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2005年(平成17年) 4月17日 (日) 第1回
開校式 学習テーマ「トマト」

 浅賀会長よりバトンタッチを受けた杉本実行委員長が開会の挨拶。「前回の八百屋塾修了式では胸が熱くなるような感想をきくことがでた。月1回の日曜日、野菜の魅力にとりつかれるような勉強会になればと期待する」

 続いて東京都青果物商業協同組合西牟田専務が「健康に留意しながら、八百屋塾で得たものを商売に生かしていただきたい」と挨拶し、講師代表の江澤先生の話から講義に移った。


江澤正平先生の話

おいしいものを提供する

 八百屋塾は八百屋さんが今まで物品販売業として野菜を売っていたのを、もう少し踏み込んでお客さんに食べ物を提供する、特においしい野菜を提供するということを目指さないと、これからの八百屋さんの将来はないということで始めた学校です。かつて八百屋さんが約5万店あったのが3年前に約2万9000店になり、今秋には商業統計の結果が出ますが、さらに減っていると予想されます。なぜ減っているかといえば、新規参入がないということと、スーパーがこの30年間増え続けて定着しセルフサービス型の物品販売がメインになったことがあげられます。消費者はスーパーのワンストップショッピング性を評価しているのです。店ではますます効率化が重視され、低迷している生協もスーパー並の効率化を図って乗り切ろうとしています。

 八百屋さんは一番効率が悪いのですが、その八百屋さんが効率のよいスーパーと一緒の土俵で勝負すること自体厳しいわけです。ならば効率をよくするということは考えず、効率の悪い立場をもっと生かしていけばよいというのが八百屋塾の一つの軸です。
 八百屋さんの特性である対面・対話販売は効率があまりよくありません。それをよくしようと思っても中途半端になっています。今までは、自分は食べていないのに、「おいしいよ」という言葉だけで商売していたのを、もっと踏み込んでお客さんのために商売していく、おいしいものを提供していくということが一番の課題です。

   

自分で食べた情報を伝える

 野菜が健康のために重要というのは、この7〜8年、特に国の方からいろいろな形で情報が出ています。しかし、その情報は、目や耳で見聞きしている情報だけであり、口で食べている情報は伝わりません。これは無理もありません。口で食べている情報は自分自身の情報であるから、他人にそれを知らせるのは大変難しいのです。ものや音に形容するため、擬音語や擬態語を使わなければなかなか伝わりません。ですからインターネットなどで情報があふれていても、伝わる内容は食べ物とかけはなれているわけです。

 一般にいわれる「品質」というのは外観だけです。野菜の高品質って何?と、専門誌の編集長にたずねたところ「鮮度」という答えでした。だけど、食べてどうか、うまいかまずいかということが分からないと消費者は食べません。

 食の変化でいえば、家庭がこの10年ぐらい変わってきて個々で食事をするようになり、すぐ食べられるものに傾斜してきました。野菜の場合下ごしらえが面倒なので、今の人たちは下ごしらえをしないでおいしく食べたいと考えます。その結果、今の若い人は中高年の7割位しか野菜を食べていないという状況です。野菜は1年に120kg位食べられていたのが現在は100kgです。野菜は栄養があるからといってPRしてもなかなか増えないのは、口で食べて「おいしい」という情報が伝わっていないからだと思います。

 これまで5年間八百屋さんが野菜を勉強してきて、いろいろなことを手がける八百屋さんが増えてきました。八百屋さん手作りの漬け物は人気を博していますし、サトイモの皮をむいてゆでて販売したり、暮れにやつがしらを薄味で煮て提供したりとやり方は様々です。そのように手間をかけて提供すれば売れます。量をたくさんというよりは、口当たりがよくてうまい野菜が望まれているのです。今の若い奥さん連中は弁当の中にカロリーメイトを入れておけば栄養が足りていると思っていますが、補助食品ばかりを食べるのは健康によくありません。野菜をたくさん食べないと健康にはなりません。たくさん食べてもらうには、おいしくなければいけない。そういう情報が欠けています。販売する時にもそういう情報をつけていけばお客さんは喜びます。そういうことができるのが八百屋さんなのです。八百屋さんが消費者のために野菜を一番身近に提供できる地位にあるのですから、その地位を生かすためにも積極的に野菜を自分自身で食べなければいけません。やはり食べた人が話をしないといくら「うまいよ」といっても相手には通じないからです。

舌を鍛える

 現在出回っている野菜は110種類位ありますが、同じダイコンでも春夏秋冬、味もタイプも品種も違います。そういうのを味わって違いを知らなければいけません。だから、1ヵ月に1回、せいぜい3品目、それらを生で、煮て、焼いて、揚げてなど調理してもらって試食しますが、それでも年間36品目ぐらいしか試食できません。本来、自分で売っているものはみんな食べるくらいにならないといけないわけです。

 果物は品種で売るのに、野菜は種類が多いからか、品種で売るのはせいぜいジャガイモ、トマトくらいです。品種で売るような時代にならないと野菜の消費は伸びないと思いますが、品種による味の違いは実際に食べてみないと分かりません。ここで食べ比べをした時に、味覚はそれぞれといわれますが、ふつう野菜を3つ並べておいて食べ比べをした時には一番うまいものから先になくなるものです。味覚は日本人だからほぼ同じなのです。だから、もっと注意して食べる必要があると思います。
 この野菜はどういう味か(甘い、酸っぱい、苦いetc)、肉質はどうか(かたい、やわらかい、筋っぽい、ねとねとしているetc)、ほかに水分や臭いの問題もあります。臭いも味のうちです。食べれば一瞬にしてうまいかどうかが分かりますが、それらをかみしめてどうなのか。例えば甘いというのは、ミカンの甘さと比べてどう違うのかをみてください。トマトの特徴は味、肉質、臭いです。また、トマトはすぐに糖度がどうとかといいますが、トマトの甘さは果糖とブドウ糖です。ショ糖の甘さはないのでさっぱりしているのです。だから、ごはんなどに合うわけです。キュウリは、歯触りや歯切れのよさが中心になります。というようなことを考えて、味のことをお互いに意見交換してもらいたい。

 今までは感想で好き嫌いといった話が出てきましたが、今期は自分の舌を鍛えていくことを目指してください。この食べ比べの機会には無理をしてでも参加してもらいたい。自分の舌で経験することが一番大切なんです。一人で食べるよりは、大勢で食べていろいろな意見をやりとりすることによって初めて全体が分かるのですから、食べ比べができるという貴重な機会を逃さないように、全回出席するようにしてください。
 


芦澤正和先生の話

資料:図-1「日本における野菜の種類」の説明 

植物の分類をする人は、「科」を木にたとえて、同じ枝や近くの枝にあるものは近く、離れているものは遠い(関係)ということを示しました。それをまねて図にしたのが「日本における野菜の種類」です(資料の図-1)。栽培し市場に出てくるものを集めており、キノコ(約10)を入れると約140、植物の科にして40科ぐらいが入っています。野菜をどのように勘定するかは大変やっかいな話で、どこまでを栽培しているとみるか、どれを一つの種類としてみるかということが問題となります。例えばウリ科の中にカボチャ類がありますが、植物学上でいえば種の違うものをカボチャと総称しています。

カボチャの中には、洋種カボチャ、和種カボチャ、ペポという植物分類上3つの種があります。現在我々がカボチャとして食べているものは洋種カボチャです。40年くらい前は北海道と東北で作っているだけで全体の1割あるかないかでした。和種カボチャは日本で300年以上の歴史があり、かつては日本のカボチャの主体であったわけですが、現在は刻みがあって果実が比較的小さいものが出ているものの、1割を切っています。

   

 そのほかにペポカボチャがあり、一番知られているのはナマスカボチャ(ナマスウリ、ソウメンウリともいわれる金糸瓜)です。カボチャを輪切りして湯に入れると中の繊維がそうめんのようにはがれてくる。それをナマスにして食べるのでナマスカボチャとか、そうめんカボチャとか呼ばれています。

 植物の分類上は3つに分けなければいけませんが、カボチャ類としては1つになっています。ズッキーニはカボチャの仲間で、植物としてはペポの仲間です。

同様にウリ類の中で、メロン、マクワ、シロウリは植物の種として考えればともにメロンの仲間ですが、野菜として扱う時には、それぞれ独立してメロン、マクワ、シロウリとしています。野菜としての取り扱いと植物としての取り扱いがかなり違うものですから、こんな分け方になっています。

ツケナ類はアブラナ科です。菜っ葉の仲間のことをツケナ類といいます。ツケナ類は日本に多く、北から南まで地方に独特のものがあります。ツケナ類の中でも、コマツナとチンゲンサイはほとんど周年供給される野菜になっているので、独立させてはどうかという意見があります。

日本で生産量、作付面積が一番大きいのはダイコンです。ツクシは全部の栽培面積を集めても1haになるかどうかというところです。ツクシと栽培面積5万haもあるダイコンとを同じに扱うのはおかしいという意見もありますが、ツクシは大事な野菜として作られています。12月から年の初めにかけてツクシは高級料亭用にわざわざ栽培されて出てきます。ツクシには休眠する性質のものがあるので、越冬して春先に芽を出すことができるわけです。江戸時代の末期にツクシに温度をかけると正月ごろに出てくるということに気づいた人がいて門外不出になったそうです。そのうちに分家する時や、嫁にいく時に持参金の一つとしてもたせてやるというようになり広まりました。今では休眠ということが分かったので珍しいことではありません。ツクシもダイコンも大事な栽培作物であり、1つの種類として取り扱われています。

 資料:図-3 植物の生育過程と野菜としての利用部分
 
 図-3は、タネの段階、芽が出た段階、大きくなった段階、果実がついて実る段階まで、いろいろな使い方をするということを示しています。人間が栽培する植物は、自然の植物でなく、何万年という長い年月をかけて今のような形に変えられてきたわけです。人間が細かく世話をしないと生き抜いていくことができません。発芽したものを食べるのはモヤシやカイワレなど、各段階でどんな野菜が利用されているかが図示されています。

トマト
 
来歴

 トマトはナス科です。アンデス山脈に生えていた野生の植物をインカの人たちが栽培し、コロンブスによってヨーロッパに持ちこまれ、現在のトマトに改良されてきました。ヨーロッパに入った当初は鑑賞用植物でした。臭みがじゃまをしてなかなか栽培植物にならなかったのですが、ヨーロッパで改良され18世紀に入って食用として認知され、現在のような栽培植物として普及してきました。

 現在食べられているトマトは全部一代雑種ですが、トマトの一代雑種は1938年、大阪府立農業試験場で育成されたものが最初で「福壽」という品種です。不幸なことに、この品種は戦争が始まって種屋さんが販売をやめたために普及しませんでした。種苗統制令が出てどの品種も同じ値段で売るということになったので、手間のかかるF1を誰もとらなくなったのです。このため「福壽1号」という名前は出ましたが、一般には普及しないで終わりになりました。戦後復活して「福壽」というトマトが出ましたが果実が小さかったので、それを大きくして1952年にタキイから「大型福壽」というのが出てきました。

 1956年に一斉にトマトの一代雑種F1に代わって以降、現在のトマトは全部F1になっています。現在のトマトは、完熟型(甘熟型)といわれています。そのトマトのはしりになったのが、1983年に発売された「桃太郎」という品種です。
 
日本のトマトの特徴

 日本のトマトは世界からみれば異常に大きく、大半がピンク(桃色型)といわれる色をしています。そのほかに赤い色があり、黄色いトマトは珍しく、たくさんあるわけではありません。それぞれに大中小があります。日本のトマトは150gぐらいで、基本的に大きい。ミニトマトは出始めたのころは40g位のサイズもあり大小様々でしたが、だんだんと果重10g〜15gに移ってきました。そのうちにミディという中型が出てきました。現在は桃、赤、黄・橙と3つに分けたものをさらに大中小と分類していますが、どうもそれだけの分類では難しくなってきています。ヨーロッパのトマトは70g位が一般的ですが、日本のトマトは100gでも小さい方に入ります。

 育成品種数で見ると全体で269品種のうち、「桃色・大」が103で、圧倒的に数が多い。もちろんこの中には現在栽培されなくなったものや、種屋さんが売っていないものも含めていますが、「桃色・大」が日本のトマトの主体であるといえます。
 戦後、トマトの育種は、トマト臭さの少ない、酸味の少ないトマトを育成しようということが非常に大きな課題でした。これに成功した後、さらに完熟型を目指す風潮になり、今ではほとんど全部完熟型になりました。

 ただし、大きくて早生で、収量があがるトマトというのはありえません。大きくすれば早生でなくなるし、早生にするならば小さい方がいい。大きければ空洞果になる、小さくて収量を上げるのは大変等々、大小それなりに様々な問題があります。育種を担当する人たちは、大きくて甘くて空洞果がないという無理な要求をクリアしようと懸命に努力をしてきました。
 
新たな需要

 ミディタイプはようやく日の目を見てきました。大型果をあまり大きな形に実らせるに収穫する、あるいはあまり大きくしない品種を育成するということが進み、中型果が出てきたのです。

 「赤・小」の品種は1980年代から数が増えてきて、最近は大型のトマトと同じくらい品種が発表されています。ミニトマトの親になったのは全部赤いトマトでした。桃色も黄色もありますが、主体は赤色で丸型です。最近洋梨型、楕円型などが出てきました。

 それから数は少ないのですが、クッキング(調理用)トマトが出てきました。日本では生食需要が圧倒的に多く、料理に使うことはまれです。ところがヨーロッパではトマトを調理のベースとして使うことが多い。そこでトマトを調理用に利用してもらえるように消費を導いていこうという努力がされています。

 ただし調理用トマトの育成者がぼやいていましたが、「これは調理用なので、生食には向きません」と宣伝しているにもかかわらず、生で食べて「うまくない」といわれるのだそうです。調理をすることによりうまみが出てくる品種なのに、なかなか理解されないのです。

 トマトは戦後約300の品種が発表されていますが、「野菜品種名鑑」に出ていても、実物が普及しなかった例がかなりありますから、実質100位ではないかと思います。「野菜品種名鑑」は品種の特性、特徴を調べるのに便利なので参考にしてください。


平井美喜雄講師 -東京青果個性園芸室-

概況

 トマトは食に関わるいろいろな業界になくてはならない商材で、青果部門の売上げもNo1のアイテムになっています。それゆえ、売場でも1種類でなく4〜5種類といったように、売れるもののアイテム数を増やして販売しています。種類や産地が数ある中で私たちは何を基準にセレクトしていけばよいのかということです。

 東京都中央卸売市場のデータですが、熊本産など西南団地と栃木、千葉などの関東産などその他を合わせて平日は280トン前後、休み明けで470トン前後の入荷となっています。4月上旬の入荷順位は栃木、熊本、愛知、千葉、群馬、埼玉、茨城、宮崎、佐賀の順で、4月上旬累計2060トンほど入荷しています。前年比78.8%と減少しましたが、その主な要因は1月下旬から2月にかけて低温と日照不足等で着果不良や着色遅れの産地が出たからです。単価もkg単価369円と前年比の115%、若干高めになっています。

   

 現在主力産地が栃木県など関東産地の春系と変わってきていますが、寒の戻りなど天候が不安定なために各産地とも出荷量は伸び悩んでいます。全体に小玉傾向のため、大玉のひきあいが強まっていてL級中心の価格展開になっています。入荷増に伴ってM級中心の価格展開になると思われます。

品目説明/参考価格は前日(4月16日)のもの

【トマト】

1.JA小山(栃木)の「麗容」(サカタ)は果実がかためでハウス桃太郎と比較するとゼリー質が少なく、日もちがよくて大玉になりやすい品種。高温期になる5月以降はトマトは軟果玉になりやすいが、そのころから「麗容」の評価が上がってくる。産地としても作りやすい品種。価格はBM級で1300円、AMで1500円。1月下旬〜6月の出荷。

2.JAひまわり(愛知県)の「桃太郎ヨーク」(タキイ)。肥大しやすく収量もよい。特に水を切った栽培だと、より品質がよいものができるという特長があり、産地では大変技術が要るといわれている。価格はBM1400円、AM1600円。出荷期間は11〜翌3月と、3〜6月の2つの作型で出荷。

3.JA佐城川副町(佐賀県)の「サンロード」(サカタ)は「光樹トマト」という名前で出荷されている。果色は濃い桃色で光沢があり、ファーストトマトの血が入っているのか、酸味に特長がある。水を切って作るタイプなので高温期に過熟しやすいという欠点がある。糖酸バランスがよく、食味も大変よいので、「光樹トマト」として市場の評価は高い。価格はBM1500円、AM1700円、出荷は12月〜6月中旬。

4.JA竜ヶ崎(茨城県)の「レディファースト」(愛三種苗)は、ファースト系では一番多い品種。ファースト系は皮が薄く高温期に弱いということで夏場に作られないが、JA竜ヶ崎は全員がエコファーマーの認定を受けて力を入れている。価格はBM1500円、AM1700円。出荷は2月下旬〜6月中旬。

   

【フルーツトマト】

5.協和園芸(茨城県)のものはほとんど自家採取なので品種名は不明。ここは糖度センサーを使って選別し9度以上のものを「フルーツトマト」として出荷している。33玉位の大きさだが、通常の大玉サイズでも「フルーツトマト」の名前で出荷しているが、産地を視察した折も上段の枝が細くしっかりしていて食味も大変よいという産地だった。値段は3600円位。出荷は1〜6月。

6.JA埼玉岡部(埼玉)の「レディーファースト」は、隔離ベットによる高糖度トマト栽培を手がけ、7人の部会員で栽培している。ファースト系のねっとりした味とやわらかな食感が特長。価格はDM2300円、AM2600円。出荷は2〜6月。

7.JA宇都宮上三川(栃木県)のフルーツトマト。品種は「ハウス桃太郎」。隔離ベットで高糖度トマトを栽培。今年は日照不足や去年の台風の影響もあり2月からの出荷だが、通常は12〜翌6月の出荷。大変食味がよく、安定的にファンがついている。BM2000円、この下にB級がなく、C級が1600円。
 


【中玉トマト(ミディートマト)】

8.JA唐津市(佐賀県)の「華クイン」(日華化学)は一番人気。大変皮が薄く、食べても口に残らない。色も濃く、栄養価も高い。価格は240円。出荷は11月中旬〜6月。

9.JA愛知みなみ(愛知県)の商品名「ハニーレッド」は、「シンディースイート」(サカタ)という品種。中玉といっても小さく、色が鮮やかで糖酸バランスもよく日持ちがよい。赤く熟してからの収穫が可能で、大変色が濃いので高酸化物質のリコピン酸も高いといわれる。価格は150円。出荷は11月〜6月。


【イタリアントマト(調理に好適)】

10.JA愛知みなみ(愛知)の「エスクックトール」(サカタ)は酸味があり、果肉が非常にかたくゼリー質が少ないトマト。価格は150円。
 

11.JAとよはし(愛知県)の「ボンジョルノ」(トキタ)は、栽培しやすく、完熟しても軟果玉になりにくいので煮崩れしにくい。価格は1箱約1600円、出荷は11月〜翌7月。
 加工用はジュースやピューレ、ソースなど様々な加工品として流通しているが、露地栽培で完熟した加工用トマトは、施設栽培のものよりは味がすぐれると思う。

【ミニトマト】

12.JAひまわり(愛知)のミニトマト「千果」(タキイ)。越冬から春作に関しての主力品種で、味がのりやすく、赤みがあり、わりと扁平型をしている。ヘタに特徴があり、ヘタがロケットの噴射のように下を向いているのが特長。価格は150円、出荷は10月〜翌6月まで。

13.JA玉名(熊本県)は「小鈴」(みかど)。玉名では「玉宝」(ぎょくほう)という名前で販売している。越冬作から春作まで特長は生育がゆるやかだということで、手入れがしやすいというメリットがある。赤系で丸い玉タイプ、食味よい。1700円。10月〜翌6月まで。


【参考出品:江戸の伝統野菜「のらぼう菜」】

 カキナと同じで、一夜漬けにしてもかなりいけます。江戸時代、五日市や高尾など12の村に種子を配り、秋に植え付けて春の端境期に新芽を摘んで食べさせたので、天明天保の大凶作の時に役だったといわれる伝統野菜です。現在JAあきるの市が独自に採種し、生産者も14〜15名で栽培しています。例年3月から5月まで出荷されますが、今年は4月一杯で終わるかもしれません。大田市場には直接入荷しないので、西東京青果経由で販売しています。

 


沢田勇治講師-東京青果からサカタのタネ(株)に出向-

 今、種苗会社が何を考えてこういう品種を作っているのかをご説明します。基本的には、おいしいトマトはどういうものかということをきちんと把握しておいていただければと思います。

 全国流通の7割は「桃太郎」という品種でタキイ種苗(株)が開発しました。シェアの7割を占めるというのは天文学的な数字です。1品種でシェアが高いものでも20〜25%もあれば、その種屋さんはそれだけで飯が食っていけるといわれています。だからといって他社が手をこまねいているわけではなく、サカタでも「麗容」という品種と「アイコ」という長細いミニトマトを知っていただきたく展示しました。「王様トマトシリーズ」として、大きく、赤く、かたいという3つの特長をもった5つの品種を作っています。夏場になるとどうしても葉がついている方が黄色くなって、そのまま色が赤く回らないというような生理的な条件が出てきます。それをなくすために木になるべく長くつけておくことによって色を増していこうという戦略を考えています。

王様トマト アイコ

 「王様トマト」という名前が各産地に少しずつ浸透してきています。トマトの生産量日本一の熊本県では2大産地に導入され、約120町歩あたりの面積に広がっています。長崎県の大雲仙にも30町歩ほど入っています。あとは関東エリアで栃木県では80%が「王様トマト」系列の品種に代わってきています。茨城県も約50町歩、群馬県県北の利根沼田地域で40町歩ほど入っています。ことしは、福島県、岩手県、秋田県、青森県などの東北地域に夏場の品種として、「麗容」と同タイプで「麗華」という品種を入れています。これらの品種が出てきた時にサカタの「王様トマト」だと認識していただければありがたいと思います。

 熊本県産は大田、横浜、淀橋市場、栃木県産は各市場に少しずつ出回っていますが、主体は築地(東京シティ)、大田、横浜市場、JAはがの(栃木)が淀橋に入る予定です。

 北海道の任意組合や岐阜県飛騨高山でも生産が始まっています。お尻まで赤く、さわってみてかたくて重かったら、品種名を担当者にきいてみてください。担当者が答えられない場合、6月以降なら「これは麗華だよ」といえば、皆さんに対する対応がコロッと変わると思います(笑)。

   

 長細いミニトマト「アイコ」は現在、JAみなべ(和歌山県)と茨城県のJAかしまなだ(茨城県)の2ヵ所に20町歩ずつ、約40町歩栽培しています。産地指導もきちんとして広めていきたいと考えていますので、出回るようになったら市場で「長細いアイコというトマトは味がいいよ」と話してみてください。

−ここで、青果物健康推進委員会の近藤事務局長よりベジフルセブンのツールを活用してくださいとのPRがありました。−


食べ比べ

トマト4品目の試食
*「レディーファースト」がうまかった。小さめの方が味がのっている。「サンロード」「麗容」は好みじゃない。
*「麗容」は香りがよく、色も赤黒く、糖酸バランスがいい。「レディーファースト」は色も食味もよい。「サンロード」はゼリー部分がよかった。「桃太郎ヨーク」は評価が低い。
*「レディファースト」は甘みとかたさがちょうどよい。「サンロード」は甘みを感じた。「桃太郎ヨーク」はトマトらしい酸味がある。「麗容」は味も香りも薄い。
*濃い味が好きなので「レディーファースト」が一番。コクがあっておいしい。次に「サンロード」「麗容」の順。「桃太郎ヨーク」はさっぱりした感じで持ち味があってよいが4番目にした。

フルーツトマトを試食(トマトのコメントもあり)
*「レディファースト」は果肉がやわらかい。茨城のフルーツトマトは皮がかたいけれど甘くておいしい。「ハウス桃太郎」も皮がかたいけれど甘い。
*先ほど食べた「麗容」はトマトらしくておいしかった。「ハウス桃太郎」は特色がある。協和園芸のトマトはかたいが、味の濃さがあっておいしい。
*協和園芸のフルーツトマトは味が濃いだけでおいしいとは感じなかった。トマトの「桃太郎ヨーク」がおいしいと思った。
*フルーツトマトはインパクトがあって甘くておいしかった。
*「ハウス桃太郎」は比較的食べやすい感じがした。協和園芸のフルーツトマトはかたくてまだ若い感じ。全体的においしかった。
*「ハウス桃太郎」はバランス的によい。
*「サンロード」はフルーツ系の感じで皮が残るが、その皮を食べているうちに青臭さが出てきて、食べたな〜という感じがした。みんなは甘さやかたさで評価をしているけれど、食べる場面によって、たとえばお酒のつまみには甘いのはどうとか、サンドイッチには……などいろいろな種類があるといい。
 タネ屋さんにききたいのだが、食べた時に皮が残るのを将来改良するということはないのか。

【上記の点について沢田さんの説明】
 トマトの皮が嫌ということであればやわらかいものを品種改良して作ることは可能。ただし皮を薄くするとトマトに押せが出て商品化率が下がる。それが受け入れられるかどうか。糖度を高くすると、植物生理学上、自らの身を守ろうとするので皮はどうしてもかたく厚くなってしまう。品種改良ではそのバランスを考えて作らなければならないのが難しい。
<そういう(甘くて皮が薄いミニトマト)のを作っちゃうとふつうのトマトが売れなくなるよという声があり、会場笑い>

ミディートマト、ミニトマトを試食
*酸味のバランスがよかった。
*あまりミディは食べないが、中玉系「華クイン」は評価できる。「シンディスイートは酸味が強い。「アイコ」は形がおもしろいので、使い方によってはおもしろい。
*「華クイン」はうちの店で食べた方がおいしいと思った。今回は甘みがなかった。「アイコ」はかたさがちょうどよくておいしいと感じた。「シンディースイート」はやわらかすぎて好きではない。
*感想をきいていてみんなの舌の違いを感じた。酸味のある方がパンチがある。「シンディスイート」がよく、食べごたえがあった。
*「華クイン」は皮が残らないので、みずみずしくおいしかった。「アイコ」は形がおもしろく甘みがあった。「シンディースイート」は酸味があった。
*「華クイン」が一番いいと思った。
このほか、のらぼうのおひたしも好評でした。
 

トマトの空洞果はなぜ起こるのか
 トマトの空洞果について質問があり、芦澤先生が解説しました。

 ミニトマトを輪切りにしてみると、中身は必ず2室です。果実が大きくなるにつれて室数が大きくなり、品種によって3室〜多室となっていきます。果実が小さいもので中が空洞になるということはまずありません。果実が大きくなると空洞果になることがあります。

 日本のトマトは大きいので、空洞が出る可能性が高い。トマトは熟すると中にゼリーが詰まりますが、ゼリーがうまく入らないと空洞が出てきます。
 ゼリーの中には種があります。たとえばキュウリは花粉がつかなくても実が大きくなり、それを「単為結果」といいますが、トマトは「単為結果」を絶対しません。これがトマトの大きな泣き所です。花粉がつかないと果実が大きくならないのです。きちんと花粉がつかないとゼリーの部分に種ができません。このために最近はマルハナバチを飛ばして花粉をつけるようとしています。

 

 マルハナバチがうまく利用できない場合、ホルモンを散布して受粉したのと同じような生理状態にして大きくさせます。ホルモンを与えてバランスが崩れるといけないので、このホルモンについては大変厳しく規制されています。<農薬ですかとの質問を受けて>いちおう農薬の仲間ですが、単為結果をさせる薬です。  

 ただし、ホルモンをかけても受粉をするわけでなく、受粉した生理状態になるようにごまかしているわけです。種はできないけれどもだまされてトマトが大きくなる。だまされないトマトが空洞果になったりします。元々の水分がないので空洞になるわけです。

 農家の人のつらい仕事は毎日噴霧器を使ってトマトにホルモンをかけなければいけないことです。そうしないと、へんてこなトマトができたり、実がならなかったりするし、いい加減にホルモン処理をすると空洞果ばかりができてしまいます。

 「単為結果」という性質はトマトにはなかったものですが、最近「単為結果」するものを見つけてきて、ホルモン処理をしなくていい、マルハナバチを飛ばさなくてもいいトマトが見つかって発表されています。あとは品質や収量などの研究が行われるでしょうが、いずれはそれを元にした品種が主要になってくるでしょう。


荒井慶子先生の調理説明

 ソース専用の「サンマルツァーノ」の系統と同じ条件で、トマトソースを作りました。たぶんサンマルツァーノの方がソースとしては向いていると思います。トマトソースの作り方は書いておきましたが、ミキサーですれば早い。最近の料理本ではトマトの皮を湯むきすると書いてありますが、トマトの種と水のところはうまみが多いし、栄養価も高いので、種ごと料理していいと思います。トマトソースは使う量だけ冷凍しておくと重宝なのでおすすめしたい。
 ソースは「サンマルツァーノ」と「エスクックトール」と「ボンジョルノ」を使いました。

   

 のらぼう菜は茎がおいしいので茎のところだけ別に先にゆでます。おひたしはだしで倍に薄めたお醤油で味をつけました。