人は一人平均どれぐらいかという数字が出てくる。そうすると日本人がどれぐらい食べているかがわかる。しかし、この方法だと
食べないで捨てたもの、腐ったものでも入ってしまうので、数字が多めに出てしまいます。「実際に食べた物」を知るために、厚生省の聞き取り調査があります。この二つの調査があるわけですが、これらが微妙にずれてくるのです。厚生省の調査では思い出せなくて不正確である、ふだん食べているものと違うものを回答しているということがわかりました。ある年には、農水省の調査よりも、厚生省の調査における一人当たりの量のほうが多かったということがありました。供給量よりも食べているほうが多いというのはありえないので、よく調べてみたら、普段は食べていないすきやきと天ぷらを調査当日だけ食べていたということがわかったのです。

 両方の調査とも多少の欠点はありますが、貴重なデータです。これらの調査によって日本人が平均してどれぐらい食べているかというのを見ると、現在ほぼ理想に近い。それは厚生省が出している栄養所要量と比べることでわかり、タンパク質ならば何g程度がよいか、ビタミンA、Cなどはどれぐらいがよいかということが決まっているのですが、日本人の栄養所要量はほぼ理想に近い。ただし、何年やっても平均的な日本人の食べ物で欠点が三つあります。

日本人に足りないもの

 日本人の食生活の欠点は、塩分の摂り過ぎ、脂肪の摂り過ぎ(脂肪、タンパク質、炭水化物の比率にして脂肪が多い)、カルシウム不足です。これを改善すれば、ほぼ理想に近づき、日本人の寿命はまだ延びるといわれています。

 この三つのうちで、一番簡単なのにできないといわれているのはカルシウムです。カルシウムの摂取量がなぜか増えない。カルシウムを摂取するには牛乳を飲めばよいのです。カルシウムは牛乳よりも小魚のほうが多いのですが、小魚は同時に塩分を含みます。ですから、カルシウムを摂ろうと思うと塩分が増えてしまうという欠点があります。それと、小魚は内臓ごと食べる。そうすると内臓は脂肪が多いので、カルシウムが有効なほどに食べようと思うと塩分も脂肪も多くなってしまいます。一つを満たすとほかの二つがさらに悪くなるという悩ましい結果になってしまう。カルシウムは牛乳よりも小魚のほうが含まれる量は圧倒的に多いのに、そういう問題が出てくる。だから、牛乳やヨーグルトを飲むのが手っ取り早いということになります。チーズは塩分の摂り過ぎになるので若干問題があります。

 次に塩分の摂り過ぎの問題です。これは実は抑えることがとてもむずかしいのです。なぜ抑えられないか。ひとえに塩分はおいしいからです。薄味といわれているものはまずい。人の体液の濃さは0.8〜0.9%ぐらいです。これは海の濃さとほぼ同じです。人間の体液の濃さが何で決められているのかといえば、ナトリウムです。食塩Naclの中のナトリウムNaが人間の体液濃度を決めているので、水とナトリウムは非常に重要な栄養成分です。水が足りなくなると、体液が濃くなってしまうので、死にます。喉が渇いたというのは水分が足りない、体液が濃くなるので水を飲めというサインなのです。ですから、水と同時にナトリウムも非常に重要です。

 ナトリウムも常に補給しなければいけません。海にすんでいた私たちの祖先が陸にあがったときに、塩はすごく貴重品でした。このため、人類は塩を見たら口に入れろ、なめろというサインがインプットされているのです。そうでないと生きられなかったために、食塩は必ずおいしく感じるようにできています。なめたときに、「おいしい、塩だ」ということを人間や動物は舌で覚えています。ですから、舌にまかせて食事をすると塩分は絶対に摂り過ぎるのです。

 一方、脂肪がなぜ私たちは制限できないのか。これも塩分と同じ理屈です。脂肪はカロリーが高い。いまでこそカロリーが高いのはよくないといわれていますが、カロリーは重要なもの、これがないと生きていけません。現実にカロリー不足で死んでいる子供たちは世界中に山ほどいます。ですから、人類は実はいまだに飢餓を克服していません。カロリーの高いものは優先的に摂るようになっていて、舌が覚えています。

 栄養学の知識のない人でもカロリーたっぷりのものを選ぶことができます。おいしいから舌が覚えている。ですから、私たちは放置しておくと、塩分、カロリーの高いものは必ず摂り過ぎます。でも、つい30年ほど前までは食べたいけれども食べるものがなかったから障害にはならず、生活習慣病にならなかった。お金に余裕ができて食べるものがたくさんある社会では必ず人は肥満し、必ず血圧が高くなります。それを防ぐのが何かといえば一つが栄養学、あるいは栄養情報です。

肥満を防ぐ栄養学

 料理記者歴40年の岸朝子さんが日本人の戦後の食生活を四つに分類しています。昔は胃袋(腹いっぱい食べることが幸せ)で食べる時代だった。次に口(おいしいもの)で食べ、目(きれいなもの)で食べ、いまは脳で食べるというように移り変わってきたといっています。いまは体によいものを、考えて食べるという時代です。本能に任せていたのでは体によいものは食べられない。食べ物が不足している社会ではおいしいものだけを食べていれば健康によかった。ですから、アフリカ、東南アジアの子供たちには塩や脂肪、タンパク質、砂糖を援助しなければならず、野菜を援助してもだめです。ところが、アメリカ、日本、ヨーロッパのように食べ物が豊富な、あり余って捨てている国、食べ過ぎて病気になっている国には全く逆なことがいえます。先ほどの三つの欠点を解消するものを食べなければいけません。これに含まれている、あるいはこれを解消するものが野菜なのです。

 生活習慣病には、高血圧、糖尿病、高脂血症、これらのもとになるといわれる肥満症などがあります。肥満症はBMI(体重を身長(m)で2回割る)でわかります。

 この数字が22であると一番寿命が長くて病気になりにくいし、25以上になると肥満症で治療したほうがいいだろうとなります。最近では、ある種のがん、特に消化器系のがん、喉頭がん、食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がんは食べ物と関係する、太った女性には乳がんが多い、脂肪を摂る人は子宮ガンが多いというように、食べ物のデータをとると、いくつかのがんが食べ物にも起因するだろうといわれています。

痴呆を予防する六か条

 ごく最近では痴呆症も生活習慣病だといわれるようになりました。アルツハイマー病は脳の特別な病気で原因がわかりません。若年だと40代で発症し、あっという間に脳の細胞がやられてしまいます。日本人の痴呆症は、アルツハイマー病は少なく、脳の血管が詰まって脳細胞が死んだり破れたりするという脳血管型です。死んだ人を解剖するとアルツハイマー病で死んだ人と脳細胞の状態がよく似ているのです。ですから、老人性の血管性痴呆、アルツハイマー型痴呆症といっています。血管が詰まって脳細胞が死んでしまい、痴呆症状が出ます。ですから、痴呆も生活習慣病だという先生が最近は増えてきました。生活習慣を改善すれば治ったり、かかりにくくなったりすることができるということです。

 生活習慣としての痴呆症にならないような生活習慣というのが、日本医科大学の北村先生が提唱した予防法で六か条あります。

・人とつきあう
・おしゃれをする
・趣味を持つ
(上記三つは新しいことをする)
・観察しながら散歩する
・30分程度の昼寝をする
(それ以上寝ると生活習慣が狂う)
・野菜(毎回)・魚・果物(1日1回)を毎日食べる。

 この六つをすれば非常にかかりにくくなるだろう、痴呆症にならない可能性が高まるということです。これらは脳に対して新しいことをする、使う、休める、活性化するなどです。

 三大生活習慣病の糖尿病、高脂血症(高コレステロールか高中性脂肪)、高血圧、これら三つの元になっているのが肥満です。肥満している人で今三大生活習慣病になっている人は肥満を解消しなければいけません。その次に、それぞれの原因になっているものを減らしたり、予防となるものを増やすようにします。その順番を間違えないこと。高血圧の原因は、肥満と食塩の摂り過ぎです。最初にやるのが肥満の解消で、それがどうしてもできない人は食塩を落とすようにします。

 食塩は高血圧と関係ないという人がいます。確かに、いくら食塩をとっても血圧が上がらない人もいますが、食塩感受性の低い人です。食塩感受性が高いと血圧が上がりやすいし、低いと血圧が下がりやすい。いま、たまたま血圧が高くないからといって好き放題に塩分をとってはいけません。年とってから血圧が上がって脳出血になって死ぬといった大変なことにもなりかねません。最終的にどこでわかるか。それは年をとってから血圧が上がったときです。それでは手遅れです。ですから、血圧が低いときから食塩は抑えていかなければなりません。食塩はおいしいですから、味の濃いものをおいしいと感じます。典型的なのは外食店で、味が濃いめのほうが外食店ははやります。塩分濃度が低くておいしいところはめちゃめちゃ金額が高い。中食も塩分が高い。おいしいと感ずるものは塩分が高いと思わなければいけません。

 糖尿病に関していえば、私たちは血液の中のエネルギー源であるブドウ糖か脂肪のどちらかを使っています。あるいは両方とも使っているので、これらの血液中の量は本来高くないといけません。低いと細胞のエネルギーがないので死んでしまいます。アフリカの子供は血液サラサラです。しかし、サラサラなのはだめです。どろどろすぎるのが悪いのです。血糖値と血液中の脂肪は高くないとだめ、食事をしたときには高くなって、細胞が使うと少なくなるのがよいのです。血管にいつもいつも糖尿病の原因であるブドウ糖や脂肪が溜まっているのが悪い。血管は財布のようなものです。お金がたくさんあることは好ましい状態なのですが、いつもいつも財布にお金がいっぱい詰まっていると財布が壊れてしまいます。私たちの血管に四六時中エネルギーがたくさん入っていたことはありません。人間の血管は、エネルギー源が少ないときにじょうぶなようにできています。食事をしたときだけ高く、そのあとは速やかに低くなって日ごろは少ないほうがいいのです。財布が10円玉でいっぱいでほころびた状態になるのが動脈硬化です。そういう状態にならないようにしなければなりません。ところが、日本、アメリカ、ヨーロッパなどは食べ物でいっぱいで血管をいためるほどにエネルギーが多くなっているのです。

 血圧も必要なときには高くないといけません。これから激しい運動をするというときには、体中に栄養と酸素をどんどん送らなければいけないので、心臓がドキドキするのです。いつもそんな状態だ死んでしまいますから、それ以外のときには、適当に心臓や血管を休めなければいけません。でも、塩分を摂り過ぎると本来低くなければいけないときにも血圧が高くなるので血管をいためてしまうのです。三大成人病の一番大きな合併症は血管をいためることです。これまで栄養が豊かだった経験がない血管をいためてしまう。これを予防するには、食べすぎない、あるいはふだんから運動をすることです。運動は筋肉細胞が動くということなので、多くのエネルギーや脂肪を燃焼します。ふだんから運動をしている人は細胞自体がエネルギーを常にたくさん使う筋肉になっているので、運動習慣が大切なのです。

野菜はなぜよいのか

 最後に野菜の話です。野菜はなぜよいのか。野菜に含まれている栄養で特徴的なものが四つあります。

 カロテン(ビタミンA)、ビタミンC、カリウム、食物繊維です。

 四つとも生活習慣病を予防する働きをしますが、この中で最も働くのが食物繊維だろうといわれています。食物繊維というのは、食事として入ってくるけれども、腸から吸収されずに便として出てしまうもので、エビの殻やカニの甲羅も食物繊維です。野菜の中に入っている食物繊維は便として出るときにいろいろなものをもって出ます。たとえば塩分や、摂り過ぎてしまった脂や糖分などです。ですから、本当はこれらのものを適量食べていればよいのですが、食べ過ぎてしまった場合は食物繊維を摂れば、悪い部分を軽減してくれるのです。昔は食物繊維は反栄養素といわれました。大事な栄養を持って出てしまうからです。私たちはその作用を利用して生活習慣病を予防するのです。

 野菜のカロテンやビタミンCは抗酸化作用をもっています。活性酸素が体を酸化してしまうときに防ぐ働きがあります。細胞が酸化してしまうと老化の原因となったり、血液の中のコレステロールが酸化して酸化悪玉コレステロールといって動脈硬化の原因になったりするので、それを防ぐのがカロテンやビタミンCの働きです。

 カリウムは高血圧の原因になるナトリウムと反対の役割をしています。ナトリウムを摂り過ぎないのは難しいので、そうであればせめてカリウムをともに摂りましょう。

 これまでは野菜と果物に共通することをお話してきました。最も重要なのは、野菜の低エネルギー性です。これは私たちのように食べすぎの人たちには非常に重要です。野菜をたくさん食べることによってエネルギーの摂り過ぎを防ぐことができます。

 量的な目安としては、果物は1日1個、野菜は1食に1皿。野菜を1日350g食べるためには、いまよりも野菜を1皿多くしましょうということになる。

 アメリカ人の野菜を食べる量が日本を追い越したといいますが、アメリカ人のほうが野菜を多く食べているとは到底思えません。よく調べてみると、アメリカ人の食べる野菜はフライドポテトとトマト(ピザ)が大半です。単純に量で比べれば多いかもしれないけれど、野菜料理でたくさん食べているわけではありません。

 日本人は今よりもさらに1皿増やし、果物は必ず1日1回食べましょうということになります。

野菜とサプリメントの違い

 最近話題になっている機能性成分(紫いものアントシアンなど)に含まれる抗酸化作用ががんを防ぐだろう、というのは事実です。しかし、紫いもを食べてがんを防いだ人はいません。バナナにポリフェノールが含まれるというのは事実ですが、バナナを食べてがんを予防したという人はいません。私は、紫いもを食べてがんになりにくくなる可能性よりも、紫いもをがんに効くほど食べ過ぎて太って生活習慣病になる危険性のほうが高いと思います。
 
 みんながサプリメントに走ってしまうのは同様の危険性があります。サプリメントは現在の栄養学に基づいています。しかし、栄養学は豹変します。食物繊維は30年前は反栄養素といわれてきました。リノール酸はこの間までさんざん動脈硬化を防ぐといわれていたのに、いまは体内の脂質を酸化悪玉コレステロールに変えて動脈硬化にするというように180度評価が変わってしまいました。ですから、確実なのは、いまの栄養学を過信してはいけません。いまの栄養学に基づいて作られたサプリメントを食べるのでなく、私たちが昔から利用し続けてきた野菜を食べることです。野菜は栄養学ができる前から食べられていたので、そのよさは実証済みで、健康によいものだけが野菜として残っています。

 地球上の多くの植物の中から体によい食物だけを野菜として私たちは残しています。野菜は栄養の入れ物でなく、食べ物ですから、食べ物として提供し、食べる人がおいしいと思って食べたときに健康がついてくる。健康のためだけに野菜を食べるのではありません。健康のためにといってすすめていくと、必ずサプリメントにとって代わられます。野菜は食べ物です。いい野菜をつくって自信をもってすすめてください。

資料集
五大栄養素
・三大栄養素
  たんぱく質
  炭水化物
  脂質
・微量栄養素
  ビタミン、ミネラル

PFCバランス
 三大栄養素である、P(プロテイン:たんぱく質)、F(ファット:脂質)、C(カーボン:炭水化物)の摂取エネルギー比率。
 P:F:Cが15:20〜25:65〜60が適正。
 現在の日本人は、脂質=脂肪の摂取比率が27%と過剰になっている。野菜類、果物類、穀類、豆類、いも類、きのこ類、海藻類をもっと食べて、炭水化物(C)の摂取量を増やし、脂質(F)の摂取量を減らさなければいけない。

微量栄養素(ビタミン、ミネラル
・脂溶性ビタミン
  ビタミンA(カロテン)
  ビタミンD
  ビタミンE
  ビタミンK
・水溶性ビタミン
  ビタミンB1
  ビタミンB2
  ナイアシン
  ビタミンB6
  葉酸
  ビタミンB12
  パントテン酸
  ビタミンC
・ミネラル
  カルシウム
  鉄
  リン
  マグネシウム
  ナトリウム(塩化ナトリウム)
  カリウム
  銅
  ヨウ素
  セレン
  亜鉛
  クローム
  モリブデン

野菜に関する提言

健康日本21(厚生労働省)
・健康のために、毎日「野菜を350g」食べよう(現在310g)
・新鮮な野菜、緑黄色野菜、果物を食べよう。
 毎日果物を食べる人の割合を60%にしたい(現在29%以下)
食生活指針(農林水産省、厚生労働省、文部科学省)
・野菜は1日に350g(両手の平に山盛り)をとりましょう。そのうち緑黄色野菜を120gとりましょう。
・果物は毎日200g(可食部150g)を目標にしましょう。

野菜&果物の機能性成分
・アルキルチオスルフィネート:ネギ類(にんにく、玉ねぎ、アサツキ、ネギ、ニラ、らっきょう)に含まれる催涙成分。血栓を予防する→動脈硬化の抑制。鎮痛・解熱剤のアスピリンと同じ作用。ピロリ菌退治。
・アリシン:ネギ類(特ににんにく)。硫化アリルの一つ。抗ガン作用。
・カプサイシン:唐辛子の辛み成分。肝臓の解毒作用を活発にする。発ガン性を抑制する。(わさびの辛みも同じ成分)。
・イソチオシアネート:大根やわさび。イオウ化合物の一つ。免疫機能を高める。抗菌作用、抗酸化作用。
・β-グルカン:キノコ類。免疫系を活性させる。
・ムチン:里芋、山芋などの粘り成分。胃粘膜を強化し、消化を助ける。
・ジアスターゼ:大根など。消化酵素(消化を助ける)。
・リコピン:トマト。抗酸化作用。
・クロロフィル類(クロレラなど)。抗酸化作用。
・ポリフェノール類:赤いブドウやリンゴの皮など(アントシアニン)、黒米
・紫キャベツ・黒インゲン豆など。抗酸化作用。
・フラボノイド類:ブロッコリーなど。抗酸化作用。
・タンニン類:胡麻など。抗酸化作用。
・カテキン:日本茶など。抗酸化作用。
 
江澤先生

 今日の話は栄養だけでなく、身につまされた話ではないかと思います。野菜はたくさん食べさせるといっても、なかなか食べられない。

 なぜ野菜がおいしく食べられないか。果物はそのままでおいしいようにできていて、おいしいと鳥に種を運んでもらえて種の保存ができる。だから、果物はうまくないといけない。だが、野菜の場合、大根がうまいからといって、鳥に食べられてしまうと困るので、辛い成分などが残っているのです。

 サトイモはかゆみ成分があるが、胃袋に入ってしまえば胃袋はかゆみを感じないから食べられる。ホウレンソウも自分の体を保護するためにシュウ酸で防御しているが、ゆでてあくを抜くと食べられる。また、ワラビなどのでんぷん質は発ガン性をもっている。野菜は子供のうちに、食べられる人もいれば食べられない人もいる。人間は非常に多様性があるから、サトイモが好きな人もいれば嫌いな人もいる。いまの10〜20代が野菜を食べないのは子供のときに野菜でいやな思いをしているから野菜は合わないと思っているからで、野菜をもっとうまく食べさせるようにすることが大切。

 野菜は果物と違って、野菜自身に防御する力が出てきているのだが、それに対して人間がどうやってうまくたたかうか。いかにうまい食べ方をさせるかが八百屋さんの役目の一つになる。これかは野菜は食べ方別の提案をしていくとよい。

 野菜の場合は、どんな作り方をしているかよりも品種が一番問題で、品種ごとに食べ比べをする必要がある。どれでも同じ考え方をするとよくない。


鈴木先生

 8月は夏野菜ということで、キャベツ、大根、ニンジンが中心になります。夏場の野菜は作りづらく、病気とのたたかいです。高温期なので高冷地から入荷が多くなりますが、アイテム数は多くても、市場側からは8〜9月はうまいということが言いづらい時期です。栽培期間が短い。高温で作りやすいということはありますが、それだけに病気とのたたかいがあるということを頭に入れておいてください。
大根
群馬 JA利根沼田 「雪美人」辛味大根(大田市場で2kg900円)
北海道 JA真狩村 夏のとも
北海道 JA標茶 きたいち
 辛味大根は辛いというのが特徴です。皮の部分が一番辛いので、辛味大根は洗っただけでおろしてください。

 北海道産真狩村の青首大根「夏のとも」、標茶の「きたいち」をもってきましたが、この時期は、キャベツ、大根は品種が乱立していて、1品種で統一されている時期はまずありません。夏大根は必ず連作障害が起こり、大きな産地がなくなったり、作れなくなったりしています。それぐらい夏大根は難しく、各産地が苦慮しています。

上、夏のとも 下、雪美人 →

キャベツ
岩手 JA岩手中央 夏さやか
北海道 JA南空知 すずなみ
群馬 JA嬬恋村 ST
 春系か中早生系といわれるやわらかいキャベツが中心になっています。群馬のSTという品種も正式には中早生系です。北海道、南空知の「すずなみ」は「さざなみ」ともいわれているようです。岩手の「夏さやか」は春系です。春系が好まれやすいというのは葉肉がやわらかいからです。
ニンジン
北海道 北印(富良野) 向陽
北海道 カワダ商産(帯広) 千浜
北海道 JA石狩 ベター302 (大田市場で1000〜1100円)
「向陽二号」という品種が一世風靡していて、いまの段階ではこれを超える品種はないといってよい。これは五寸ニンジンで、色、肩張り、尻詰まりがよい、どちらかというと堅いので棚持ちがよく、扱いやすいといえます。
 「千浜」は甘くカロチンが多いので、生ジュースで飲んでもらいたいと種苗会社はいっています。ジューサーにかけてそのまま飲めます。「ベター302」は、親がベータリッチなので、カロチン量が高く、ジュースでも飲める品種です。

試食(感想はいろいろ)

大根/煮たもの(40分煮て味をふくませた。夏のとも、きたいち)
・「夏のとも」はかたかったが、おいしかった。
荒井先生:40分煮て味をふくませた
大根/おろし(辛味大根、夏のとも、きたいち)
・「きたいち」がやわらかかった
・おろしは個人的には辛いほうが好きだが、「きたいち」のほうがみずっぽい感じがした。
大根/千切り(夏のとも、きたいち)
・これに関しては違いがなく、さっぱりしておいしい
・違いがわかりにくい。

キャベツ/蒸し
キャベツ/生
・食感と味は、北海道がさっぱりしている。
・北海道は甘さが感じられたが、歯ごたえなど群馬が好みであった。
・嬬恋のキャベツは味が薄かった。

ニンジン/生
ニンジン/煮物
・食べやすいのは「千浜」、切り口の模様は「ベター」がいいニンジンといわれそう。
・ニンジンらしいのは「向陽」、「ベター」は万能タイプで子供にも向きそう。
・「ベター」がおいしかった
・「向陽」「ベター」がよかった

「うちの店はこうやっている」杉本さん:うちの店ではキャベツを2種類おいています。食べ比べをして群馬のキャベツは熱を加えたときに甘味があるので、餃子や中華屋の注文に応じて納めた残りをなんとかしたいと思って、群馬産キャベツは熱を加えたらうまいといってお客に売っている。みなさんもお客に教えてあげてください。

浅賀会長の閉会挨拶にて:近くに健康食品を売る店ができ、野菜も有機、低農薬のうたい文句で売っている。我々の商売はそれとは違う。本当の旬の野菜、本当の野菜の効能を知らせるということなので、こういう機会をますます続けていきたい。
 

(株)高広青果が毎月作成しているお知らせ。八百屋塾に来ると、「うちの店では〜」と気軽に情報交換しあえることも勉強になっています。