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■芦澤正和先生の話
ジャガイモ
ジャガイモは一般にはジャガイモで通用しますが、官庁だけはジャガイモという言葉を使わず、昔から「馬鈴薯」を使用しています。馬鈴薯はウマがつけている鈴に似ているので「馬の鈴の薯」と書くわけです。今から200年も前、1800年代の言葉がそのまま生きているのです。
サツマイモも官庁では「甘薯」で通用しています。国が「馬鈴薯原々種農場」を作り、法律の中で「馬鈴薯」と用いたので、法律を改訂しない限り「馬鈴薯」という言葉を官庁用語から消すわけにはいかず、未だに使われているのです。
園芸ではジャガイモ、サツマイモといっていますが、それでも官庁向けの文書では馬鈴薯、甘薯と書きます。法律は一字一句変えるために国会を通さなければならないので、大変手続きが面倒です。
八百屋さんに出てくるジャガイモは、その前に原種、さらにその前に原々種があり、ジャガイモで一番こわいウイルス病を蔓延させないための処置がとられています。
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食用ジャガイモは「男爵」「メークイン」が主体で、ともに100年近い歴史がある品種です。「男爵」は川田男爵がイギリスから導入し北海道で普及したところ、「男爵」の名前だけが残りました。「メークイン」は入ってきたときの名前がそのまま残っています。料理したときの品質が違い、「男爵」は煮崩れしますが、「メークイン」は煮ても崩れる心配がありません。「メークイン」と「男爵」で人気を二分し、日本で一般に消費されているジャガイモの半分以上を占めています。 |
50年前から現在に至る品種を見ても、東京市場に入ってくるジャガイモの半分以上が「メークイン」と「男爵」で、特に「男爵」が圧倒的に多くなっています。秋植えのジャガイモは最近育成されたいろいろな品種が出てきていますが、春植えは「男爵」と「メークイン」、それに古い品種の「紅まる」の3品種だけで約70%を占めています。
ジャガイモの原産地はアンデスの山中で、食用として南アメリカ、中央アメリカで食べられていました。コロンブスのアメリカ大陸発見後にアメリカに行ったスペイン人が持ち帰り、最初は観賞用が多かったのですが、そのうちにヨーロッパの自然状況下でよくできるということが分かって栽培が始まりました。ヨーロッパの人口増はジャガイモによる食糧確保のおかげともいわれています。
フランス革命で殺されたマリーアントワネットはジャガイモの花を身につけましたが、単なる飾りでなく、ジャガイモが食糧として重要な役割を果たすということを示したといわれています。
日本ではジャガイモを主食にする習慣はありませんが、ロシアではジャガイモが第二のパンといわれるほど大事な主食になっています。
暗殺されたケネディ大統領の一族はジャガイモの不作で餓死者がたくさん出たときに、ヨーロッパからアメリカ大陸へ渡ったという人の子孫です。ジャガイモがそれぐらい大きな役割を果たしていたということになります。
ジャガイモはナス科に属し、ナスとは非常に近い作物です。世界中で食用として使われますが、いろいろな病気が出るので、病気に強い品種を作る目的で野生種と交配し新しい品種を作る努力をしています。
日本でも主として北海道で耐病性品種を作る品種改良が行われています。ジャガイモの中にタンパクが含まれすぎると作るときに具合が悪いとか、栄養面からみるとタンパクが高い方がいいといった問題もあるので、タンパク質の量についても様々に研究されています。
ジャガイモは現在のジャワ島から入ってきて、ジャガトラと呼ばれました。飢饉のときにはサツマイモとジャガイモが大きな役割を果たし、これらの作物のおかげで多くの人が飢え死にしないですんだといわれています。
日本でのジャガイモの生産量は減ってきていますが、飢餓の時代には食用としての生産が多くなっています。
50年位前は約20%が食用でしたが現在は60%です。このほかにジャガイモの用途は、でんぷん原料、加工用、種いもとしての利用などがあります。
どちらかというと涼しい気候を好むので生産の大半は北海道で作られています。北海道の場合、秋植えのものが多く、鹿児島、長崎、特に長崎では秋植えというより冬植えみたいなもので、冬に山の南斜面に植え付け、トンネルをかけ、暖かい所で早くジャガイモをとっています。雲仙岳から島原半島をみると、山になぜ海があるのだろうと思うほどトンネルが風で揺れるので、上から見るとさざ波が立っているように見えるのです。また、早出しのジャガイモは奄美大島で作られています。
「男爵」「メークイン」の春植えは北海道が多く、「その他の品種」はどちらかというと南の方、特に長崎、鹿児島が多くなっています。
春植えでは、「男爵」「メークイン」「紅丸」が多く、最近育成された品種も数多くありますが、新しく育成された品種の出番は比較的小さいといえます。
ジャガイモの場合、比較的貯蔵性が高いので、新ジャガと称するジャガイモも、貯蔵してあったジャガイモも使われるので、収穫時期でなくても一年中出回ります。現在野菜は約20%が海外から輸入されますが、ジャガイモの輸入は比較的少なく、加工されたものが少し入ってくる程度です。
ジャガイモの生理障害(空洞、黒芯、リング)等は、病虫害、線虫害、ウィルス、などから起きますが、温度の高低、温・湿度、栄養(不足、過剰、バランス)などからも生じます。
キノコ
ここ10年ばかりの間にキノコは特別な扱いを受けるようになりました。酵母や菌が独立したものとして扱われるようになったからです。
昔、この世の中には、鉱物、それに生き物として動物と植物があると習いました。生物が二つあるので「二界説」といいました。1980年頃にはキノコは植物として紹介されています。ところが、動物と植物と菌、三つに分けることになり、現在では学問の世界では三界説が通用しています。動物は基本的には自分が動き、他のものが作ったものを食べる。人間も他のものが作った栄養を食べている。植物には葉緑体があり、炭酸ガスと水と太陽の力で光合成をしていく。それをするためにいろいろ動き回るのでなく、基本的には動かない。菌は動物や植物にくっつき、栄養をそれから吸収していくという別の性質があります。
菌はまだ研究が十分進んでいないので、どれぐらいあるのかも分かっていませんが、キノコ、細菌、ビールを作る酵母などがあります。最近の研究で非常にたくさんあるということが分かってきたのですが、研究が遅れた最大の理由は、顕微鏡も化学分析の力もなかった頃には見た目でなんとかしようとしていたからです。動物と植物に分けられていた頃でも、菌は違うのではないかという人たちがかなりいました。顕微鏡が高度に発達し、化学の知識も発達してくると、それを探し出して分析できるようになり、菌が全然違うものらしいということが分かったのです。最後に遺伝子DNAの解析ができるようになり、三界説が現在の菌を含む生き物の基本になっています。
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分析機器も発達してからは三界説では説明がつかないというので、ホィッタッカーという人が原生生物などを含めた五界説を言い出しました。現在分類や進化の仕事をしている人は三界説や五界説をとる人が多くなっています。ところがこれでは特に進化の流れを理解するのはだめだということで、現在は次に書いてある八界説が出てきました。
下に行くほど原始的なもので、上にいくほど進化したものということになります。
我々のように農業では科より下の方を扱います。それで、メークインは品種、ジャガイモといったら種の段階で、その中を細かく分けていきます。
界
門
綱
目
−−−−
科 ナス
属 ナス トマト ピーマン
種 ジャガイモ イネ
(変種) ジャポニカ、インディカ、グラベルマ
品種 メークイン コシヒカリ
系 |
種のところで、ジャポニカは米粒自体が小さく、煮ると粘りが非常に出ます。インディカは長粒種で煮ても粘りが出ません。それで、現在品種改良ではジャポニカとインディカとかけて、インディカのもっている“病気に強い性質”をジャポニカに入れようというような努力はずいぶん行われています。どちらかというと、インディカの方が南の暑い地方で、ジャポニカは北海道のような寒い所でも作れるという特徴のある品種です。ジャポニカは粘りがあって日本人はおいしいといいます。
ところがインディカを食べている人たちにジャポニカを出すと、わざわざ洗って粘りを落として食べます。もう一つ、グラベルマはアフリカのイネです。
種の下に品種があり、同じコシヒカリでもいろいろなタイプがあります。コシヒカリは病気に強くないので、イモチ病にかからないような努力をしています。
それから同じナス科でもトマト、ピーマン、ナス属が違うわけです。人間は種の中で交配して作っています。
「界」の中には動物、植物、菌があります。
菌の中には、活物寄生、死物寄生があります。シイタケは死物寄生で、マツタケは松の根に寄生する活物寄生です。マツタケが栽培できるように様々な研究が行われていますがどれも成功していません。
作物の病気の研究をし、病気に強い品種を作るためには菌を培養しなければなりません。死物寄生であればシャーレの中に栄養物質を入れると菌が増えるのですが、活物寄生だと育てるもの自身が生きていないといけません。
私は現役のときに研究していた根コブ病は活物寄生で、病気がついている根を生きたまま冷凍保存していました。病原菌の中にも活物寄生、死物寄生するものがあります。 |