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2004年(平成16年) 12月12日 (日) 第9回
学習テーマ「ネギ、トマト、ミカン」

■芦澤正和先生の話

野菜栽培における作業手順

 
 野菜栽培の作業手順を考えるのは、農家にとっては当たり前のことです。野菜は食べる部位によって果菜(果実)、菜菜(葉、花)、根菜(根、根の近く)に大別され、同じ洋菜類の中でも結球(キャベツなど)するものと不結球(ホウレンソウ)のものがあり、各野菜で取扱い方が違います。

栽培計画段階

-圃場選定-
 
農家は、自分の畑がどんなもので、作れる野菜、作れない野菜、前作に何を作るかなどの栽培計画が頭に入っています。また、それぞれの地域のリーダーの人たちがそれを指導していきます。まず、どこの畑に何を作るか、畑を選ぶことです。

-輪作-
 
輪作はどの作物の後にどの作物を作るかということです。作物の中には、ある作物の後にある作物を作ってはまずいということがあります。それで一般的には畑全体で作物を回し輪作をしていきます。前作と後作があり、今年作って来年もう一度作ってもよいというものがあるし、今年作ったら3〜5年の間隔を開けなければいけないものなどがあります。それを選んでいくわけです。「輪作体系」とは、自分の畑全体を見回して、栽培品目のMAPが頭の中にできていることです。野菜だけでなく、水田で稲刈した後に何を作るか、なども「輪作体系」といいます。稲の場合、田んぼに入れる水が畑を清浄かする役割を果たすので、連作できないということは少ないのですが、その代わり稲があると隣接して作物が作れないということがあります。

-作物選定-
 
どの作物を選ぶかについては、消費動向や市場動向、市況などを見て決めていきます。現在の日本では何を作ろうが自由ですが、やはり作って赤字が出るようでは困ります。近隣地区と競合しない作物も考えていかなければいけません。

-作型選定、品種選定-
 
いつ種を播いて、いつ収穫するか。一つの作物については、それぞれ作型があります。何をいつ作るかが決まれば、当然品種も違ってきます。

栽培準備

 では作物を作るにはどれだけの準備が必要でしょうか。

-種子準備-
 
栽培する面積に対してどれだけの種子が必要か。その種子を準備するにはどうするかについては、どの野菜についても必要になります。

 まず、種の段階では「休眠打破」をしなければなりません。種の中にはある時期に眠っているものがあり、休眠の間はただひたすら眠っています。ですから、休眠するものは、休眠を破るか、休眠の外れた時期に畑に播きます。

 「予措」というのは休眠を破る処置のことで、高温に当てる、低温に当てる、薬で休眠を打破するなどの方法があります。

 「催芽」は、種子をいきなり播くと、芽が出るのに時間がかかったり、芽を出し損なったり、ということがあるので、水に24時間浸けて芽が出やすいような状態にすることです。

 「プライミング」は、芽が出るところまで種子が正常に活動できるような処理をすることで、最近になって発達してきました。

 「コーティング」は生長に必要な養分や化学成分が混じっているものを種子の周囲に丸薬のようにつけることです。種子が小さいと播くのが大変だし、間引きが必要ですが、コーティングしたものは1粒播きができるので、栽培にとっては大変便利です。丸薬の状態だと小さな種でも播きやすく、芽が出にくいものでも出やすくなります。ニンジン、ホウレンソウの種子にはコーティングしてあるものがかなりあります。

 「シードテープ」はプラスチックのテープの中に種子が一定の間隔で埋め込まれていて、そのテープを農地に敷いて土をかけるというものです。水をかけるとテープが溶けるので種子が出てくる。ある意味で大変栽培が楽になりました。私が若い頃にはニンジンの間引きは時間がかかって大変でした。最近は種子の質がよくなっていて全部芽が出るし、シードテープのものは一定間隔しか芽が出てこないので間引きは必要なくなりました。

-播種-
 
種子をどういう方法で播くか。育苗するものはそれなりの播き方をし、苗を作らないダイコンやホウレンソウはいきなり畑に播いていきます。

 播く方法には「散播」「条播」「点播」「雁木播」があります。 「散播」はばら播いていって適当に間引いて一定間隔にする。「条播」は何cm間隔に播くということを決めておいて種子を播いていく。これも間引いていって一つの株に仕上げていきます。「点播」は、播くところを決めておいて3〜5粒を播き、日が経つにつれて間引いていく。「雁木播」は細かな管理をして少ない農地でたくさん栽培しようというときに使います。播種するときには、栽植密度を頭に入れておいて播くわけです。「コーティング」した種子を使うと簡単に「点播」ができ、シードテープは「点播」「条播」ができます。

 かつてニンジンは発芽率が70%あればいい方で発芽率50%ということも珍しくなかった。このため、たくさん播いて株を保とうとしましたが、最近は採種の方法が発達し、種苗会社の処理も上手になったので、発芽率は95〜99%になりました。とはいえ、今頃70%の種を売れば訴訟にもなりかねません。

-間引き-
 
播いた後に混んでいるところを抜いていく作業です。非常に手間がかかりますが、コーティングやシードテープが発達してきて、最近では間引き作業が少なくなりました。苗を作って畑に植える(苗床に種子を播く)ものと、直接畑に種を播くものがあります。根菜は苗を作るということは全くしません。

-育苗-
 
苗を作るというのは農家の人にとっては大変手間のかかる作業でした。かつては苗の出来不出来が野菜の成果を決めていましたが、最近は育苗業が発達し、苗だけを作って売るところがたくさん出ています。特に果菜類は多くなっています。農家にとっては育苗の労力が要らないし、確実に苗が入手できるというので、ここ10年ほどで苗産業が発達してきました。昔ならば誰が作ったか得体の知れない苗など作れるかという考え方で、自分で苗を作り、自分の苗で作ると非常にうまくできるということがありました。苗を作る「床土」も最近はマニュアル化した床土ができ、そこに播けば苗がとれるようになっています。したがって、現在は「苗を作る」のでなく、「苗を買ってきて作る」ようになりました。家庭菜園をする人が園芸店で苗を購入するのと同じ感覚で、農家は大量に苗を買って植えていきます。しかも苗の質としてはほとんど変わりがないものができるのです。苗を専門に作る育苗会社があり、種苗会社が子会社などを通じて苗を供給するということも行われています。自分で苗を作る人が減り、ほとんどが購入苗になりつつあります。

-接木-
 
接木は果菜類だけで行われます。土から入ってくる病気が多いので病気に強い台木を使って、台木の上に栽培するものを接ぎます。

 例えば一方で「桃太郎」を作り、もう片方では病気に強い台を作り、台と穂をある生育段階でくっつけるわけです。これもどの品種にどの台を使うかというやり方が育苗業者によって決められています。トマトはずいぶん接木苗が出ていて、スイカは100%接木苗です。接木は育苗とくっついた形で行われています。

-挿木、株分-
 
「挿木」「株分」は野菜ではあまり使いませんが、これらによって新しいものを作り増やしていく方法です。

-授粉樹-
 
果菜類の場合、花粉がつかないと実になりません。ところが花粉の出の少ないものがあります。このため、花粉を供給するための株を作っておいて、そこから花粉をとってかけます。通常は自然交配が多いのですが、中には人工交配をするものもあります。花粉の親にするものを受粉樹といいます。一番授粉樹を使うのは果樹で、野菜でも種無しスイカは必ず授粉樹を入れておかなければいけません。もともと食べる株の方には花粉ができないので、種子ができないのです。そこで授粉樹を入れて栽培するということをします。自分の花粉を自分で受け付けない「不合和」なものも、別に受粉樹を作っておかないといけません。

 今日はここまでにします。
 

接木の質問に対して

-回答-穂の方はふつうに食用にする品種を使い、台木のほうは病気に強い、寒さに強いなど目的に沿った品種を使います。一番大きいのは病気に強いことです。キュウリを栽培するときの台木はカボチャで、あるカボチャの台(輝虎)を使うとブルームレスになることが分かりました。現在はブルームレスになるカボチャ台の品種もたくさんあります。本来ブルームレスになること自体が珍しく奇形だったわけですが、いまではブルームレスが主流になってしまいました。「自根キュウリ」といって自根を自慢して売るものもありますが、自根にするためには畑に病気が出ないようにしなければいけません。

接木が多いのはスイカで、ほぼ100%の割合です。スイカもキュウリのように(じょうぶな)カボチャ台にすればよいのですが、カボチャ台にすると果実が荒れ、木が暴れて果実の品質が落ちます。ですから、スイカはユウガオ台を使っています。

外国で種子をとることに関して

-回答-外国で種をとる場合は、おおもとになる種子(原々種)と、それをもとにした市販の種子をとるための種子(原種)は日本でとり、原種を外国にもっていって採種し日本にもってきています。日本のように雨が多い所では種子がとりにくいのです。

 (土など条件が違うと、違う種子が採れるのでは?という疑問に対して)

 種子には影響は及びません。果菜類の採種も最初は韓国が多かったのですが、人件費の関係で台湾、タイで採種し、現在はベトナム、中国が多くなりました。種子に採種地の国名が書いてあります(この後、外国で作った種子を日本で播いて場合に国産として売れるのかなどという意見が出ました)
■ネギ

 日本のネギは岐阜県の関が原地方を境に、西(南)側は葉ネギ、青ネギ、東(北)側は根深ネギ、白ネギの産地です。葉ネギは土寄せをしないで食べるタイプで、根深ネギは何回か土寄せをして真っ白にして食べるので白ネギというわけです。青ネギは比較的短いので、1年に何作も作ることができますが、白ネギは半年以上かかるので、1年に2作ぐらいしかできません。
 

↑九条(万能ネギ) JA筑前あさくら

↑下仁田ネギ JA渋川

↑九条ネギ JA京都市

↑赤ひげ JAひたちの

 万能ネギは青ネギで、土寄せをしないで作ります。関が原の近所にはどちらにもつかない違うものもあります。万能ネギは全く休眠しませんが、根深ネギは休眠するので、ある時期になると生育が衰えます。

 一番休眠の深いネギは中国北方にあります。完全に寝てしまうので地上部がなくなり、ネギの地下部に当たるところだけが残り、寒い時期を過ぎて暖かくなると伸びてきます。冬に零下数十度になるような土地ではネギはそうやって生き延びてきました。

 休眠の深さも、完全に休眠してしまうものから、休眠の浅いもの、全く休眠しないものまであります。日本で作られているのは完全に休眠するタイプはほとんどありません。

 分けつについても、一株しか出ていない下仁田ネギや、一株が分けつするタイプなどがあります。一般的に休眠の深いものは分けつをしないものが多いようです。

 中国では2000年以上の歴史がありますが、中国北方にあるものは休眠があります。南方に行くと休眠しなくて、よく分けつするタイプのものがあります。それが日本に入って北方で根深ネギ、南方で葉ネギのタイプが生まれていったと考えられます。

 ネギはF になるのが一番遅れていましたが、最近になって根深ネギ、青ネギともにF が作られてきています。F を嫌う人もいますが、いずれは全部F になるのではないかと思います。

■トマト

 ナス科で大事なのは、トマト、ナス、ややランクが下がってピーマン、トウガラシです。ピーマンとトウガラシは植物としては全く同じで辛みがあるかないかだけの違いです。このほか、食用ホオズキ(ミニトマト大、ホウ(草冠に包むの字)をかぶっている)、ジャガイモがあります。ジャガイモの花とトマト、ナスの花はよく似ています。ナスは紫に近く、トマトは黄色です。ジャガイモの花は白、ピンク、紫色といろいろなものがあります。ピーマンは小さな五弁の花が咲きます。

↑桃太郎ヨーク JAひまわり ↑華クイーン JA唐津市

↑ミニトマト(千果) JA玉名 ↑スーパーファースト JA佐倉

 トマトの歴史は古くアメリカ大陸では昔から食用にされていましたが、コロンブスのアメリカ到達後ヨーロッパへ入り、あちこちへ広まっていきました。トマトは独特の臭さがあってなかなか野菜としては定着せず、日本でも本格的に食べられるようになったのはおそらく戦後になってからです。 

 日本のトマトは大玉(約150g)で、皮の色がピンクでないと評価されません。ところが外国のトマトは中玉(100g以下)で、果実の色が赤いのがふつうです。日本はそれを嫌ったので、日本だけ大玉がよいという異常な発達の仕方をしたわけです。日本でトマトを作るときに一番大きな問題は空洞果になることです。大玉にしようとしたのでいろいろな問題が起きてくるのです。最近はミニトマト(約15g)が流行って、ミニに対する抵抗感がなくなったので、ミディ(50g以上)も流行り始めています。日本のトマトは生食がほとんどでそれ以外の食べ方をしませんが、トマトを最もよく食べるイタリアでは調理用のトマトが非常に多く出回っています。トマトの消費を伸ばすには加熱調理が必要といわれ、加熱調理用の品種もできていますので、やがて広まるのではないかと思います。

 ミニトマトは最初日本では流行らず、機内食に使われていましたが、十数年前から爆発的に売れるようになりました。

フルーツトマトの質問に対して

 フルーツトマトは、栽培をするときに水を絞れば糖度が上がるので、それを「フルーツトマト」と称しています。水を絞ると収量が全くあがらないことになり、3〜4倍の値段で売らないとひきあいません。 

江澤先生の補足説明 

 トマトは水を切ったりして、甘いトマトを作る栽培方法がある。その代わり収量が少なくなるから、糖度6度から1度あげるだけでもkg150〜200円高くしないとひき合わない。糖度10度で1個500〜700円というトマトは、月に1000万円ぐらいの収入がある人の野菜なんです。一般の人のトマトは糖度4〜5度あればいいのです。高級なトマトはちょうどフォアグラみたいなものです。トマトは果実の販売に似てきています。

講師橋本さんのミカンについて

・ミカンを箱のまま贈答として売るときには必ず箱を開けてチェックしてください。1〜2個傷みがあるとそこから傷みが広がります。

 

↑田村みかん(有田 田村出荷組合) ↑味まる(JA長崎西海)

↑日の丸みかん(愛媛西宇和 日の丸共選)

みかん(JA紀南201)

   
   

−南柑20号(糖度13度以上)

−田村みかん(有田 田村出荷組合)手詰めなので傷みが少ない。 

−みかん(JA紀南201)

−夢未来(JA熊本共選)大田では数量が少ない

−味まる(JA長崎西海)

−真穴みかん(愛媛西宇和 真穴共選)大田市場で人気

−日の丸みかん(愛媛西宇和 日の丸共選)大田市場で人気

・うちの店ではサンプルを並べて試食させるが、甘いミカンを後から食べさせると差が歴然と出る。逆だと酸っぱいということになる。お客さんに対しては、うまいミカンと甘いミカンと両方あるといったほうが受ける。

・ハウスのデコポンはうまいから、そのままでなく、キャップに入れて売るとよい。うちは佐賀産とか鹿児島出水の大玉、3kg7玉入りを化粧箱に詰めているが、とても見栄えがよく、ちょっと工夫すると1000円くらい違ってくる。

・試食販売させると納得して買っていく。

・箱で売るときには、「箱をいったん開けてください」と断るか、中に注意書きを入れるようにしている。こちらで調べるときには箱のお尻の部分を開ければ、お客さんにはわからない。ことし(2004年産)はトラブルが多く、大玉だと味が抜けたものが多い

・JA紀南は一番最初に袋がけをした産地。無霜地帯なのでいいものがとれる。昔は10kg箱できていたが、最近はあまり多くこなくなった。昔あった銘柄が我々の目に入らないところでどこかに行ってしまうのは困ったこと。今まではサンプルが出てきて競売にかかっていたが、目に見えないところで動くようになった。

・今はどこでもセンサーを通しているが、機械だからどうしても誤差がある。サンプルを食べてみて、自分の舌で感じ納得して売るようにすればお客もついてくる。

・愛媛は「南柑20号」だから扁平にならなければいけないが腰高のものが多い。ということは弱いということ。締まりが悪い。こういうものを秀に入れてはいけない。


鈴木先生の商品説明

 (年末年始の野菜は前進化傾向。年明け以降の野菜が危惧される状況ということで、各出回り状況と、ネギ、トマトの説明)。

・ねぎ(8産地、下仁田、九条、赤ひげ、コウタロウなど)

・トマト(11産地、ハウス桃太郎、桃太郎ヨーク、麗容、サンロード、スーパーファーストほかミディ、ミニトマト、フルーツトマト)

 トマトは年明けのトマトがおいしい。冬のトマトは色づくまで3ヵ月かかるが、夏場は1ヵ月で色がつく。
 フルーツトマトは糖度のノリが悪いが、佐賀・JA佐城は完熟系で食味がよいタイプを「サンロード」の名前で出している。
 中玉は中玉なりのおいしさがあるが、外国の種を使ったミディタイプが主体になってきた。ミディの「華クィーン」は大玉になりづらく、先がとんがる傾向があるが、ミディの中では糖度がのっているタイプ。
 ミニの主力産地は熊本、愛知で、「千果」「ココ」が主体。ファーストトマトは扱いづらいが、千葉の佐倉で「スーパーファースト」という品種で再度人気復活を目指している。
 ファーストは日持ちが悪く、果肉が弱いのでぶつからないように緩衝材を入れないといけない。このため、主力産地であった愛知県も丸玉タイプになってきた。

試食

・ネギは生、焼いたもの、煮たもの、薬味(そうめん)などを試食、トマトは生で食べ比べて感想を言い合いました。
 

・トマトは人それぞれ好みがあり、甘み、酸味などで違ってきます。この日試食したものはと平均しておいしいという評価でした。香り、肉質、甘み、酸味、色(外観)、味がチェックポイントになりました。実割れは夏場に多く、冬場は割れにくい。しかし、空洞果のような悪いトマトは割れにくく、実が張っている良いトマトはむしろ割れやすいそうです。