■野菜は種から最終段階まで利用する
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野菜の品種改良、特にF1をつくる話を最初にしたいと思います。
作物は植物が生育する過程で人間が横取りする格好になっていて、その最たるものが野菜です。野菜を種の段階から食べ物として利用しています。植物としての正常な一生は、芽が出て、双葉が開いて、木が茂り、花が咲いて、それが受精して果実になって、やがて果実が年をとって種ができる。
これが植物としての正常な一生ですが、野菜として食べるときには途中の段階で取っているということになります。野菜として食べるものは、大別すると、葉根菜(葉や根を食べるもの)と果菜(果実を食べるもの)があります。
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大変勝手なことですが、葉根菜の場合、栽培をするときに花ができては困るわけです。ですから、花ができないような品種を選び、花が咲かないような栽培方法をとります。種を取るときには花が咲かないように改良してきた品種に花を咲かさないと困ります。そのためにいろいろなことをします。野菜、特に葉根菜の場合、青果をとる青果栽培と、種をとる採種栽培とに分かれていて、青果栽培でやってはいけないことを採種栽培ではやっています。種をまいたら、例えばトウのたちやすい品種ができたとか、花が咲きやすい品種ができたとかいうと困るので、青果栽培では花が咲かず、採種栽培のときに花が咲く、そういう栽培方法、品種改良をしなければいけません。
果菜の場合は、花ができないと果実ができないので、きちんとした花ができるようにつくります。できた果実を若い段階で食べるものはキュウリやナス、熟してから食べるのはトマトやスイカ、メロンなどです。この場合もそれぞれで種を採らなければいけないので、それなりに採種栽培というものを行います。スイカやトマトなどは熟したといっても完全に熟しているわけではなく、完熟の一歩手前で食べるわけです。その後、スイカやトマトは食べられなくなるような過熟な状態にして採種していきます。
種をまいて芽が出たとたんに使ってしまう野菜にはモヤシがあります。それよりもちょっと進んだ状態で収穫するのがカイワレです。さらに進んだ段階で食べるのはツマミナといっています。カイワレのことをツマミナと呼ぶところがありますが、ツマミナはもう少し成熟の進んだものです。ツマミナは名称登録されているので、ツマミナという名前を使おうと思ったら、名称登録先から許可を受けなければいけません。名称登録はその前に必ず公告がなされますが、ツマミナに関しては我々野菜の専門家もうっかり見過ごしてしまいました。ツマミナの名称を使うときには十分注意してください。
次ぎに、若い段階で収穫する軟弱野菜が出てくるわけです。ウドやミツバやミョウガタケのように軟化軟白するものがあります。
葉根菜類では、結球しない(若いものを収穫する)ものと、結球させてかなり大きくなったものがあります。ネギのように若どり専門のものと、ずっと大きくなってからとるものもあります。葉根菜類で中途半端なのはカリフラワーやブロッコリーで、花は咲かせないのに、花ができないとカリフラワーやブロッコリーは成り立たないわけです。ここでは蕾ができるような栽培の方法をとっています。
最近はやっているものには茎ニンニクや葉ニラがあります。花ニラは花がついた段階のニラを食べます。茎ニンニクはトウが伸びてきたトウを食べるので、ふつうのニンニクの栽培とは違います。
菜っぱの中でも、ナバナのように花を立てて蕾と茎を食べる形のものもあります。ここまでが葉根菜類です。
次に果実を食べる果菜類が出てきます。花丸キュウリは一番幼いものを食べますし、カボチャでもズッキーニは非常に若い果実を食べるようになっています。ズッキーニの中には花をつけた段階で食べるものもあります。果実が未熟な若い段階で収穫するものとしては、キュウリをはじめ、ナス、ピーマン、豆、スイートコーンなど。キュウリは若どりをしすぎるものですから、本当のおいしさの出ている前に食べていると批判されることも起こるわけです。
熟した果実を食べるのはトマト、メロン、スイカ、イチゴ、ピーマン。カラーピーマンはピーマンが熟しかけたものを食べているわけです。それから莢でなく、豆そのものを食べるグリンピースや枝豆、最後に種を食用に利用するものとしてはスイカの種、カボチャの種など。
このように、芽が出た段階から種になる段階まで、ずっと連続的に野菜の場合は収穫をしています。それぞれに独特な栽培の方法があり、葉根菜類では、花が咲かないように、トウができないようにという品種改良をし、一方で種をとらなければいけないときには花が咲くように、トウが立つようにとかなり矛盾したことをやっているわけです。
野菜はいろいろな生育段階で使われていますが、大根はカイワレの段階から大きな大根になるまで一番幅広く利用されているのではないかと思います。日本にはありませんが、インド、パキスタン、タイなど東南アジアから西南アジアにかけては、莢だいこんと称してトウが立った莢を食べるだいこんもあります。
■育種の話
品種改良、育種の話をしますが、植物の繁殖の方法として、栄養生殖には分裂、出芽があります。次に、芽胞というものができて、それから次代ができる。その有性生食のところに受精と接合があります。受精というのは、植物に雄花と雌花があり、雄花から出た花粉がめしべの先について種ができるという形です。接合というのは外から見たのでは雄か雌か分からないけれども、それが双方にくっついて次の世代になるという大変変わったものです。一般的には受精をするものが用いられています。
そのほか単位生殖といって、雄、雌がそれぞれ全く関与しないでできるものがあります。果樹の中にはその手のものが結構あります。また、花が開いたら受精するものと花が開かない前に受精するものとがあります。豆の非常に多くのものは、花が開く前に受精をしています。花が開いてから受精するものにはいろいろな形があり、一般的には両全花が多いのですが、果菜の中には雌花と雄花と2つに分かれているものがあります。キュウリはその代表的なものです。雌花と雄花が2つに分かれているものでも、雄株と雌株が必ずあって、その間で交配が行われて次の世代に生きるというものもあります。雄株と雌株が必ずあって種ができる代表的な野菜はアスパラガスです。
野菜ではありませんが、イチョウも雄株と雌株があることで有名です。当然、雄株がなければ銀杏はできません。銀杏の実は大変臭いので、街路樹に使うときには雄株のほうがよく、そのためには雄株だけを栄養繁殖して使えばよいのですが、そうすると非常に高くつきます。
笑い話で、お寺に雌株、お宮に雄株があって、お宮のほうが「お前のところの銀杏の半分はこちらのものだから寄越せ」と言ったところ、お寺が「これはうちの木だからやらない」と答えたので、怒った神社は雄株を切ってしまった。次の年から全く銀杏が成らなかった。これは本当にあった話でなく、我々が雄と雌の話を習ったときに、先生が話として教えてくれたものですが、銀杏にはそんな性質があります。
ホウレンソウは雌雄異化で、雄株と雌株があります。これはとても厄介な作物で、完全な雄と完全な雌と、その間にずっと連続的に95%雌で5%雄から、95%雄で5%雌というようなものまで、真ん中に50%雄で50%雌というものがあって、うるさい言い方をすれば、異型花併有ということになっています。この性質を利用して100%雄、100%雌ということにならないので、F1をとるときに大変困るわけです。今使われているF1は。95%雌みたいなところへ雄花が少しできるのですが、それで交配していくと100%雌ができる。この技術を開発して採種しています。品種改良の仕事は株を一つ一つ見て、これは5%雄といったように調べていって雌株をとるのですが、100%雌のつもりなのにチョコッと雄が出ることがありました。それで、ホウレンソウの一代雑種をとるところでは、そのチョコッと出る雄を抜いていくことが非常に大事な仕事になります。そうしないと、雑なF1ができるのです。
日本ではその仕事はほとんどやっていなくて、採種をするのはアメリカなどでやっています。これはアメリカの高校生の大事なアルバイトで、広大な採種畑を高校生が回って、これは雄だということで抜いていく。幸いなことに、花が咲くのは夏休みの頃だという話です。
■受粉のしかた
受粉には、自家受粉と他家受粉があります。自家受粉をするものではF1をとろうと思ってもF1がとれません。それは自分で受粉をしてしまっているからです。豆類やキク科の作物(レタス、春菊、ゴボウなど)は自家受粉をしますのでF1はとれません。
自家受粉をする作物は近親繁殖をしても劣性が起こらないのですが、他家受粉をする作物は近親繁殖させると劣性が起こるので、その性質を利用してF1をつくっていきます。一番代表的なのはアブラナ科で、キャベツ、大根、カリフラワーは完全な他家受精ですから、自家受精をさせると劣性が起こります。品種としてきれいに揃えようとすれば自家受粉を繰り返せばよいが、そうすると劣性が起こって大きくなりません。キャベツは3代くらい自家受精を繰り返すと、本来球になるはずが球にならないという事態になります。それを逆に利用して、そのように純粋にしたもの同士を交配すると雑種共生というものが起こって非常によいF1がとれるということになります。
実際に採種をするときにはどうするかというと、二つ目的があります。
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品種 |
そろう |
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発芽率 |
3日 |
0.5日 |
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発芽勢(はつがせい) |
7日 |
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たね |
収量 |
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品位 |
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品種としてはそろっているということが非常に大事です。長い大根であるなら、長い大根がきちんとできて青首であること。その中に丸首がまじったり、細いものがまじったりすると大変困ります。昔はそういうことがありました。
それから、種として大事なことはまいたら必ず出ることです。発芽率とは3日の間にどれくらい出るかということ。発芽勢(はつがせい)とは一般的には1週間でどれぐらい出るかということです。
農家が一番困るのは適当な時間がかかって出てきて、片方が大きくなって収穫期になっているのに、片方はまださっぱり大きくなっていないというのが非常に困ります。作物として発芽率と発芽勢は1週間かそこらでなりますが、ものによっては発芽率がふつうにまいて5〜10%、3か月〜4か月かかると100%になるというのもあれば、発芽勢にいたっては3〜5年かかってからまだ芽が出てくるというものがあったりします。これは野生の植物としては当然のことでして、一斉にバッと芽が出たときに旱魃があれば全部死んで種が絶えるということになります。ですから、そのような事態が起こっても困らないように、野生の植物は大変長い期間かかって芽が出るわけです。旱魃がきて死んでしまったけれども、残っているものが次から次へと出てくるということになります。作物であるか、野生に近いかを調べる方法として、芽を出させてみて一斉に芽が出るかどうかがあります。一般的には農業をするためには発芽率が3日、発芽勢が7日でないと困るわけです。
ただ最近は大変厳しくなり、発芽率は0.5日くらいで一斉にそろわないといけなくなりました。近頃はセルトレイに種をまきますが、3日違うと片方はこんなに大きくなっているのに、片方は芽が出たばかりということにもなります。最近は機械で植えて、芽が出た後には接ぎ木をする場合も多いので、機械で一斉に作業するには発芽が半日ぐらいで揃わなければならず、種屋さんの泣き所になっています。発芽率は100%、発芽勢も0.5日を要求されると大変つらいということになります。
農家の人にとって種は粒売り、1粒いくらの世界になってきています。1粒いくらの世界が最初に始まったのはスイカですが、このごろはキュウリ、トマト、ナスも1粒売りになりました。1粒いくらの世界で発芽率が95%だと、5%損をすることになるわけです。よい種は、まけば必ず目的としたものが揃い、発芽勢がよい、さらに種としてもたくさん採種できるという大変厳しい条件のものになっています。
■生産物としての収量、
最後に、見た種が充実していてきれいであるということが要求されます。これが揃えば非常によい種ということになり、これを満足させるために採種栽培があります。品種改良の段階からこれを満足させるような努力をするわけです。発芽率が悪いのはニンジンで、60%くらい出ればよい種といわれますが、最近はニンジンに関しても非常に厳しい条件がいわれるようになっています。
テープ(テープの中に1つずつ封入しておいてそれを畑に広げると雨が降ってテープが溶けるころに芽が出る)でまく方法とコーティング(種1粒1粒を丸薬のような形にしてまく)という方法があります。コーティングだと思いどおりに機械が簡単にまいてくれます。ところが、コーティングすると芽が出るのと出ないのがあり、出ないものにコーティングしてもしかたがないとなる。ですから、発芽率が非常に高いことが要求されるのです。
採種のレベルが上がり、種をとった後の選別もきちんとできるようになって、発芽率の悪いものが出なくなりました。発芽勢が7日とか、中には1年かかってから出るようなものがありますが、それらも一斉に芽を出すような処理方法が開発されています。昔、大根は1本をつくるのに15粒も種をまき、順番にまびいていって最後に1本にしたものですが、品種改良により、妙なものが混じることは全くなくなりました。種苗会社は、種の売れる量が少なくなったと嘆きますが、昔たくさんまかなければいけなかったときには種は非常に安かったけれど、今は1粒の値段が高い。1粒いくらの世界になってきているので、採算をとるための努力が行われています。
■品種改良
種をとってからその後どのように輸送されて農家の手に渡るか、これが大事なことです。保存方法をどうするか。種の中で一番発芽率が低くなりやすいのはニンジンとタマネギですが、それらをどのように保存するかはとても大事です。一般に農家がつくるのは缶詰になっています。量が少ないときには紙袋で、裏側にアルミが装着してあって湿度が上がらないようになっています。一番問題は湿度が上がるとだめということです。タマネギやニンジンなどは缶詰にしてあっても開けたらすぐに使い切るようにしなければ外から湿気を呼び、発芽率が落ちてしまいます。
固定種というのは一般に使われている品種、今まで使われてきた品種のことですが、固定種ではきちんとそろったものをつくるのが難しいものですから、雑種第1代、一代雑種F1を使うようになってきました。
品種改良をするときには、目的と合ったものが必ずとれるということが大事です。これは、遺伝的に純度が高いということです。固定種の場合、特に他家受精をするものでは別の株同士がかからないと種がとれません。そうなると純度が落ちてくる可能性があるということになります。純度を維持するということと、勢力を衰えさせないという全く矛盾したことをやらなければいけないので、大変厄介な採種体系をとることになります。
品種改良をするときにも、純度が高くなくてもそう問題が起こらない場合、かなりの純度を要求される場合などがあります。
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原原原種 |
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原原種 |
大母本 |
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原種 |
中母本 |
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−−−−−−−−−−− |
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一般種子 |
小母本 |
通常3段の採り方をします。非常に厳しいものでは、「原原原種」というものがあり、生産者のところに渡るまでには4代4年もかかることになります。大根、ハクサイは「原原種」、この種のときには種としての品位が高い、収量が多いということが要求されます。しかも、とった種からへんなものが出てきては困る。この段階のときには種を採る元の種を採るわけですから、量はたくさんなくてよい。ただその作物としての特徴をもっていてこの種をまけば必ずそうしたものができるという採り方をしなければいけない。それで種の採り方として、順次量を増やしていかなければいけない。そうやって増やしていきながら、なおかつ遺伝的性質がおかしくなってはいけないという採り方をするわけです。種を採るときの株がどんな株を使っているかということで、「大母本」というのは、ふつう栽培するのと全く同じ状態で栽培します。
大根で話をしますと、ふつうの大根だと8月末から9月に種をまいて11月半ばころからとれるわけです。このときにこれから「母本(ぼほん)」(これから種を採るもの)を選ぶ。種を採るときに畑の大根を全部抜いた中で、これが一番よさそうだというのを集めてきて種を採る。これのよいところは、変なものが入ってくる可能性はないので、遺伝的にはよいものになる。ただし「大母本」というのは、年寄りになっているのを1回抜いて植えつけて来年の春に種をとろうというわけですから、母本の力が非常に弱いわけです。そのために種の収量が上がらない。採った種の品位があまりよくない。やせた小さな種がとれる。
「大母本」は一番元になる種を採るときに使い、少量の種が採れるけれども、遺伝的には間違いがない。それを「中母本」にします。「中母本」というのは9月に種をまかなければいけないときに10月に種をまく、それで抜いてみると小さな大根が出る。これは遺伝的にはよいものを選んであるので、その中からおかしいのをはねると収量も中くらいで、遺伝的な厳密さも中くらいだが種がとれる。これで種をまいて「小母本」にする。11月頃に種をまくと全く根が太らず葉だけが茂る。これは大変若いので元気がよくて、種の収量は多いし、種の品位は高い。ただし、全く遺伝的な検査はしていないので、もしこの段階で変なものがまじると除くことができなくなる。ただし種はたくさん採れるので販売用には使える。このように、大母本、中母本、小母本という採り方をして、種としてよい悪い、品位がよい、収量があがる、遺伝的には間違いないというのをとります。大根は抜くと素人が見てもわかるので厳しくなるわけです。
菜っぱのようなものは段階が一つ抜けています。今の種は全部種屋さんがとっていますが、昔は篤農家ががとって、その種を周囲の熱心な農家が分けてもらって使っていました。篤農家の種は原原種だけなので、収量も少なく、見た目もきれいでない。けれども周囲の人たちは納得してつくっていました。だんだんと大規模につくるようになると、種の量がたくさん要るようになりますから、こういうものが売れるということになります。
今は地方野菜が盛んになりましたが、地方野菜で一番困るのは種です。小規模で種をとっていたのでは量が確保できないのと、母本がきちんと選べないので本来こんなものをつくった覚えがないというものが出てくることがよくあります。これをどうするかが地方野菜を扱うときの一番大きな問題です。
また、地方野菜はその地方に限定されてつくられるから値打ちがあるので、大規模につくられるようになってしまったら、地方野菜の値打ちがない。ところが、大規模でなく小規模でつくるということになると種の量もそれほどたくさんいらない。小規模で採種をすると種として何か混じってしまうという事故が起こりやすい。そのところをどうやってクリアしていくかが問題になります。ただ規模をあまり小さくすると、特にユリ科やアブラナ科などは勢力が弱るだけでなく思いもよらないものが出てくることがあります。
このため、日本では大変厳しい選抜が行われてきました。
■F1採種
採種を厳しくしてもどうしても完全にきれいには揃わない。このためF1採種が始まったのです。F1というのは、優れた親と優れた親を交配し、両方のいいところをもっているのを利用して種をとります。アメリカのトウモロコシで最初に発見されましたが、本格的にF1採種が始まったのは日本が蚕で成功してからです。ただし、よいものとよいものを交配しても、悪い性質がかかるとバッと出てきます。私などは若いときには「なんだこれは」と叱られたものです。一代雑種のつくり方にはいろいろあります。
元になるのをつくるのは、ふつうの時期に栽培し、その後、人工交配といって親を育成する段階があります。作物の種類によって下記のようなやり方をします。
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自家不和合 |
アブラナ科 |
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雄性不稔 |
ユリ科、セリ科 |
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雌性系 |
ホウレンソウ |
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人工交配 |
果 |
アブラナ科は全部「自家不和合」を使います。自家受粉させて原型をつくっていくと自分の花粉では自分で種がとれないという性質があり、Aという親をつくるとAはAの種がとれない、BはBというのがあってBの種がとれない。これをつくっておくとABの雑種がとれるということになります。つくりだすには大変労力と資本がかかります。
「雄性不」は、オスが全くだめで、メスだけ種をつくる能力があるというもの。いうなれば、男がだめで、メスだけが生きているのをつくって、その横に別の花粉が出る親をつくれば必ずF1がとれる。主体はアブラナ科で、ユリ科(タマネギ、ネギ)、セリ科(ニンジン)など。セロリもF1ができています。
「雌性系」というのは、ホウレンソウ。
果菜類は全部「人工交配」です。果菜類の中にも「雄性不稔」の果菜類があるのですが、それを使おうという努力は世界各国でしているのですが、まだ成功していません。理論的にはできますが、実際の生産採取をするという意味ではできていません。
「人工交配」は、雄花と雌花がきちんと分かれているのは楽です。たとえばキュウリ、スイカ、日本のメロンは雌花と称するのは両全花なので雄がついています。ですから、それを全部とってしまって交配をしなければいけない。除雄という非常に厄介な操作が入ってきます。それで今作っている一代雑種の品種は、全部アメリカやオーストラリアなど非常に広大な土地で採種していて、最近はチリにも行っています。日本では6月に種が採れますが、梅雨時なので収量が悪いし品質が悪い。また労賃が高いのでコストが非常に高くつく。そこで広大な面積をもつ外国の畑で採種しています。
ただし、「原原種」と「原種」に当たるものは日本でとっています。その種を向こうに渡して種をとってもらうのです。「人工交配」は、きちんと雄をとれるような手先の器用なところでないといけません。最初に果菜類を採種してもらったのは韓国ですが労賃があがったため、台湾、タイに移り、そこも採算ベースに合わなくなったので、今はベトナムと中国になりました。日本で使っている種のほとんどが外国から輸入していますが、種の元になるものは日本で育成して日本でもっています。
■さといも
里芋は親芋、小芋、兼用型があります。親芋型は種いもを植えると芽が出て葉が出て太りだす。小芋型は子がつき、孫がつき、ひ孫がつく。兼用型は親も大きくなるが、その周りに子がつく。代表的なものがやつがしらで、やつがしらの場合はどこからどこまでがなっているのかわからないような格好ですが、親芋と小芋とがはっきり分かれているような兼用型もあります。親芋型はたけのこ芋が中心で、京料理で非常に珍重されています。エビ芋は品種でなく、非常に特殊な栽培をしてエビが腰を曲げたような格好にするもので、品種としては唐芋(とうのいも)、女芋(めいも)を使います。
ふつうに食べるのは石川早生と土垂です。石川早生は大阪府の石川村で生まれたので、この名がつきました。「長」と「丸」があり、関東は比較的土垂が多い。また、長いもののほうがとろみがあります。福井県には粘りの多い大野芋があります。
ジャガイモは男爵とメークイン、サツマイモは紅東と高系など代表的な品種がありますが、里芋は多くの品種があります。 |