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2004年(平成16年) 1月18日 (日) 第10回
品目:ホウレンソウ、シュンギク、菜っ葉類、イチゴ

まず市川理事長より挨拶がありました

ことしも元気に八百屋塾に参加いただき、ありがとうございます。それにつきましても、塾の経営にお骨折りをいただいている江澤先生をはじめ講師の先生方、スタッフの先生方に心から厚く感謝を述べたいと思います。内外の情勢が非常に厳しい中で、青果業界も市場法の改正など諸問題が山積しています。組合としては商組を守るために一生懸命対応しています。早いテンポで変化しているので組合も今までのように単なる追従では遅れてしまいます。常に新しいものを求めていきたい。このような積極的な姿勢で臨んでいきたいと考えています。

 八百屋塾も大変大きな反響を呼んでいます。雑誌等にも掲載され、八百屋塾の皆様方が一生懸命に勉強している様子を、あまねく世間の方々に知っていただくのは心強いことです。組合としては、後継者の皆様方が頼りです。どうぞしっかり勉強してその成果をお店のほうに発揮していただきたい。また、それぞれの市場において、塾生として参加できない皆様方にも八百屋塾を紹介し、広めていただきたいと思います。皆様方の一層のご活躍を祈念申し上げまして結びとします。
 
引き続き、実行委員長の浅賀会長より挨拶
 
 「栄養と料理」2月号に八百屋塾と杉本さんの店(杉本青果店)が5ページにわたり紹介されています。

 また、杉本さんが総合食料局長賞を受賞した優良経営食料品小売店等全国コンクール表彰式が1月23日に開催されます。

 杉本さんのいままでのやり方がやっと認められたとうれしく思います。八百屋のスタイルにはいろいろあると思いますが、正直で嘘をつかない、野菜の情報をたくさんもっているなど、見習う点がたくさんあります。そこで、来月の八百屋塾では杉本さんに講義もしてもらおうと考えています。

芦澤先生の話「野菜の栽培手順」
(配布された表の内容に沿って話をしていますが、ここでは表は省きます)

 今日は野菜の栽培の手順という話をしますが、1回では無理だと思うので、まず品目の話からしていきます。

ホウレンソウ

 いろいろな作物に東洋型と西洋型がありますが、ホウレンソウにも東洋型と西洋型があります。かつては日本のホウレンソウは東洋型が中心で、東洋型が作れないときに西洋型を作っていました。東洋型はあくが少なく、味がくどくないので、おひたしに最適で日本料理の中心になっていました。

 
 ただ東洋型ホウレンソウの欠点はトウのたつのが早いことです。「これはホウレン草でなく、ホウレン木だ」と言われた時期がありました。東洋型のトウが立つ時期には西洋ホウレンソウを作っていました。西洋ホウレンソウはおひたしでなく、煮たり炒めたりして食べます。東洋型は収量的にも少ないのですが、葉が薄く火が通りやすいのが良い点です。東洋ホウレンソウが中心でしたが、料理の形態が変わってきたということ、ある程度の収量が確保できないと農家としては成り立たないという面があって、西洋ホウレンソウがだんだん広まってきました。日本では、西洋ホウレンソウと東洋ホウレンソウをかけた一代雑種が使われています。
 

 参考資料には最近のホウレンソウの品種を全部あげてありますが、東洋ホウレンソウはほとんどありません。西洋ホウレンソウもあまり変わらず雑種が使われています。雑種もカタカナ文字になっているのは、東洋ホウレンソウと西洋ホウレンソウの雑種になります。ホウレンソウの種には丸種と角種があります。全くトゲがないのとトゲトゲがいっぱいあるのと両方ありますが、東洋ホウレンソウはトゲがあり、西洋ホウレンソウはトゲがない種です。最近は雑種にしてトゲのない形がほとんどで、トゲのあるホウレンソウの種は見かけなくなりました。最近は技術でホウレンソウの硬い皮をはいでしまい、播くというやり方もあります。丸種であろうが、角種であろうが、どちらでも皮をはいでしまい、それがなくても通用するようになってきました。昔の本を見ますと、1反当たりにいくら種を播くか。西洋ホウレンソウだと2〜3升、東洋ホウレンソウだと6〜7升、下手をすると夏の一番暑い時期に作るときには1斗、ホウレンソウは真ん丸いのでかさが必要ない、東洋ホウレンソウはトゲがあってかさがあるので、播種量が多かったということになります。しかし、最近はそういうことはなくなりました。

 今日はちぢみホウレンソウが出ています。日本のホウレンソウはほとんどちぢみがないものです。昔からちぢみホウレンソウは知られていましたが、あまり作られていなかった。おひたしとして食べるのに、葉のちぢみ部分にゴミや砂が入るというので嫌われました。最近は技術的に楽になってきているのでこういうものが出てきたのではないかと思います。

 もう一つ「寒じめ」と書かれたものがあります。今日出している産地は「寒じめ」と使ってよいのですが、「寒じめ」というのは商標登録なので、うっかり他の人が使うと商標登録違反でねじ込まれることがあります。「寒じめ」というのは、寒さにあわせて作ると外側から見た格好は悪いけれども非常においしいホウレンソウになるというものです。菜っ葉類は皆そういうものだということは知られていました。ところが、ある所でトンネル栽培していよいよ出荷する少し前になって、開けて外の寒さにあわせたところ、すごくおいしいものができた。
 そこで、寒さでしめるという意味で「寒じめ」としたわけです。寒じめ栽培という栽培方法が宣伝されて普及し、そうなったものを「寒じめ」と登録しました。「寒じめホウレンソウ」というのは、そこの許可を得なければ使えません。しかしながら、一般的に、菜っ葉類は、ここでいう寒じめをすれば大変おいしくなるということです。

 今日はちぢみホウレンソウが出ています。日本のホウレンソウはほとんどちぢみがないものです。昔からちぢみホウレンソウは知られていましたが、あまり作られていなかった。おひたしとして食べるのに、葉のちぢみ部分にゴミや砂が入るというので嫌われました。最近は技術的に楽になってきているのでこういうものが出てきたのではないかと思います。

 もう一つ「寒じめ」と書かれたものがあります。今日出している産地は「寒じめ」と使ってよいのですが、「寒じめ」というのは商標登録なので、うっかり他の人が使うと商標登録違反でねじ込まれることがあります。「寒じめ」というのは、寒さにあわせて作ると外側から見た格好は悪いけれども非常においしいホウレンソウになるというものです。菜っ葉類は皆そういうものだということは知られていました。ところが、ある所でトンネル栽培していよいよ出荷する少し前になって、開けて外の寒さにあわせたところ、すごくおいしいものができた。そこで、寒さでしめるという意味で「寒じめ」としたわけです。寒じめ栽培という栽培方法が宣伝されて普及し、そうなったものを「寒じめ」と登録しました。「寒じめホウレンソウ」というのは、そこの許可を得なければ使えません。しかしながら、一般的に、菜っ葉類は、ここでいう寒じめをすれば大変おいしくなるということです。

シュンギク

 大葉シュンギクは切れ込みがほとんどなく、周りがのっぺりしています。関東で作られているホウレンソウは中葉ホウレンソウといって切れ込みが非常にたくさんある。切れ込みのある中葉ホウレンソウを関東では使います。

 シュンギクには、昔、小葉、中葉、大葉とありました。小葉シュンギクは香りが高く、関東では小葉が中心だったのですが、収量があがらないということと匂いが強いので敬遠されました。好きな人には匂いはよいのですが、嫌いな人もいます。その意味で匂いの少ない、収量の上がる中葉シュンギクに変わってきました。

 関西までは中葉シュンギクを使います。中国から西になりますと大葉シュンギクを使います。フグ料理にはこれでないとだめということです。

 関東のシュンギク、関西のシュンギク、両方とも中葉ですが、関東のシュンギクは株立ちといって、茎が伸びていてそのうえに葉がついています。関西のものは茎が伸びることそのものが禁物で、茎が伸びない株張り型のシュンギクを使います。ですから、関東と関西では同じ中葉ですが、茎の立つものと茎の全く出ないものがあります。関西は茎の出ないものです。よくシュンギクの10a当たりの収量を見ていますと、関西のほうが極端にシュンギクの収量が少ない。関東は茎がついているので重さで量ると重くなり、収量があがるわけです。関西の株張り型のシュンギクは、株ができると全部抜き取ってしまい、出荷します。ところが、関東のものは摘み取りで、摘むと横から出てくる。ですから、収穫期間が長いし、一つ一つも重いので、関東のほうが収量があがるのです。関西の人たちに言わせると、茎なんてうまくもないのにと言うわけです。関西は葉だけを食べ、関東は茎を含めて食べます。狭い日本ですが、大葉と中葉があり、しかも中葉は株張り型と株立ち型があり、関東と関西で棲み分けています。シュンギクは地方によってタイプが全く違います。

 シュンギクはもともと日本で生まれたものでなく、地中海沿岸地方で生まれました。ただヨーロッパでは食用でなく観賞用です。きれいな黄色い花が咲くので観賞用として育てます。ところが、それがこちらへ伝わってきて東南アジアから日本にかけて、観賞用でなく食用になった、大変変わった作物です。

菜っ葉類

 菜っぱ類は野菜としては大変厄介な存在です。菜っ葉はアブラナ科の中のタカナ、カラシナ、ツケナなどです。菜っ葉の類は、なんという名前を使ってよいかが厄介な話で、球ができない菜っ葉という意味で「不結球性菜類」があり、それにカラシナ、タカナ、ツケナの3つがあるわけです。植物学上からいうと、一つ一つ種が違いますが、どれもこれも「不結球性菜類」というわけです。

 ツケナというと、漬物用菜っ葉と間違えますが、漬物に使うというわけでなく、結球しない菜っ葉です。昔はくさかんむりに松という字を書いて「ツケナ(菘)」と読ませました。これは植物としてアブラナ科です。

 もう一つ、ナタネ。この辺りで一番多いのは関東の北から越後にかけては多い。大変寒さに強く、寒い所でよくとれ、寒さにあわすと大変おいしくなります。 

 コマツナは江戸の地方野菜で、それぞれの地域にそれぞれの菜っ葉があります。

 ミズナは関西の菜っ葉で、大阪に行くと大阪の菜があり、名古屋にいけば名古屋の葉があります。

 九州に行きますと、長崎白菜、トウナというのがあります。これはもともと関西のものが関東に出てきたものです。コマツナは江戸のものが日本中に広まってきつつありますが、地域地域に必ずこの手の菜っ葉がありますし、地域の料理には欠かせなくなっています。

 最近地方野菜の復興で一番目を付けられるのは菜っ葉類で、有名なものでは広島菜があります。

 それから九州の福岡、長崎辺りは長崎白菜が、大阪に行きますと大阪ヒノナ(日の菜)、若菜だとか、黒菜とかいう名前で市場に出てきています。

 余談ですが、染色体数はn-18、nー10、n-19などと表現し、分類学上からいうと、染色体数が違うということは種が違うということになります。こういうものがどうしてできたかというのは、日本の学者がいろいろ交配してみた結果です。もともと染色体数が8、9、10のものがあり、長い歴史の間で8と9がかかって17になったり、9と10で19になったということを証明したわけです。19はナタネ、18はタカナ、9はキャベツ、10はハクサイとカブとコマツナなどの菜っ葉。コマツナなどのカブとハクサイとは見た感じは全然違いますが、植物としては大変近い親戚同士ということになります。17というのと8は日本に全くないので、見かけることはありません。 

 有名なハクランは染色体数が19ですが、自然にできたものです。ハクランのランはカンランのランで、ハクサイとキャベツをかけて人工的に19を作ったものです。人工的に作るという仕事は、いろいろな人がやっていたわけですが、その中で結球するものを作り出した。ツケナには結球するものとしてハクサイがあり、カラシナ、タカナの中には結球性タカナがある。ナタネにはそれが見つからなかったのですが、人工的にやってみたら、やはりそういうものができたということで、大変世界的にも有名な仕事になりました。

 ただナタネは数千年の歴史がありますから落ち着いているのですが、ハクランはいまだに結球させようとするとタネがとれなくなり、タネがとれるもので選っていくと結球しなくてナタネのようなものが出てくるので、いまだに安定した作物にはなりきっていません。岐阜の試験場にいた人が岐阜市近辺で大変熱心に栽培に取り組んでいるものですから、名古屋の市場には若干出ています。

 カラシナ、タカナは日本の南のほうに多い作物です。この近所にはカラシナというのがありますが、南のほうに行くとタカナをたくさん作っています。日本では栽培するのが非常に難しいのですが、中国の四川省などでよいものができる茎タカナは、干して酒や香料に漬けたものがザーサイになります。千葉県で作る試みをしましたが、よいものができないし中国から安いのが入ってくるので日本で作るのはあきらめてしまいました。

 カラシナやタカナには茎が太くて食べられるものや、根が太くて食べられるものがあります。この中には、ハクサイのように結球するものがあるし、カブのように根と茎が太るものがあるし、ナタネのように大きな株ができるものがあります。

 茎タカナは茎が太るものです。茎タカナにも3つの種類があり、一番有名なのはザーサイの漬物です。大心菜というのは、茎が太く平らになっている。ザーサイは茎が太く、頭のところにコブができている。ホウジュ菜というのはコブの上にまたコブができ、子供を抱いているような格好をしています。これは全部中国でよいものができます。有名な日本の専門家が「日本でザーサイを作ってもよい漬物はできないのは、茎の割り方にコツがあるようだ」と言っているのを聞いたことがあります。

 ミブナは大変変わった性質があり、作っておくとだんだん大きくなって脇芽がいっぱいできています。脇芽一つ一つが冬から春先までとっていけるという分結性という性質があります。分けつ性の菜ということで有名です。家庭菜園などでずいぶん長く楽しめます。

 もともとはミブナでしたが、突然変異で全く切れ込みのないミズナができたということで、ミズナとミブナは親戚同士です。分けつ性の性質がそれなりの菜っ葉にあるわけです。

 カラシナ、タカナの中にはセリホンといって株が大きくなっているものがあります。そういう意味では、キャベツの仲間には千頭(サウザンド ヘッド)というものがあります。

 それから、関東には以前から関東に土着した京菜の仲間があります。市場にも出てきますし、家庭用にもずいぶん作られています。切れ込みが荒くかなり太い葉になるので「茎広京菜」といわれ、今頃の時期に八百屋で見かけることがあります。

野菜栽培の手順

 次に、野菜栽培における手順を使って野菜栽培をどういうふうにやっていくかという話をしていきたいと思います。

 これ(資料参照)は種を播くところから収穫するところまで段階を追って書いてありますけれども、一番最初のところに栽培計画段階というのが書いてあります。こんなことは農家の人たちにとってはわかりきったことなので、それをいちいち調べることはしませんが、まずどこの畑で作るかということがあります。畑が自宅から近いかどうか、出荷場に近いか遠いか、畑の傾斜はどうか、傾斜の方向が北傾斜か南傾斜か、日当たりや排水との関係があります。一枚一枚がどれぐらいの大きさで、したがって作付けるするにあたってどの程度作付けするか。それから土質、土性、酸度、肥沃土、これらは土の性質の問題で、こういう作物はこういうところに作るとまずいということがわかっているわけですから、ある作付けをするときにはこれを考慮に入れて作るということになります。肥沃土というのは、この畑は肥えているかどうかといういことで、物によっては肥えた畑で作るとよいものができない、逆に肥えた土地でないとよいものができないのがあります。

 潅排水は水がやれるかどうか、水はけがよいか悪いかで、物を作るときの大事なことです。

 風、気温、地温の問題。地温の下がりやすい、すぐ地温が上がってしまうか。風はふつうの風のほかに大きな風が吹くか。必ずこちらの方向から風が吹くということであると、作付けのしかたが違ってきます。それから、そこだけ霜が降りるというような霜道と称するようなところがあります。関東だと防風林をいろいろなところにつくってあって、それが風を防いだり霜道を遮断する役割を果たしたりしていました。

 ところが、農家の人たちは決してそんなことはしませんが、林を切って一本道を造るなど、むやみやたらに宅地開発をすると、従来の考え方では畑が選べなくなるというような問題も起こります。

 次も、農家自身の問題ですが、前作、後作に何を作るか。その作物をいつ作るか、どういう順番に作物を作るかという連作体系。

 スイートコーンは求肥力が強い作物で、畑にある肥料を全部吸い取ってしまいます。ですから、圃場試験をするときには、必ずその前にトウモロコシを作ります。すると、肥料を吸い上げてくれるのでやせた畑ができるのです。そこで、肥料のグレードを変えて仕事ができます。しかし、実際に農家がやる場合トウモロコシを作った後に肥料をたくさん必要なものを植えると、肥料をたくさんやらなければいけないか、やり損なうと肥料欠乏が起こります。作物の組み合わせを考えなければいけません。

 私は若いときにキャベツを担当していましたが、タマネギ担当の人からキャベツの後に入れてくれるなとやかましく言われました。それは肥料を吸収する性質の違いで、キャベツを作った後にタマネギを作ると、タマネギができ損なうのです。ですから、タマネギの後にキャベツならばいいのですが、キャベツの後にタマネギを作るのはだめ。これは長い経験で農家の人たちは知っていますし、なぜそのようなことが起こるかは北海道の人が一生懸命研究しています。

 この輪作体験は非常に大切にことです。

 昔は水田を作って、後は麦を作ることをしていました。収穫期間が遅くなると、その後のものが植えられなくなるので、相互の組み合わせも非常に大事になります。ところが、水田の後に作ることはあまりしなくなりました。昔は田植えは6月末か7月初めであったのでそれを前提にして作付体系が組まれていましたが、最近は稲の定植が早くなり、5月の初めには定植しています。そうすると今までの考え方では作れなくなってきました。

 これから先は農家個人でなく、地域全体、農協全体の話になりますが、どんな種類を作るのかが選ばれる。消費動向、市場動向があり、市況がある。市場動向と市況は大変曲者でして、これから100〜120日後にどうなるかがわからない。したがって、作りすぎると豊作貧乏になるし、場合によっては御殿が建つほど儲かることがある、これは大変難しいことですが、地域全体として考えるときには非常に大事な問題になってきます。作型(いつまいてどのように収穫するか、それを全体として設定する)を決める前に、作目、品種を決めなければなりません。それから、作付けが始まります。

 昔は農家の人が必要な種を買っていたのですが、最近は出荷組合やJAがまとめ買いをして農家に渡す仕組みになっています。これも簡単なようで簡単でないのは、たとえば蒔こうと思ったら種がなかったというようなことがしょっちゅう起こります。今、ニンジンのシェアが一番大きいのはタキイの「向陽2号」ですが、これが評判をとってみんながほしがったときには、タキイのほうの種をとる能力をオーバーし、作付け計画をたて「向陽2号」をまくつもりでいたら種が入らずJA全体で大騒ぎになったということがありました。特にこれがよいという品種になると種が入手できないことがあります。ない種をどうやって手に入れるかというと、種苗会社とJAの種とのかけひきがあります。

 また、種は買ってきて蒔いても芽が出ないことがあります。これは種が悪いのでなく休眠して場合があるわけです。ナスは発芽を促進するために特別な処理をします。たとえば種をとる前に低温に当てるとか、高温処理をしなければいけないということがあります。これは現在では種苗会社やJAが事前処理し、農家が自分でやらなければいけないということはありません。

 それから、サイガというのは芽が出るように準備をすることです。一般的には水に浸けて水分を吸わせます。

 それからプライミングというのは、芽が出るときから芽が出た後の間、種が正常に活動できるような処理をすることで、最近になって発達しました。

 その後は全く違ったことで、コーティング、あるいはシードテープなどがあります。コーティングというのは種の周りに種を丸薬のようにして播くこと。シードテープは長いビニールテープの中に10〜20cmおきに種を封じ込めるので、それを播けば畝幅の間隔が自然にとれるという仕組みです。コーティングやシードテープが必要な理由は、小さな種を播こうとした場合、一つの丸薬にしておくと比較的簡単に株間がとれるからです。丸薬の中にはプライミングに必要なものが入っていたり、種の発芽を促進するようなものが入っています。

 コーティングの技術はコンペイトウを作る技術が応用され、シードテープはシードテープを作る会社に種をもっていって種を封印してもらっています。使うテープには水にかかると溶けるという重要な性質があります。シードテープが時々しくじるのは、雨が降るつもりで播いたら、雨が降らなかった。そうなると溶けにくく、一斉に発芽してくれないと困るというようなことが起こってきます。

 種についてはそのようなことが起こりますが、これは農家の段階ではなく種苗会社、JAの段階でそれがやれるようになりました。ですから、播種量は減ったわけですが、種の代金はコーティングすることなどにより高くなっています。

 もう一つ、種を扱う人たちに求められるのは発芽率100%であることです。これが種の準備段階です。

 種の播き方には「散播」があります。これは種を播いても物によっては間引きが必要で、ホウレンソウやニンジンはかつては種を蒔き損なうと間引きで泣かされました。けれどもコーティングやシードテープでその心配がなくなりました。

 「条播」は条のように播いていきますが、やはり間引きが必要です。「点播」は決めたところに種を播きます。昔は種が出たり出なかったりしたので3〜5粒まいて間引きをしていましたが、最近はF1になってきてコーティングでもシードテープでも点播の形になっているので間引きの心配は要らなくなりました。

 「雁木播」は集約な農業をしているところでは使われています。「条播」もしくは「点播」を畝の方向でなく、畝に直角に播いていきますが、これも間引きが必要です。江戸川辺りでは狭い面積で集中的に作物を作り、しかも生育期間が30〜50日と短いときには使うところがあります。家庭菜園などだと収穫の効率が高く、労力を少なくできるということがあります。

 最近は、葉根菜類では播種機ができ、とても便利になりました。今日は播種の話まですませました。


江澤先生の話「市場法改正」(抜粋)

 中央卸売市場法は1923年(大正12年)にでき、何回か改正されている。中央卸売市場ができた背景には米騒動がある。1918年(大正7年)頃、米の値段が5倍くらいになり、日本中で大騒動が起き、東京でも焼き討ち事件があった。その前年1917年(大正6年)にロシア革命があり、日本はシベリア出兵計画を立てた。出兵すると食糧として米が大量に必要なので米が投機的に買われ、米騒動が引き起こされたのである。
 
 その後、手数料や歩戻しをどうするかというようなことを閣議で決めるようになり、卸売市場法に中央、地方と2つの項目をつくり、市場法を改正したのが1971年(昭和46年)。いろいろ改正してきたが、先取りなどいろいろな問題が出てきても無条件委託など4つの項目は依然として改正しなかった。卸売市場法にある程度網がかけられていたことが経済の発展を阻害するような事態になってきた。

 1970年(昭和45年)頃になると、米が余って減反政策をとるようになり、1980年代に入ると食料全体が余ってきた。そして、自由に商売ができるような世の中にしていかなければいけないという動きになってきた。市場法が改正されるのは、規制をなくすということである。

 今問題なのは、卸売市場というものがせっかく存在しシェアがまだ6割5分あるのに、市場を通過すれば安全であるということを国としてとっていないことだ。

 手数料自由化の問題についても、これまでの商習慣や会社の方針などを踏襲しながら対処していくだろうから、急激には変わらないだろう。問題なのは、今後は大量に仕入れれば安くなるという弱肉強食の時代になることである。それでは、中小の小売商は団結していかないと立ちゆかなくなる。

 だから、小売店は物品販売業から食べ物屋に変わっていかないといけない。それには品質が一番の問題になる。氏・素性・育ち・食べ方をしっかりとさせ、野菜も品種名で売ることを意識的に心掛けるべき。

 市場法が改正されると厳しい情勢が出てくるということを知っておいてほしい。


橋本さんのイチゴの説明

 さがほのかは変な特徴があり、毎年一番果のときはうまい、二番果で味が落ちる、三番果になるとまたうまくなる。だから市場で食味して買ったほうがよい。 
 
 さちのかは日持ちがよく味もよいが、ちょっと肉質がかたい。

 あまおうは、さちのかととよのかの掛け合わせと覚えるとよい。4年前から作られていて、昔からの生産者は技術も高いが、生産者によって違いがある。

 とよのかは品種なりの味がある。イチゴ大福にはMを使っているらしい。

 うちの店では、とちおとめ、あまおうを主力に、時々みつこを扱っている。先日東一で章姫の試食会をしたが評判はいまいちだった。
 

 アイベリーは高級なわりにはうまくないといわれる。

 宝交やダナーはうまかったが見なくなった。


鈴木先生の商品説明

・ミズナはシャキシャキ感があって漬物、鍋など万能野菜的に使われている。関東の茨城県、千葉県などで作付が増えてきた。とくにメロン、スイカの産地が価格低迷しているので、安定して売れるミズナに取り組む産地が増えてきている。
 
・シュンギクは周年供給されているが、芯がかたいので鍋物にも敬遠されがちだった。そこで、なんとか需要を伸ばしたいというので、大葉タイプが出てきた。やわらかく、しゃぶしゃぶにも最高なので、積極的にすすめていきたい。関西では主力になっているが、やっと関東でもお目見えしてきた。

・ホウレンソウは日本では定番の菜っ葉になっているが、現在は東洋、西洋が交配されたものがほとんどである。夏場は作りにくかったが、周年化が可能になり東北、岩手を中心に作られるようになって年間安定した供給ができるようになった。
 

・サラダほうれんそうは水耕栽培が大勢を占めるが、生で食べるホウレンソウということで各産地が注目している。

・ちぢみホウレンソウは東京青果で独自に販売している。冬場のホウレンソウは60日くらいかかるが、ちぢみは70日くらいかかっていてうまさが凝縮されている。

 
食べ比べ

みぶ菜 埼玉 JA埼玉ひびき
ミズナ 京都 
ミズナ 茨城 JAなめがた
シュンギク  栃木 JAしおのや
シュンギク(おたふく) 栃木 JAしおのや
寒じめ ちぢみほうれん草 栃木 JAおやま
サラダほうれんそう 岐阜の農園(無農薬水耕栽培) 
ほうれんそう 群馬 JAぐんまみどり(真空予冷品) 


菜っ葉類

・ホウレンソウは露地物がうまかった。ミズナの京都産はさっぱりとしていておいしい。
・うちではホウレンソウのハウス物はほとんどおかない、露地物のほうが甘いから。試食をしてみてうちで売っているホウレンソウのほうがもっと甘いと思った。

・冬のものが寒さに当たって甘くなるという話で、リンゴになぜ蜜が入るかを教えてもらったことを思い出した。子孫繁栄のために甘さで抵抗し中央にある種子を寒さから守るらしい。青首ダイコンも外に出ている部分が甘いのは寒さから身を守るためと聞いた。ちぢみホウレンソウを試食し、そうしたことが実感できてよい勉強になった。

・サラダホウレンソウは生で食べるとおいしくない。

・サラダホウレンソウはうちの店では花束のようにして売っている。ちぢみホウレンソウは甘みがあっておいしかった。

・ミズナの味が産地によってこんなに違うとはわからなかったが、食べ比べてわかった。

・競売でこのホウレンソウは露地かどうかをみながら高く買ってあげるとよい。

・ちぢみホウレンソウはおいしかった。サラダホウレンソウは風味がなくてドレッシングをかけないとなじめない。

・ホウレンソウは露地物のほうが寒さにあたっていてうまかった。ちぢみホウレンソウも甘みがあった。ハウス栽培で周年出荷されて均一のものより、特色があるほうが売れるのではないか。サラダホウレンソウは何もかけないとえぐみを感じる。生で食べるのならば味の面も改善していけばいいのではないか。
 
イチゴ

アイベリー 千葉 JAかとり小見川苺部会
あまおう  福岡 JAふくおか八女
あかしゃのみつこ 長崎 JAながさき県央
とよのか  福岡 JAふくおか八女
章姫 静岡 JA富士市
とちおとめ 栃木 JAはが野
とちおとめ 茨城 クローバークラブ(ハーブ減農薬栽培)
さちのか 佐賀 JA佐賀松浦
さがほのか 佐賀 JAさが東部みやき

・さちのかがうまかった。

・アイベリーは酸味もある。

・あまおうが一番おいしかった。

・とちおとめが肉感がよい。

(イチゴは各人の好みによって、感想もいろいろ)

・浅賀さんのアドバイス:甘いイチゴ、甘酸っぱいイチゴ、お客が何をほしがっているのか、どんな味がよいかを知らなければいけない。今の時期はさちのかがうまい。とちおとめは実がしっかりしていて日持ちもよく甘酸っぱい。あまおうはネーミングがおもしろくインパクトがあるが、さちのか、とちおとめは酸味があるから好みが分かれる。

 イチゴのパックの裏を見るお客がいるが、新鮮なものを売っているのに疑うなと思う。3回くらい裏を見てあげくは落としてしまう。もうやめてくれと言いたくなる。そうされないためにも、いつも鮮度のよいものを売ることが大事だと思う。 
 

・柿沼さん:(産地の4個入りパック箱を利用し、簡単にできるイチゴの2パック箱の作り方を披露)これだと箱代も不要。手間を惜しまずサービスすれば、お客もおつかいものなどに利用してくれる。

・橋本さん:うちはイチゴ箱の上に包装紙を4分の1かけて贈答にしてもらっている。パックの裏を見ている場合は、「うちは量販店と違いますよ、安心して買っていってくださいよ」と声をかける。イチゴは翌日に持ち越さないように、良いものを適正な価格で売るようにしている。もともとバナナとイチゴは儲かる商材ではない。

 生産者によって味のバラつきがあるので、味がよかったときの生産者番号を選ぶようにしておけばよい。


荒井先生

 サラダホウレンソウは生で食べるのはおいしくないという感想が出ていたが、煮込みうどんなどに最後に入れるとおいしい、みそ汁にミツバを入れるような感じで入れると甘みが出ておいしい。

 おひたしにするときに、あくの強いものは湯の量が多いほうがよい。ミズナやミブナのようにくせのない野菜はゆでるときにそれほど神経を使う必要はないが、ゆで時間が悪いと歯切れが悪くなるので注意してほしい。
 
 プロが使う厨房設備があるところで、こういう勉強会があり、ホウレンソウをゆでたところ、沸騰がとまらず1分くらいグツグツゆでて水にとったら、あくがちっとも出ていなかった。ふつうは沸騰した湯にホウレンソウを入れるといったん温度が下がるが、それからまた温度が上がるまでの間にあくがとれるのではないかと考えた。

 ホウレンソウをゆでるときにはグラグラ沸騰していない温度のほうがいいと思う。

 (電子レンジで調理してもあくは抜けるかという質問を受けて)あくの強いものはだめ。カリフラワー、メキャベツ、ブロッコリー、アスパラガスなどは電子レンジで調理するときは、耐熱ガラスのボールに少し水を入れてから野菜を入れ、ラップをかけて電子レンジするとよい。

今回のゲスト

雪下ニンジンの生産者 宮崎 朗さん(新潟県中魚沼郡津南町)

 
 魚沼米の産地で農家をし、雪下ニンジンや、アスパラガス、米などを作っています。農作物はダンボールに詰めて出荷した段階から先のことはわかりません。それではいけないので、東京に来たときには小売店を回って気をつけてみようと思っています。寒さに当たっておいしくなる雪下ニンジンをぜひ来月試食してもらいたいと思っています。

 こだわって農産物を作っていきたいという思いがあるので、品質がよいものを売っていきたいという人たちがいれば、つながっていけるのではないかと期待しています。
 
めいきん生協商品活動推進室の菊地秀行さん、村上さん 
 
 八百屋さんたちがものすごく熱心で元気なので、びっくりしました。素晴らしい。私たちも頑張らなければと思いました。名古屋の八百屋さんは元気がなくなっています。量販店で買い物する場合、品質がいろいろあるからチェックしなければいけないが、みなさんの店ではしっかり管理しているから違うのだなぁと思いました。