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2003年(平成15年) 9月21日 (日) 第6回
品目:ジャガイモ、タマネギ、野菜全般

今回から野菜を植物学として学んでいきます。講師は八百屋塾の教科書として用いている「花図鑑 野菜」を監修された芦澤正和先生で、野菜試験場の育種部長を務められた野菜の専門家です。これから、国が野菜の中でも特に大切なものと定めている14品目について学んでいきます。第2部ではジャガイモとタマネギを試食しました。

講師:芦澤正和先生

ジャガイモ

まず最初にジャガイモとタマネギの野菜として、あるいは植物としての話を最初にしてから、総論的なことをお話します。

ジャガイモは、コロンブスが新大陸アメリカを発見してからまもなくヨーロッパに伝わりました。ジャガイモが入ってきたおかげで、ヨーロッパの人たちが食べ物に困らなくなり、おおいに発展したというぐらい大事な作物です。ドイツやロシアでは第二のパンとして、ジャガイモがなければ食生活が成り立たないような状態です。ケネディ元大統領は先祖がアイルランドの出身で、アイルランドで穀物といえばジャガイモしかなかったのです。ところが、ジャガイモの単作を続けたせいで疫病にかかり、アイルランドのジャガイモが全滅に近い状態になりました。このため多くの餓死者が出て、アイルランドの人たちは新天地を求めてアメリカに移民していったわけです。その子孫の一人がケネディといわれています。日本でイモといえばジャガイモのほかにサツマイモがありますが、ヨーロッパでは寒いのでサツマイモが作れません。それでジャガイモが大事な作物になっているのです。ジャガイモは南アメリカ原産ですが、ヨーロッパに入ってから、アメリカに渡り、アメリカで改良されていろいろな品種が作られるようになりました。
 
ジャガイモが日本に入ってきたのは江戸時代ですが、本格的に栽培されるようになったのは明治になってからです。戦争中は、大事な食料資源の一つとして大量に栽培されました。日本の場合、北海道の開拓とともに国がジャガイモの品種改良に力を入れました。また、長崎県雲仙地方の愛野町というところでも品種改良を盛んに行い、多くの品種を生み出しています。特に、ウイルス、病気・疫病に強い品種を作るということで努力してきました。

 長崎県愛野町近辺は春ジャガイモの大産地になっていて、雲仙の山から下を見ますと、海に白波が立っているのかと思うほどにジャガイモのトンネル栽培が続いています。ジャガイモの性質がよくわかってきたので、本来作りにくいはずの秋から冬にかけての栽培も盛んになってきています。

講師の芦澤正和先生

どういうわけか青果用の品種はアメリカから1907年に入った「男爵」と1916年に入ってきたイギリス原産「メークィン」の二つが中心です。この二つは対照的な品種で、「男爵」は粉質で上手に取り扱わないとグチャグチャに崩れてしまうし、「メークィン」は煮込んでも崩れることがないというタイプです。これらがきちんと棲み分けをしているものですから、国内でそれぞれ通用しています。

青果用は主として春植えが中心ですが、秋植えの栽培もあります。秋植えには「男爵」や「メークィン」よりも新たに指定された品種がたくさん作られています。

ジャガイモは入ってきてまもなく官庁でつけた名前がバレイショです。いまではバレイショという名前は一般に通用しない場合が多くなっていますが、官庁の統計資料ではいまだにバレイショと書いてあります。ジャガイモにしたらという意見がかなりありますが、法律を改正しないと国の用法としてはバレイショであり、ジャガイモが使えないということになっています。ジャガイモは作物とみなされ、国の機関である原種農場で栽培し農家に配布していたので、呼び方も国がバレイショに定めたのです。

ジャガイモは長い間、野菜としてではなく、作物として取り扱われてきました。しかし、1990年からは野菜の統計に入ってきました。

ジャガイモはサツマイモ同様、主要食料としての役割を担い、でんぷん・アルコール原料としての加工用、青果用としての役割がありました。しかし、青果用としての役割が次第に大きくなり、加工原料としての役割が小さくなってきました。いまでは生産量の60%ぐらいが青果用になっていて、作物から野菜のほうへ取り扱いが移ったという状況です。サツマイモも現在では圧倒的に青果用としての需要が多くなっていますが、いまだに作物の中に入っていて、野菜の統計には出てきません。ジャガイモは最盛期の半分強ぐらいの生産量で、その60%ぐらいが青果用というのがジャガイモの特徴です。

ジャガイモの生産は昔から北海道が圧倒的に多かったのですが、最近は北海道の独占状態で全生産量の80%以上を占めています。かつての加工原料産地も加工用の生産がほとんどなくなって、全部青果用のジャガイモの産地になっています。

品種別では「男爵」の生産量が非常に多く、だんだんと新しく育成された品種もシェアを伸ばしています。本日試食する品種のうち、「男爵」と「メークィン」は歴史が古い品種ですが、「北あかり」(1988年)と「とうや」(1995年)は北海道で育成された最近の品種です。東京市場に入荷する割合をみると、わずかに他都道府県から入ってきているものの、大半が北海道で、9〜11月はほぼ全量北海道からです。

タマネギ

タマネギは、歴史上エジプトのピラミッドを作る頃にタマネギの記録があるというぐらいですから大変古い野菜ですが、原産地は中央アジアということになっています。中央アジアからヨーロッパに入り、ヨーロッパでタマネギとして生育していったとされています。タマネギには甘い、辛いという二つのタイプがあります。相互に交雑をしていろいろなものを作りましたから、その中間型のものもたくさんありますが、日本では辛タマネギの品種を使い分けていて、ごくわずかに生食用のタマネギがあります。タマネギは極めて性格がはっきりしていて、北海道産と内地産では全く品種が違います。また、世界を見ても、緯度の高いところで作る品種、緯度の低いところで作る品種は全く別のものになっています。

タマネギは玉が完全に一つでないといけません。これが分球すると商品にならないわけですが、タマネギの中から分球性のタマネギが出て、英語でシャロット、フランス語ではエシャロットといわれています。分球性のタマネギは分球のしかたによって、三球型、五球型、七球型と三タイプに分かれ、ヨーロッパでは大事な作物になりました。日本に入ってきてもフランス料理以外にはほとんど使われなかったのですが、静岡県の一部で若どりした葉付きラッキョウにどういうわけかエシャロットという名前を付けて生食用に売り出してしまいました。この名前の発案者はこんなに早く本物のエシャロットが出てくるとは思わなかったそうです。このため本物のエシャロットの出番がなくなってしまい、本物はベルギー・エシャロットという名前で売られるようになりました。

新しい野菜が入ってきたときに、いろいろな名前を付けるので、大変混乱が起こります。ルッコラという野菜が若干普及し始めていますが、ルッコラはもともとイタリア語です。英語ではありきたりすぎるというのでルッコラという名前にしたのでしょう。ヨーロッパから入ってきた野菜は、フランス語のものが多くなっています。エンダイブは英語ですが、フランス語ではチコリ。英語のチコリはフランス語のアンディーブです。フランス料理をする人と野菜として扱う人とで混同し、農水省でも大変困ったそうです。日本では英語のほうがよく通じるので、私たちはエンダイブ、チコリ(アンディーブ)と別名をカッコ書きにしています。

タマネギは栽培地帯が北と南できれいに分かれます。球肥大日長時間というのがあり、日本では球肥大日長時間が12時間以下から14.5時間程度のものまであります。お日様の長さが12時間になったら玉が肥大してくる品種、また12時間では肥大しないが13時間できれいに肥大する品種などがあるわけです。北海道で作っている日長時間12時間とか13時間の品種を南のほうで作ると、株が大きくならないうちに12〜13時間という温度がくるため、小さいサイズのままでタマネギが太り始める。すると大きなタマネギができないのです。ですから、日長時間が短くて玉が肥大する品種は、南のほうで作るということになります。南のほうだと4月でもかなり温度が上がっているので、12時間たったときにはある程度タマネギが肥大できるほど株が大きくなっているのです。

 愛知県などでは非常に短い日長時間で大きくなる品種が作られています。北海道の品種のほうが大きくなって収量が上がりますが、その品種を南で作ると株は大きくなっても、必要な日長時間がなかなかきません。日長時間がやってきて太り始めると今度は気温が上がりすぎて上が倒れて腐ってしまうということが起こります。そこで温度と日長時間との関連でタマネギの品種が選ばれていて、北で使う品種と南で使う品種は、はっきり分かれています。ヨーロッパのもう少し緯度の高い地帯に行くと、15時間とか16時間というタイプもあります。こうしたものは日本では全く作れません。

タマネギの栽培は秋に種をまき5〜6月にかけて収穫をするという秋まき栽培と、北海道のように春先に種をまいて、気温が上がってから8〜9月に収穫するという春まき栽培と二つあります。どちらにしても種をまいてから収穫するまでに一年近くかかりますが、ヨーロッパでは2年型、3年型の栽培があります。そのような品種のよい点はトウが立つのが非常に遅く、貯蔵性が非常に高いということです。ですから、これを日本の品種改良に使おうという努力がなされ、その成果も少しは上がって日本の秋まき栽培にも足かけ2年というようなものが出てきてはいるのですが、日本では温度と日長時間の関係があってヨーロッパのような品種をもってきてもなかなか作れません。

 育種の親としては使えるが、品種そのものは役立たない。ですから、日本の品種で、貯蔵性を高める、トウ立ちを遅くするというのはある程度限界があるということになります。

現在、日本で栽培されているのはタマネギでは春まきと秋まきで、春まきはほとんど北海道だけ(一部青森県)です。北海道の品種と、内地の秋向けの品種とは全然違います。タマネギは品種の数が多く、ジャガイモの「男爵」や「メークィン」のような圧倒的に知られる品種がないというのが特徴です。

野菜の話

野菜というのはどういうものでしょうか。食べ物としては主役ではありません。野菜を食べて、でんぷん、たんぱく質、脂肪を補給するということはあまり考えられていません。豊富に出回れば安くなり、不足すれば高くなるという商品としての役割がありますが、消費者ニーズと市場のニーズがイコールかどうかという話がよく出てきます。そこがお米とは違うところです。

農作物としてはどんな特徴があるでしょうか。日本人が生活するのに必須な作物は50くらいあり、日本で栽培され市場に出荷されている野菜は150くらいあります。私は試験場時代アブラナ科の野菜を研究し、仲間うちではキャベツの専門家とみなされています。

 野菜を植物としてみた場合、作物と呼ばれるものはある意味では全く自然のものではありません。一番自然でないのが人間でありまして、人間を養うために人間が植物としては自然でないものを作り上げてきたということになります。植物としては種が生えて花が咲いて実って種ができて次の世代に引き継がれれば植物としての正常な一生になるわけですが、人間がそれを扱うときには、植物の生育の過程で横取りするか、そうでなければ(食物にとっては迷惑な話ですが)種をたくさん付けるようにして食べているのです。そこのところが作物としての植物を扱うときの違いです。外国人は日本の大根を見て驚きます。大根は本来花が咲いて種ができるまでにあんなに大きな根は要らないわけです。あれはかなり異常な姿です。キャベツやハクサイにしても、栽培をするときにはトウが立たないように、種をとるときには種がたくさんとれるように、と全く矛盾したことを一つの品種について行っています。ですから、青果の栽培と採種栽培とが野菜の場合には完全に分かれているのが一つの特徴です。特に野菜の場合はかなり植物の本来の姿からねじ曲げてありますから、ねじ曲げたものがそのままうまくいくように特殊な栽培が出てくるということになります。

資料でお渡しした「日本における野菜の種類」は30年ほど前に作成したもので、野菜の系統図になっています。相互に接触しているのは植物としては極めて近い関係ということです。トマト、ナスは植物としては同じ科に属し、近い親戚関係にあります。ピーマン、唐辛子はさらに近くて兄弟の関係ぐらいになり、違いは辛いか辛くないかです。

国が定めた指定野菜は14、これに特定野菜を合わせると45くらいです。指定野菜の中にはサヤエンドウとピースがあり、植物としては同じですが、この中にはエンドウという名前が出ています。それから特定野菜は、都道府県が申請すると特定野菜として認められるものがあります。コマツナは東京都、シシトウは高知県の特定野菜です。指定野菜、特定野菜、そのほか大事な野菜を入れると50くらいがごく一般的な野菜です。サンショウやワサビはそれがなければ飢えるとか、おかずとして足らない、さびしいということにはならないのですが、生活を豊かにするのに大事なものです。そうしたものを全部入れると150くらいになります。ニガウリはそのうちに特定野菜になってくると思いますが、30年ほど前にはニガウリはほとんど知られていませんでした。

また、この野菜系統図をつくった当時、ルッコラのように新野菜と呼ばれるようなものはなかったのですが、こうした外国からの野菜が徐々に増えてきています。この図には全部で154の野菜が入っています。キノコも入っていますが、菌類なので植物としての野菜とは別枠にしました。植物は同化作用をして光合成を行うが、大体において自分では動けません。ところが、菌は他のものに寄生してそこから栄養をとって繁殖していく。それで、菌類であるキノコを独立させたわけです。ズッキーニはカボチャの一種ですが、最近は野菜として定着したということでカボチャの仲間から外に出しました。そういうものが若干あります。

アブラナ科のところにツケナというのがあります。チンゲンサイやコマツナのほうがはるかにシェアが大きいから独立させてくれという要望があるのですが、ツケナだけになっています。

ツクシは山で採れるものではないかという意見もありました。ところがツクシは大変歴史が古い野菜で、江戸時代にはすでに栽培されていました。室に貯蔵しておいたものを出して年末から正月にかけて、当時の金持ちたちが食べていたのです。熱をかけると出てくるツクシと熱をかけても全く出てこないツクシと分けていて、熱をかけても出てこないツクシは門外不出で嫁入り道具にもってきてくれというような話もあったそうです。江戸時代から休眠があるものとないものとを区別し、休眠とは知らないままに促成できるものとできないものとに分けていたわけです。これは休眠の問題で、寒さにどれぐらいあったかで出る時期が決まるのです。熱をかければすぐ出るのは寒さにあわなくても芽が出る。しかし、熱をかけても芽が出ないのは長い間寒さにあわないと芽が出ないということがわかってきました。これは休眠が深いか浅いかに関係しています。ツクシの品質からいえば、熱をかけても出てこないほうが収量が多いし、品質がよいわけです。現在は熱をかけても出てこないものを冷蔵庫の中に入れて寒さにあわせ、言うなればツクシをだまして年末にとるということが行われています。作物の休眠は大変重要な問題です。ウドも熱をかけると出てくるものと熱をいくらかけても出てこないものがあります。最近は熱をかけても出てこないものを冷蔵し、ウドをだまして栽培するということをしています。

日本で大事な野菜といわれている中には、日本原産の野菜は一つもないといえるほどです。日本に自生した野菜はウド、フキ、ミツバ、ワサビなどで、現在の重要野菜はほとんど入っていません。外国から入ってきた野菜の中で最も古いのは大根、カブ、マクワウリなどで、日本の歴史とともに存在したのではないかといわれています。初めのうちは中国、朝鮮半島経由でヨーロッパ原産のものが入ってきました。明治に入ってからヨーロッパの野菜が大量に入って現在の主要野菜になり、その後アメリカ大陸から入ってきたものがやはり重要な野菜になっています 


江澤正平先生の話
 
・吉野家の牛丼に入っているタマネギはとろけると困るので、かたい品種を使っている。タマネギは西洋料理ばかりでなく、甘味の隠し味としても甘味を大事にしたい。

・タマネギは丸いものから平べったいものまである。相関があるとはいえないが、日長が長くなるほど丸くなる。なぜ丸くしたかというとタマネギの皮をむくのが楽だから。また、昔のタマネギはお尻が引っ込んでいた。

鈴木寛先生(東京青果個性園芸事業部)の商品説明

タマネギは、兵庫県JAあわじ島の「もみじ3号」はどちらかというと生食用で水分量が多い。このため棚もちがよくないという傾向があります。北海道北見地区JAきたみらいの「オホーツク」「スーパー北もみじ」は極早生で、辛みがあるタイプです。水分が少ないので日持ちはよいといえます。生食用、煮込み用と分けるつもりはないのですが、あわじ産は甘みが強いので生食に向き、北海道産は煮込み用に使用してほしいと思います。しかし、生食用だからといって必ずしも生で食べておいしいというわけではありません。
 

兵庫県JAあわじ島の「もみじ3号」 JAきたみらい「スーパー北もみじ」

ジャガイモは、「男爵」「北あかり」という品種が目につくようになってきています。「男爵」は2産地からもってきましたが、北海道のJA今金は当社の看板になっている商品です。それに対して福島のJA伊達で「男爵」が出ていたのでもってきてみました。「男爵」は非常に食味がよい品種です。「メークィン」は当社の看板産地であるJA芽室産をもってきましたが、肉質は黄色で、でんぷんが煮崩れしない、どちらかというと関西で強い品種です。同じJA芽室産「とうや」は最近の品種で、大粒になりやすく、ビタミンCの含有量は「男爵」や「メークィン」よりも高いといわれています。もう一つ北海道Nマーク「北あかり」は粉質でカロチン、ビタミンCが多くヘルシーとされるジャガイモです。

北海道のJA今金「男爵」

北海道Nマーク「北あかり」


荒井慶子先生の料理アドバイス

 ポタージュに入れるタマネギは早くやわらかくなるように輪切りにして細かく繊維を短く切る。肉じゃがはくし型切りがよい。シチューやカレーなどの隠し味にするには薄くスライスして25分くらい炒める。テフロン加工のフライパンよりも鉄のフライパンで炒めたほうが香りがよく、より甘味が出る。

塾生の世田谷区松原、丸シフルーツ 宍戸さんがサンプルに持ってきた東京野菜(世田谷で栽培されている野菜)人参、小松菜、なす。

東京青果(株)個性園芸事業部では、各産地のPR用チラシを作成して、こだわった商材の知名度UPにつとめている。