| 今号の元気店●キリンサークル(1999年10月発行)より |
| 〜地域密着の地酒専門店化でオンリーワンの店づくりを〜 |
江戸時代後期からの歴史を持ち、明治期に米穀店として創業を始めた山田屋本店。地酒の専門店化を進める一方、古くからの付き合いのある近隣のお客様も重視。「地酒専門店」と「最寄り店」の2つの顔を絶妙のバランスで使い分け、幅広く顧客を獲得している。 |
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笑顔、笑顔にまた笑顔……。店主の岡本治男さんは、実にいい笑顔の持ち主だ。それもそのはず「私は商売を楽しませてもらっていますから」と破顔一笑。
情勢厳しいこのご時世にいい表情でいられるのは、もちろん商売が好調だからである。そして、その健闘ぶりは、財団食品流通構造改善促進機構が実施した98年度優良経営食料品小売店全国コンクールで会長賞受賞という実績が如実に物語っている。
「審査の過程で訪問調査に来たコンサルタントの方に、うちのやり方を洗いざらい見てもらいました。そのうえでの受賞は、このやり方でいいんだと専門家に認めてもらったあことになるわけですから、大きな自信になりました」
と語る岡本さんだが、3年ほど前には自店の方向性を見失って意気消沈していた時期があったという。
「市場環境が大きく変わりつつある時期、夫婦2人でやっているような個人商店で5年先、10年先やっていけるのだろうか、21世紀にいい状態で商売を続けていくことができるのだろうか、と不安になりまして」
鬱々と悩む日々もあった。しかし、不安な前向きな姿勢が打ち消した。
「くよくよしてもはじまらない。楽しく商売したらいいじゃないかと思うようになって吹っ切れました」
楽しく商売をするとは、「売って楽しい商品を打つころ」だときっぱりと言う。
「売れているから欲しくなる商品ではなく、その人の感性で欲している商品を売っていきたいんです。この商売は、お客様の欲する商品を提供すれば終わりというものではなく、その後、そのお客様が『あの酒おいしかったよ』と言って再び来店してくれることで完結する。その喜びをよりどころとして商売を続けていけばいいんじゃないか――と思えるようになったんです」
受賞は、気持ちを新たに商売に取り組むきっかけになった。
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店頭に「日本酒好きです」と染め抜いた看板を掲げて個性をアピール。通りがかりの観光客に足を止めさせる効果も。
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店に入って右側半分が日本酒コーナー。樽を使ったディスプレイで日本酒ならではの風情をアピールする。
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大学を卒業した後、大手スーパーマーケット勤務を経て、25年前に山田屋本店を継承。20年前に新潟の蔵元で酒造りを体験したのを契機に日本酒の魅力にめざめて以来、地酒の販売に力を注いできた。店のつくりを見ても、店の半分は地酒コーナーに充てるという力の入れようだ。
現在は銘酒「久保田」をはじめとして蔵元と直接取引している10銘柄と、問屋経由の仕入れ品を合わせて約60銘柄を販売。いずれも自分の舌で厳選した品である。
「自分の趣味に走った品揃えはしていません。お客様の多様な感性に応えられる品揃えを心がけています」
地酒コーナーには、平台のほかに氷温冷蔵用リーチイン5面を配したほか、6年前には2.5坪のセラーを設置し、高級品の品揃えと、品質管理へのこだわりをアピールする。個々の商品には手書きのPOPや、みずから訪ね歩いた各地の蔵元の写真を添えたり、新聞の切り抜きやリリースなどの情報を店内に掲げる。新商品情報は随時、手書きのパンフレットを作成してお客様に配るなどして情報の発信につとめている。
品選びに迷っている様子のお客様には声をかけ、20年来の知識と経験をもとに希望を聞いてぴったりの酒をお勧めする。利き酒師の資格を取得した佳子夫人も岡本さんをがっちりサポートしている。
「うちの店で買いたいと思ってもらうための『何か』が必要なんです」
その何かが、品揃えや行き届いた品質管理、情報、コンサルティングなのである。地酒の品揃えで他店との差別化を狙う業務店からの相談も着実に増えている。
もうひとつ「売って楽しい商品を売る」という岡本さんのポリシーを具現化している取り組みがある。山田屋本店だけで販売しているPB商品「天青」である。地酒に興味を持ち始めた当初10年間は新潟の酒に傾倒していたが、その後全国を回っているうちに地元回帰の念がめばえ、湘南の地酒を造ろうと企図。茅ヶ崎の蔵元と組んで94年から純米大吟醸酒を造っている。
「蔵元・メーカーとお客様の仲介に徹しているうちプロデュースしてみたいという気持ちが湧いてきて」
天青は、毎年1口1万円で500口の会員を募り、1口につき720ml瓶3本を配布している。
また、岡本さんが発起人となって湘南地区の酒販店仲間と「湘南の地酒を愛する会」を結成。同じ茅ヶ崎の蔵元で「限定純米吟醸」というPB商品を造り、県内18店で販売している。PB商品は、地元の人々の夢を担うものと好評を得ているし、ギフトや観光客のお土産のニーズもあり、新たな名物として地元産業の振興にも一役買っている。さらに現在、ホームページの開設を検討中で、ゆくゆくは県外の新たな地酒ファンを獲得していきたいという。
「最近、つくづく商売がおもしろいと感じています。それに笑顔でいると、不思議といい情報が集まってきて、商売がいい流れに乗っていくようですね」
どうやら笑顔こそ店を元気にする最大の秘訣ということのようだ。
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左から、多忙なときに手伝ってもらうパートさん、奥様の佳子さん、店主の岡本治男氏、現在大学生の長男・正さん。
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1年ほど前からワインにも力を入れ始めた。1000円台のデイリーワインが中心だ。
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